劇場公開日 2008年8月2日

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スカイ・クロラ The Sky Crawlers : 特集

2008年7月31日更新

GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」(95)はウォシャウスキー兄弟やジェームズ・キャメロンに影響を与え、「イノセンス」(04)は日本アニメ史上初のカンヌ国際映画祭コンペティション部門出品を果たし、常に世界から注目を浴びる監督となった押井守。しかし、その最新作「スカイ・クロラ」は、どうやらこれまでの押井作品とは異なるらしい。「押井守の映画って、なんとなく難解でマニアだけが見るものでしょ?」と思っている人に向けて、どのあたりが新しいのか? 検証してみよう。(文・構成:編集部)

今度の押井守はココが新しい!
<押井作品初心者編>これまでの押井映画とはココが違う

これまでとの最大の違いは、初めて若者を意識して作ったということだが…
これまでとの最大の違いは、初めて若者を意識して作ったということだが…

■初めてベストセラー作家の「小説」が原作!

どこか「攻殻」の素子を思わせる?ヒロインの水素
どこか「攻殻」の素子を思わせる?ヒロインの水素

押井守の監督作は、「うる星やつら」「機動警察パトレイバー」など初期作品から、代表作である「攻殻機動隊」「イノセンス」までコミック原作やアニメ原作が多いが、今回のような「小説」の映画化は初めて。押井監督が既存の「小説」をどう料理するのかが、今回の見どころのひとつ。しかも、その原作小説は若者やミステリーファンに人気の森博嗣の「スカイ・クロラ」。連作全5作と短編集からなるシリーズ中の1作だ。

ちなみに森博嗣はもともと押井守のファン。本作のヒロイン・草薙水素(クサナギ・スイト)は、名前もキャラも「攻殻機動隊」の草薙素子(クサナギ・モトコ)に似ているのは決して偶然ではないだろう。また、数々の人気シリーズを抱える森博嗣にとっても著作の映像化は初めてで、「スカイ・クロラ」シリーズは、ミステリーというよりも青春文学小説という体裁で、森博嗣ファンにも新鮮な作品が、小説映像化が初となる押井監督の手で映像化されたことになる。

■「セカチュー」の世界観がプラス!初参加スタッフの顔ぶれ

これまでの押井守作品は常連スタッフが多かったが、今回はアニメ出身ではない新しいスタッフを取り入れているのがポイント。

脚本は「世界の中心で、愛をさけぶ」の伊藤ちひろ。押井は伊藤が脚本を担当した「春の雪」を見て感銘を受け、また彼女が自分の娘と同世代だと知って、脚本を依頼することを決意したとのこと。しかも、押井と伊藤の間を取り持ったのが行定勲監督で、脚本作りにも参加。脚本監修としてクレジットされている。これまでの押井作品とは異なる世界にある「セカチュー」の血が交わることになった。

その他、新参スタッフとしてはキャラクターデザインに押井の「イノセンス」でサブキャラは担当したが、押井作品のメインキャラは初めてとなる「NARUTO ナルト」シリーズの西尾鉄也。その人物のやわらかな輪郭は押井作品には珍しく、アニメ初心者にもとっつきやすい印象だ。また、美術監督も初顔合わせで、「千と千尋の神隠し」の背景を担当した永井一男が手掛ける。

主演声優は共に演技派で知られる菊地凛子と加瀬亮
主演声優は共に演技派で知られる菊地凛子と加瀬亮

■声優に有名俳優たちをキャスティング!

これまでプロの声優にこだわってきた押井監督だが、昨今のアニメ映画の流れに乗り、主要登場人物の声に実力派俳優を起用したことは、すでに多く報じられている通り。ヒロインに「バベル」でアカデミー助演女優賞にノミネートされた菊地凛子。主人公に「それでもボクはやってない」で日本アカデミー主演男優賞ノミネートの加瀬亮。さらに「ベクシル」などで声優経験も豊富な谷原章介や、「キル・ビル」の栗山千明も参加。また、プロの声優を重用する押井作品にあっても竹中直人は別格で、これまでの押井作品に何度か参加しているが、本作でも脇役ながら独特の存在感を示している。

■監督自身がTV出演して宣伝!想定観客は「若い世代」

押井監督は、長年離れて暮らしていた娘と再会したことをきっかけに若者を意識するようになったと発言しており、本作をこれまでの押井映画のファンではなく、より若い世代に見てほしいと何度も語っている。三谷幸喜監督が「ザ・マジックアワー」をヒットさせるためにTVに出まくったのは記憶に新しいが、そこまでとはいかないまでも、押井監督も「笑っていいとも!」はじめ本作の宣伝のためのTV出演もこなしているのは、「若い世代に見てほしい」という狙いからだろう。

押井は本作のプレス資料にこう記す。「ニートやフリーター、渋谷のセンター街で座り込む少女たち。親を殺した少年。彼らを大人の目線で見下し、まるで病名のような名前を与えても、何の本質にも至りません。今こそ、彼らの心の奥底から聞こえる声に耳を澄まし、何かを言ってあげるべきだと思うのです」

>>押井作品経験者編

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