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人体に寄生する“エイリアン“の恐怖を描いた『エイリアン』シリーズ(1979-)と、宇宙から飛来した狩人“プレデター“と人類との戦いを描いた『プレデター』シリーズ(1987-)がコラボレーションしたSFパニックアクション『エイリアンVS.プレデター(AVP)』シリーズの第1作。
2004年、南極の氷の下に太古のピラミッドが存在する事をキャッチしたウェイランド社の社長、ビショップ・ウェイランドは、冒険家や考古学者などによる特別調査隊を編成。チームは遺跡を目指すのだが、現場に到着してみるとそこは既に何者かによって掘削されており、遺跡までの道筋がくっきりと刻まれていた。
時を同じくして、遺跡の奥深くで冷凍保存されていた怪物が息を吹き返す。怪物は産卵を繰り返し、その卵から生まれた謎の生物が隊員たちを襲い始めるのだった…。
『エイリアン4』(1997)から7年、『プレデター2』(1990)から14年。長き眠りから蘇った2大地球外生命体が奇跡の共演。極寒の大地を舞台に、人類を巻き込んだ壮絶な狩りが始まるっ!
……いやこんなヘッポコ映画作るくらいならもう永遠に眠ったままでいてくれっ💦💦
元ネタは1989〜1990年にかけて掲載されていたアメリカン・コミック。これは人気を博し、その後いくつもの続編漫画、小説、テレビゲームを生み出した。
『プレデター2』(1990)の中でエイリアンの頭骨がチラッとだけ映し出されていたが、映画化の企画が走り出したのは1994年。それから制作は難航し、完成まで実に10年という時間を要した。その過程で『エイリアン』シリーズの主人公、リプリーを演じるシガニー・ウィーバーは「こんなクソみたいな企画を通すくらいなら私が新しいエイリアンを作る!」と意気込み、その結果として生み出されたのがあの異色作『エイリアン4』(1997)だったりする(この映画でシガニーは共同プロデューサーとしてクレジットされている)。
また、ジェームズ・キャメロンは『エイリアン5』の監督をする予定だったらしいのだが、それとは別にこのAVPの企画が進んでいる事を知ると「こんなクソみたいな企画を通すんなら俺は降りるっ!」とシリーズから離脱してしまったという。うー、キャメロンの新しい『エイリアン』、観たかったなぁ…。
10年の開発地獄の末生み出された本作。監督/脚本を務めるのは、ジャンクフード映画の第一人者ポール・W・S・アンダーソン。『モータルコンバット』(1995)や『バイオハザード』(2002)など、誰の目にも明らかなキワモノ企画を成功に導いてきた男である。
世界三代映画祭を制した名匠ポール・トーマス・アンダーソンと比較されて“ポール・ダメな方・アンダーソン“などと揶揄される事もあるが、これだけヘッポコ映画を作り続け、しかもそれをヒットさせているんだから大したもんですよ。結果として本作も興行的にはヒットしてる訳だしね。最近はちょっと元気がないが、これからもヤバい企画請負人としてハリウッドを駆け回って欲しい。
映画の内容としてはまぁダメダメ。恐怖も情緒も無く、あるのはケレン味だけという平成『ゴジラ』シリーズ(1984-1995)みたいなジャンクフード感が溢れる出来で、ある意味ポール・W・S・アンダーソンらしいフィルムに仕上がっている。
『エイリアン』シリーズ特有のエロティシズムやフェティシズムも、『プレデター』シリーズ特有のゴアやテンションも消えてしまっており、残されたのは形骸化した味のしないアクションだけ。ポールくんさぁ、きみリドスコの映画とかちゃんと観たっ!?
脚本も無駄に回りくどいというか…。プレデターは儀式のためにエイリアンを狩っており、そのエサとして人間が必要だったと…。だから100年に一度遺跡を起動させ、人間を誘き寄せていたと…。プレデター側がもしも負けたら自爆して遺跡もろともその痕跡を消すと…。
……いやプレデター、お前らめちゃくちゃ迷惑だなっ!!自分の星でやれよ自分の星でっ!!こんなもんエイリアンさんたちが1番の被害者やでホンマ。
大体、誰も遺跡が起動した事に気付かなかったらどうしてたつもりなんだろう。19世紀以前はどうしてたんだお前らコラッ💢
そんな諸悪の根源であるプレデターが、なぜか途中から仲間ヅラし始めるという謎展開。人類と共闘するプレデターなんて観たくないぞ。
しかもなんか主人公とラブロマンスっぽい空気が流れる。最後チューするかと思ってドキドキしちゃったぞ。人間とプレデターのラブシーンはちょっと見てみたいけど、流石にそこまでは踏み込まず。それを描いてたら異次元のジェンダーレスラブストーリーとして高く評価されていたかも知れない。
本作は『エイリアン』(1979)の前日譚でもある。『エイリアン』の舞台は2122年らしいので、この中で描かれているのはその約120年前の出来事という事になる。
ウェイランド社の社長、チャールズ・ビショップ・ウェイランドとしてランス・ヘンリクセンがシリーズにカムバック。創業者である彼を基にして『エイリアン2』(1986)に出てきたアンドロイド版ビショップは作られた訳ですね。…ん、となると『エイリアン3』(1992)に出てきたアンドロイドの設計者だという人間版ビショップは一体何者なんだ?…まぁ深い事は考えないようにしよっと。
何にせよ、ランス・ヘンリクセンがまた見られたのは嬉しいファンサービス。本作で唯一ほっこり出来たポイントかも知れない。
「勝手に戦え!」と叫びたくなるような、心底どうでも良い映画。『エイリアン』シリーズも『プレデター』シリーズも、映画史にその名を刻む名作SFホラーだったのに、本作によって一気にイロモノへと降格させられてしまった。
20世紀FOXとしては在庫一掃処分セールみたいな感覚で売りに出したのかも知れないが、こういう雑な事をするとブランドにキズがついちゃってオリジナル版の評価まで下がってしまう。やるならやるでもっと真剣に、リドスコ・キャメロン・フィンチャー・ジュネに匹敵するくらいの名監督を連れてきて制作してくれ!ポール・良い方・アンダーソン、キミに決めたっ!!
プレデターが唐突にエイリアンの部位を集めて武器を作り出すシーンには「モンハンかっ💦」と苦笑いしてしまったが、実はモンハンと本作は同年に誕生している。これは偶然の一致だったんですね。
この時からポール・W・S・アンダーソンが『モンスターハンター』(2020)を実写映画化する事は運命付けられていたのだろうか。……そういや『モンハン』の大コケからポールの凋落は始まった様な気がする。新作の『In the Lost Lands』(2025:日本未公開)もヤバいらしいし。なんだかんだで彼が居なくなったら寂しいので、次こそはバーンと大ヒットを飛ばして欲しい。