「山路ふみ子映画賞」女優賞の尾野真千子「これからも映画を愛してあげてください」 新人女優賞は清原果耶
2021年11月26日 19:15
![西川美和監督、倍賞美津子らも登壇](https://eiga.k-img.com/images/buzz/93525/7d7bd234c456c8f9/640.jpg?1637921469)
第44回山路ふみ子映画賞の贈呈式が、11月26日に東京・千代田区の一ツ橋ホールで行われた。作品賞に当たる山路ふみ子映画賞を獲得した「すばらしき世界」の西川美和監督をはじめ、尾野真千子(女優賞)、清原果耶(新人女優賞)、倍賞美津子(映画功労賞)らが出席した。
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山路ふみ子映画賞に輝いた「すばらしき世界」は、西川監督が役所広司と初タッグを組んだ人間ドラマ。人生の大半を裏社会と刑務所で過ごした男の再出発の日々を描いた。花束を受け取った西川監督は「この作品は、刑務所で長く服役した男が社会に出てから、どうやって普通の生活を取り戻すかということを淡々と描いた作品です。私も人が罪を犯すまでの、非常にドラマティックでスリリングな過程には興味を持ってきたんですが、佐木隆三さんの原作小説『身分帳』に出会うまでは、悪事を犯した人が日常に戻ってくるところにきちんと関心を持ったことがないなと思いました。佐木さんの絶版状態だった小説を、世の中に復刊させたいなという思いだけで、映画づくりに向かいました」と語る。実際に刑務所に服役したことがある人や、その社会復帰を支える人に話を聞き、綿密なリサーチを行ったことを明かしていた。
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映画功労賞を受賞したのは、「護られなかった者たちへ」で清原と共演した倍賞。「頂きました!」と笑顔を見せ、「もう50年も(女優を)やっているんですね」と感慨深げな表情を浮かべる。尾野と清原の方を振り返り、「皆さんもずっと続けていたら、こういう賞が頂けますから(笑)」と茶目っ気たっぷりに声をかけ、「本当にすごく嬉しいです。映画は大好きなんですが、どちらかというと出るよりも見る方が好きな人なんです(笑)。これからはじっくりと、もっともっと作品を見ていきたいと思います」と挨拶した。
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「茜色に焼かれる」(石井裕也監督)と「明日の食卓」(瀬々敬久監督)で女優賞を受賞した尾野が、艶やかな着物姿で進み出た。「茜色に焼かれる」ではさまざまな苦難に見舞われながらも子どもを守るために立ち向かうシングルマザー、「明日の食卓」では壊れそうになる家庭を必死で立て直そうとする主婦と、タイプの異なる母親を演じ鮮烈な印象を残した。尾野は、コロナ禍での映画製作について思いを馳せた。
尾野「この時代にこのような賞を頂けたこと、本当に嬉しく思います。そう言えるのも、たくさんの人に、たくさん助けて頂いたおかげです。いままで当たり前だと思っていた、撮らせて頂けること、演じさせて頂けること。でも、この時代になって、当たり前ではなかったんだな、こんなにありがたいことだったんだなと、身に染みて学ばせて頂きました。これからもたくさんの人に映画を愛して頂けるように、興味を持って頂けるように、頑張っていきたいと思います。これからも映画を愛してあげてください」
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さらに、観客から作品選びの基準や、今後演じてみたい役について、質問が寄せられた。尾野は「これといって基準があるわけではなく、その時の年齢や心の状態で台本を読ませて頂いて、『これは私が演じなければいけないな』と感じたら、選ばせて頂いています」と明かす。さらに、「今後は、恋愛物もまだまだやりたいと思っていますし、自分より上の年齢の役がどれくらいできるのか、ということにも興味がありますし。もしかしたら男性の役もやれるのかな、と。まだまだ自分のなかでも未知で、これから探っていければなと思います」とほほ笑んだ。
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最後に挨拶したのは、新人女優賞を獲得した清原。今年は「護られなかった者たちへ」をはじめ、「まともじゃないのは君も一緒」「夏への扉 キミのいる未来へ」「砕け散るところを見せてあげる」など数多くの作品で好演した。「このたびは、このような歴史ある賞を頂いて、光栄に思っております」と喜びを伝えた清原は、「世の中が動いていくのか、止まってしまうのか、どうなっていくのか分からない日々のなかで、『護られなかった者たちへ』という映画で、瀬々監督をはじめとするスタッフ、キャストの皆様と歩んできた日々は、ほかの何にも代えがたい、かけがえのない日々だったなと思います」と述懐。さらに「これからも映画を皆様にお届けできるように、ひとりの女優として成長できるよう、精進してまいります」と、決意を新たにした。
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この日は、福祉賞を受賞した「痛くない死に方」の高橋伴明監督、文化賞に輝いた「いとみち」の横浜聡子監督も出席した。コメントは以下の通り。
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自分は、この山路ふみ子映画賞というものから、いちばん遠いところにいる監督だなと思っておりました。「映画に関わるしかないな、映画監督になるしかないな」と思って、今日まできました。業界に入って53年になります。それだけ年数がかかって、やっとここに辿り着いたのかなあと、感無量でございます。
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このたびは、山路ふみ子映画賞の文化賞という、本当に重みのある素晴らしい賞を頂きまして、本当にありがとうございます。「いとみち」という映画は、越谷オサム先生の本当にすがすがしい女子高生の青春物語が原作です。私、15年ほど映画を撮ってまいりまして、ちょっと世の中を斜めから見る映画を撮ってまいりました。今回の「いとみち」の青春という眼差しにどう向き合おうか、すごく悩みました。私も10代から30年ほど経っていることもあり、青春というものをどう思い出そうかと悩んで、この「いとみち」という映画を作りました。幸運なことに、駒井蓮さんという素晴らしい若手女優との出会いがあり、そのほかのスタッフ、キャスト、力のある皆さんに集まって頂いて、映画を作り上げることができて、またたくさんの方に見て頂いて、今日ここにいます。映画のなかで、青森の岩木山に登るシーンがあります。私にとって、映画づくりというものは、岩木山のようにごつごつとした岩肌で、本当に登るのが辛くて苦しくて、楽しい瞬間はちょっとしかないくらいのものなんです。「映画は高い山だな」と思いながら毎回作っているんですが、こうした素晴らしい賞を頂いたことで、また次の映画を作る力になります。今日は本当に、皆様ありがとうございました。素晴らしい賞を頂きまして、本当に光栄です。
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