パリの日本映画の祭典キノタヨ映画祭が開幕 「典座」、柳楽優弥主演作などをお披露目

2019年12月2日 18:30

今年はコンペティションに11作品が選ばれた
今年はコンペティションに11作品が選ばれた

[映画.com ニュース] 14回目を迎えた仏パリの日本映画の祭典・キノタヨ映画祭が、11月26日から開催された。今年はコンペティションに11作品が選ばれ、特別上映作品として三池崇史監督の「初恋」と、柳楽優弥がモンゴルでの撮影に挑んだKENTARO監督初長編「ターコイズの空の下で」の2作、オープニングに富田克也監督の「典座 TENZO」、さらにクロージングに、衣笠貞之助監督のサイレント「狂った一頁」が、フランス人の弁士シリル・コピーニの活弁と音楽伴奏付きで上映される。

11本のコンペ作品は、大森立嗣監督(「日日是好日」)、深田晃司監督(「海を駆ける」)、吉田恵輔(「愛しのアイリーン」)といったキノタヨ常連監督のほか、ベテラン勢では周防正行監督(「カツベン!」)、瀬々敬久監督(「楽園」)、鈴木雅之監督(「マスカレード・ホテル」)、平山秀幸監督(「閉鎖病棟 それぞれの朝」)、またベルリン映画祭で上映された三宅唱監督の「きみの鳥はうたえる」や、自主制作による片山慎三監督の処女作「岬の兄妹」、佐藤慶紀監督によるドキュメンタリー「新宿タイガー」、そして釜ヶ崎を舞台に実際の住人と俳優を織り交ぜた、佐藤零郎監督によるフィクション「月夜釜合戦」が並んだ。

セレクションコミッティのディミトリ・イアンニ氏は選考基準について、「テーマをしっかり感じさせることとクオリティが高いこと。その上で、現代の日本映画を幅広く紹介する映画祭として、商業的な作品から自主映画まで、またコメディ、ドラマ、先鋭的な作品、ドキュメンタリーなど、バラエティに富んだものを揃えるようにしました。たとえば『カツベン!』は娯楽作であると同時に、サイレント時代の日本映画について知ることができますし、『新宿タイガー』はドキュメンタリーの形としてはクラシックですが、70年代の新宿を舞台にタイガーマスクとして知られた人物のポートレートを通して、当時の日本の社会を窺い知ることができます。こうした点も、フランスの観客にとってはとても興味深いことだと思います」と語る。

柳楽優弥がモンゴルでの撮影に挑んだKENTARO監督初長編「ターコイズの空の下で」
柳楽優弥がモンゴルでの撮影に挑んだKENTARO監督初長編「ターコイズの空の下で」

オープニング・セレモニーには、富田監督とともに、「典座」に出演した僧侶の河口智賢氏と倉島隆行氏、さらに柳楽とKENTARO監督が出席した。司会者からモンゴルでの撮影について尋ねられた柳楽は、「ボンソワール。今回初めて日本人以外の方と共演させて頂いたのですが、とてもいい勉強になりました。モンゴルは最高でした。メルシー・ボークー!」と挨拶して喝采を浴びた。

一方、「典座」で仏教を取り上げたことについて富田監督は、「『バンコクナイツ』を作るにあたって、僕は日本を離れて長く東南アジアを旅していましたが、向こうでは人々の生活に仏教が根付いていることを真近に体験しました。それを見て、日本にはお寺、仏教というものがあるのに、日本人が自らの生活にそういうものを失ってしまったと感じていたとき、曹洞宗の若いお坊さんたちから仏教についての映画を作って下さいというお話を頂き、まさに縁起のようなものを感じて作りました」と語った。

「典座 TENZO」富田克也監督と僧侶の河口智賢と倉島隆行
「典座 TENZO」富田克也監督と僧侶の河口智賢と倉島隆行

「典座」は食物アレルギーを持つ息子を抱え、食に対する考えから人と人のあり方を考える住職や、3・11の津波で寺を失った住職を通して、仏教の意義を見つめ直すフィクション。フランスではセレモニーの翌日から劇場公開され、批評も「6つの風味をテーマにしたチャプターに分けられた本作は、小気味好い編集とハイブリッドなトリックを用いながら、繊細でスピリチュアルな万物の関係を再構築してみせる」(ル・モンド紙)など、好評価を得ている。

キノタヨ映画祭(kinotayo.fr/jp)は12月8日のクロージング・セレモニーで観客賞などの各賞が発表されたあと、フランス各地を巡回する。(佐藤久理子)

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