きみの鳥はうたえる 劇場公開日 2018年9月1日
解説 「そこのみにて光輝く」などで知られる作家・佐藤泰志の同名小説を、柄本佑、染谷将太、石橋静河ら若手実力派俳優の共演で映画化した青春ドラマ。原作の舞台を東京から函館へ移して大胆に翻案し、「Playback」などの新鋭・三宅唱監督がメガホンをとった。函館郊外の書店で働く“僕”と、一緒に暮らす失業中の静雄、“僕”の同僚である佐知子の3人は、夜通し酒を飲み、踊り、笑い合う。微妙なバランスの中で成り立つ彼らの幸福な日々は、いつも終わりの予感とともにあった。主人公“僕”を柄本、友人・静雄を染谷、ふたりの男の間で揺れ動くヒロイン・佐知子を「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」で注目された石橋がそれぞれ演じる。
2018年製作/106分/G/日本 配給:コピアポア・フィルム
オフィシャルサイト スタッフ・キャスト 全てのスタッフ・キャストを見る
2022年3月30日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会、映画館
夭折の作家・佐藤泰志の著書を映画化し続けてきた菅原和博氏いわく、函館・新3部作と銘打った1作目。最初の3部作は熊切和嘉、呉美保、山下敦弘という映画界で認知された実力派を監督に起用してきたが、今回は若手の三宅唱を起用することで、どのような相乗効果をもたらすか……。 果たして、出来上がった作品は良い方へと転んだ。それも、柄本佑、染谷将太、石橋静河という若手実力派が実に瑞々しい存在感を函館の街に違和感のない速度で馴染ませ、佐藤泰志の思いに寄り添っている。この3人が上手いのは誰もが承知しているだろうが、それにしても石橋静河という俳優の一挙手一投足から目が離せなくなるような強烈な個性に震える。
2018年10月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
この映画の3人は何者でもない。それが心地良い。主人公に至っては名前もわからずクレジットも「僕」表記である。何者でもないからこそ、何にでもなれる自由がある。 男2人、女1人の人間関係なのに、彼らの関係は恋人なのか友人なのかもわからないほどに曖昧だ。でもだからこそ恋人にもなれるし、友人にもなれる自由がある。セックスがあっても主人公と佐知子の関係はひどく曖昧なまま進む。恋人になれば関係は強固になるかもしれないが、同時に友人の距離感の自由を失う。 それはただのモラトリアムかもしれない。いろんな所属や肩書きや関係性の役割を引き受けて人は大人になるが、そうしたものを受け入れれば入れるほどに人は不自由になるのかもしれない。モラトリアムな瞬間は不安定だけれど一番自由な瞬間でもある。 それにしてもシネマアイリスは偉い。地方のミニシアター文化を守るだけでなく、佐藤泰志原作の素晴らしい映画を4本も世に送り出した。それだけで大拍手だ。
2018年8月29日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会
故・佐藤泰志が80年代初頭に発表した小説の映画化で、当時の東京の話を、現代の函館に舞台を移して脚色している。原作にはビートルズのレコードが登場し、"And Your Bird Can Sing"を歌うシーンもあって、曲名の訳が小説の題になっているのだが、映画ではカットされているので、映画の題としては意味がよくわからなくなっている。そして音楽も今風にということなのか、Hi'Specを起用し(劇中のクラブのシーンで本人も登場)、クラブ音楽などデジタル寄りのサウンドトラックが流れるのだが、個人的には佐藤の小説世界と相性が悪いように感じた。80年代を知る世代ゆえのノスタルジーかもしれないが。 柄本佑の鬱屈した感じはキャラクターによく合っている。明るく笑顔の多い染谷将太とのコントラストもいい。石橋静河のダンスにはもっと見たいと思わせる力があった。
2022年5月9日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
ネタバレ! クリックして本文を読む
20代の青春時代の儚さがテーマ。 刹那的に生きる男女を描いているが、全員この時間が永遠には続かないことを意識しながらも、現実から目をそらすように今を楽しむ、いや楽しもうとしている様子が印象深い。 「僕」は、佐知子に思いを伝えることができず、クールに演じようとしているが、かっこつけながらも自分が傷つくのを恐れているように見える。 静雄と付き合うことを聞くと、自分は静雄を通して、佐知子を知る空気のような人間になる、という発言から強くその感情がうかがえる。 しかし、最終的には演じていた自分に耐えられてなくなり、気持ちを初めて伝えるのだが、それを聞いた佐知子の表情がラストシーン。 解釈が分かれるシーンは好きだ。 掴みどころが難しいが、なんとなく儚さを感じた作品で、音楽や光の加減もよかった。
すべての映画レビューを見る(全97件)