【パリ発コラム】日仏友好160周年記念「ジャポニスム2018」開催 若手世代の日本映画に熱視線
2018年9月9日 08:00
[映画.com ニュース]日仏友好160周年を記念しフランスで開催される、「ジャポニスム2018:響きあう魂」展が7月12日に開幕した。美術展や映画、舞台公演などさまざまな分野にわたって伝統文化から現代アートまでを紹介する、一大日本万博だ。すでに開幕より一足早く開催されたチームラボの「Au-dela des limites」展が成功を納めるなど、フランスにおける日本文化への関心の高さが伺える。
映画関係では、河瀬直美の「Vision」(仏題Voyage a Yoshino)がパリのシネマテークでプレミア上映されたのを皮切りに、同館とパリ日本文化会館において、戦前から現代に至る日本映画の回顧上映が来年3月までおこなわれる。これは1984年に約500本の日本映画がシネマテークで紹介されて以来の大規模なものだが、まさに絶好のタイミングと言えるだろう。というのも、今年のカンヌ国際映画祭で是枝裕和の「万引き家族」がパルムドールを取ったことはもとより、ここ数年で、深田晃司、富田克也、濱口竜介ら日本の新世代監督たちが徐々に注目を集めている背景があるためだ。深田監督は「ほとりの朔子」が2015年のナント三大陸映画祭で最高賞と若手審査員賞をダブル受賞、さらに一昨年はカンヌのある視点部門で「淵に立つ」が上映され、審査員賞を授与された。富田監督は「サウダーヂ」がナント三大陸映画祭で最高賞を受賞し、続いてフランスで公開された「バンコクナイツ」が高い評価を得た。
さらに濱口監督も、一昨年ロカルノ国際映画祭で素人を起用した「ハッピーアワー」が女優賞と脚本のスペシャル・メンション賞をダブル受賞。今年の5月には「SENSES」という題名で317分を3パートに区切って公開になり、この原稿を書いている今もロングラン中。アートハウス系の小規模な公開ながら、3パートの総計で動員14万人を超え、大健闘を果たしている。濱口監督といえば、新作「寝ても覚めても」で今年カンヌに初めて参加したのも記憶に新しい。評価は割れたものの絶賛するフランスのメディアもあり、こちらは来年に公開を控える。
他にもジャポニスム展に合わせるかのように、山田尚子のアニメーション「聲の形」や黒沢清の「予兆 散歩する侵略者 劇場版」といった公開作が続く。とくに聾唖の少女を主人公にした大今良時の漫画を映画化した山田の作品は、日本のアニメにしては珍しい重いテーマで、思春期の若者たちの差別や疎外感を扱ったものとして称賛されている。日本映画に新風を吹き込むこうした若手世代の活躍によって、新たな日本映画ブームが到来しつつあるのかもしれない。(佐藤久理子)
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トニー・レオンとアンディ・ラウが「インファナル・アフェア」シリーズ以来、およそ20年ぶりに共演した作品で、1980年代の香港バブル経済時代を舞台に巨額の金融詐欺事件を描いた。 イギリスによる植民地支配の終焉が近づいた1980年代の香港。海外でビジネスに失敗し、身ひとつで香港にやってきた野心家のチン・ヤッインは、悪質な違法取引を通じて香港に足場を築く。チンは80年代株式市場ブームの波に乗り、無一文から資産100億ドルの嘉文世紀グループを立ち上げ、一躍時代の寵児となる。そんなチンの陰謀に狙いを定めた汚職対策独立委員会(ICAC)のエリート捜査官ラウ・カイユンは、15年間の時間をかけ、粘り強くチンの捜査を進めていた。 凄腕詐欺師チン・ヤッイン役をトニー・レオンが、執念の捜査官ラウ・カイユン役をアンディ・ラウがそれぞれ演じる。監督、脚本を「インファナル・アフェア」3部作の脚本を手がけたフェリックス・チョンが務めた。香港で興行ランキング5週連続1位となるなど大ヒットを記録し、香港のアカデミー賞と言われる第42回香港電影金像奨で12部門にノミネートされ、トニー・レオンの主演男優賞など6部門を受賞した。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。