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【特別コラム】「国宝」が世界に示すものとは? アカデミー賞メイクアップ&スタイリング部門にノミネート

2026年1月27日 11:00

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画像1(C)吉田修一/朝日新聞出版 (C)2025映画「国宝」製作委員会
■メイクアップ&スタイリング部門のノミネートは何を意味する?

1月22日、日本時間夜10時30分、第98回アカデミー賞のノミネーションが発表された。ショートリストに残っていた大ヒット中の日本映画「国宝」の行方が注目されており、メイクアップ&スタイリング部門でノミネートされるという快挙となったが、残念ながら国際長編映画部門のノミネートは叶わなかった。(取材・文/関口裕子、構成/大塚史貴)

メイクアップ&スタイリング部門の候補となったのは、ヘアメイク担当の豊川京子、歌舞伎メイク担当の日比野直美、歌舞伎床山の西松忠のヘアメイクチーム。ノミネートの発表を受け、3人は「歌舞伎シーンでの白塗りのメイク、歌舞伎かつらが評価された事を喜ばしく思います。そして 50 年間の人生の流れの表現も評価して頂けた事がとても嬉しいです」とコメントを出している。

画像2(C)吉田修一/朝日新聞出版 (C)2025映画「国宝」製作委員会

ヘアメイクの豊川は「流浪の月」「怒り」でも李相日監督と組んでいる日本映画制作の支柱でもあるアーティストだが、日比野は元OSK日本歌劇団(旧松竹歌劇団)の顔師(メイク担当)、西松は歌舞伎や日本舞踊、舞台など日本髪を結う芸能にかつらを提供してきた「かつら大澤」のベテラン職人だ。

注目したいのは、「 50 年間の人生の流れの表現」と表現された、いわゆる“映画”のヘアメイクだけで完結させず、歌舞伎および日本文化に評価の対象が及んだことだ。「国宝」の成功には、メイクアップやスタイリングを、映画のヘアメイク・アーティストのみの仕事とせず、実際に伝統文化を支えてきたスタッフを起用したことも大きいように思う。

画像3(C)吉田修一/朝日新聞出版 (C)2025映画「国宝」製作委員会
画像4(C)吉田修一/朝日新聞出版 (C)2025映画「国宝」製作委員会

メイクアップやスタイリングという部門の仕事は、俳優と同じくらい、スクリーン上でものを語る。美術、衣装の部門も同様だ。ただし美術の種田陽平、衣装の小川久美子らアーティストが大胆かつ緻密に生み出した“仕事”は、際立ちながらも単体で暴走することはない。メイクアップ、スタイリングの仕事を含め、一体となり、「国宝」という世界を創り上げた。解釈が広すぎるかもしれないが、今回のメイクアップ&スタイリング部門のノミネートは、そんなふうに「国宝」という映画が提示して見せた世界観全体の表現と、日本文化への評価なのではないかと感じた。


■そもそもアカデミー賞とは?

アカデミー賞は、世界が注目する映画賞の一つ。映画業界においてアーティストが手にする最も権威のある賞ともいえるが、その賞を手にするのは“時の運”でもある。

アカデミー賞を創設したのは、当時、ハリウッドをけん引したプロデューサー、監督、脚本家、俳優、撮影監督などからなる映画芸術科学アカデミー(AMPAS)。映画界の発展と関係者の顕彰を目的とした。第1回授賞式は1929年。たった36人のAMPAS会員が選び、仲間の功績を晩さん会でたたえたのが始まりだ。

画像5Photo by Gilbert Flores/Variety via Getty Images

その後、AMPASは、会の目的をはっきりと定めて会員を増やし、#OscarsSoWhite(白人ばかり)論争が起きた2016年前後からは多様性推進策を取り、さらに会員数を2倍近く増やした。現在、投票権を持つ会員数は1万人以上。その約25%が米国外に住み、対象作品もより多様性を帯びたこともあり、アカデミー賞のハリウッドだけにとどまらない権威となった。

一般にもこの賞が広く認知されるようになったのは、「真昼の決闘」でゲイリー・クーパーが主演男優賞のトロフィー(オスカー像)を受け取る姿がテレビ放送された1953年、第25回の授賞式以降だ。その放送権は、世界中の放送局に販売され、日本でもアカデミー賞特集番組として放送。1977年からは毎年、授賞式を見ることができるようになった。


■オスカー像を受け取ったらどんなプラスがあるの?

オスカー像を受け取った者にはどんなプラスがあるのか? もとより賞金はない。だが、知名度と評価が上がることで、ギャラはアップし、仕事を選べるようになり、受賞した作品の収益のアップも期待できる。加えて旅行券や美容商材、高級食品、ジュエリー、車のレンタル権などが入った数千万円相当の“ギフトバッグ”もマーケティング会社から提供される。

昨年は「ANORA アノーラ」が作品賞を含む5部門を独占
昨年は「ANORA アノーラ」が作品賞を含む5部門を独占
Photo by Kevin Winter/Getty Images

そのため米国の映画会社は、ノミネートされ、受賞させるための、アワードキャンペーンを繰り広げる。アワードキャンペーンとは、監督や俳優、スタッフなどが参加するトーク付き上映イベントやパーティなど。世界的には映画祭への参加もその一環といえる。行われるのは、投票権を持つ業界人が多く住むニューヨーク、ロサンゼルス。関係者が居住するロサンゼルスでの開催が特に多いが、ある作品はニューヨークでも7回キャンペーンを行ったという。


アカデミー賞を手にするのは“時の運”!?

今年、国際長編映画賞のロングリストに入った作品も規模の差はあれど、キャンペーンを展開した。その結果、ノミネートされたのは、以下の5作品。

イランの巨匠ジャファル・パナヒ監督のカンヌ映画祭パルムドール受賞作で不当投獄された人々の復讐を描くフランス代表「シンプル・アクシデント/偶然」。
クレベール・メンドンサ・フィリオ監督が軍事政権下の国家の腐敗を描くブラジル代表「シークレット・エージェント」。
ヨアキム・トリアー監督のカンヌ・グランプリ受賞作で不完全な親子を描くノルウェー代表「センチメンタル・バリュー」。
オリヴァー・ラクセ監督の行方不明の娘を探す父の物語でスペイン代表「Sirāt」。
カウテール・ベン・ハニア監督のガザで殺害されたパレスチナ人の少女の実話がベースのチュニジア代表「The Voice of Hind Rajab」。

国際社会を翻弄する時事的なテーマの作品が並ぶ。ブラジル代表の「シークレット・エージェント」、ノルウェー代表の「センチメンタル・バリュー」は作品賞にもノミネートされており、「シークレット・エージェント」はゴールデングローブ賞最優秀非英語映画賞も受賞した。「国宝」やパク・チャヌク監督の「しあわせな選択」は、この5本に残ることはできなかった。

「パラサイト 半地下の家族」はNEONの配給
「パラサイト 半地下の家族」はNEONの配給
Photo by Kevin Winter/Getty Images

ロサンゼルス在住のライター、町田雪さんは「今年の国際長編映画賞は特にクオリティが高く激戦だった」と語る。特筆すべきは、「ノミネートされた作品のうち、『The Voice of Hind Rajab』以外の4作品がNEONの作品」で、「NEONは、2020年『パラサイト 半地下の家族』にアカデミー賞作品賞をもたらしたインディーズの製作・配給会社で、北米での非英語圏映画の配給において抜きんでた実績を持っています」とのこと。

賞レースの最中は、まず多くの有権者に作品を認識させ、鑑賞させることが重要だ。できれば、ながら見になりがちなオンライン試写ではなく、試写室へと誘おうと多くの配給会社が力を入れる。字幕付きの非英語圏映画を多く配給するNEONもまた、投票権を持つ人々の足を試写室へと運ばせるべくキャンペーンを効率的に行ったそうだ。

監督や俳優らもホストとしてそこに参加するのはそのためだ。試写室という、映画を見る以外ない場所で、有権者を虜にし、“自分”が投票せねばならない作品だと思わせる。そして今度はその参加者自身がインフルエンサーとなって、投票権を持つすべての人に「あなたが投票すべき作品はこれだ」と発信したくなるように促す。もちろんその原動力は“作品の魅力”なのだが、賞をノミネートおよび受賞するには、キャンペーンが効果的に行われることも大きいのだ。

画像8Photo:ロイター/アフロ

2008年の第81回アカデミー賞外国語映画賞は、日本の「おくりびと」が受賞した。ドイツの「バーダー・マインホフ 理想の果てに」、フランスの「パリ20区、僕たちのクラス」、オーストリアの「レヴァンシュ 再戦」、イスラエルの「戦場でワルツを」がノミネートされており、イスラエルやドイツの作品が有力候補とされていた。

だが、滝田洋二郎監督がアワードキャンペーンの試写会でトークを行ったあと、風向きが変わったと町田さんは言う。「滝田監督のパネルディスカッションが面白かったこと、そして当時は有権者数が少なく、年齢層が高く、男性が多かったこともあり、その世代の人に強く響いたように記憶しています」。賞の受賞は、時の運でもある。


■「国宝」、世界へ

国宝」は、2025年9月、カナダのトロント国際映画祭で北米プレミアを行った。賞レース用の1週間興行は、ロサンゼルスで11月14日から、ニューヨークでは11月21日から行われた。それに合わせて渡米した李相日監督、吉沢亮は、18日にロサンゼルスのテッド・マン・シアターで、23日にニューヨークのジャパン・ソサエティで、トーク付きの上映イベントを行った。

画像9Photo by Shane Anthony Sinclair/Getty Images for BFI

12月11日、ロサンゼルスのカルバー・シアターで、渡辺謙からの手紙によって同作を鑑賞し、感銘を受けたトム・クルーズ主催の上映イベントが行われ、李相日監督が登壇した。「ラスト サムライ」(03)で渡辺謙真田広之らと共演したトム・クルーズは、「国宝」を「大スクリーンで観るべき、特別な映画」と熱く語った。このイベントは、トム・クルーズの名と共に米国、日本で大々的に報道され、翌12日のショートリストの予備投票締切を前に、「国宝」キャンペーンを締めるにふさわしいトピックとなった。

結果、アカデミー賞国際長編映画部門にこそノミネートされなかったが、「国宝」は、「魔法でも使われたかのように魅せられた」という観客を、国を超えて増やし続けている。

画像10(C)吉田修一/朝日新聞出版 (C)2025映画「国宝」製作委員会
画像11(C)吉田修一/朝日新聞出版 (C)2025映画「国宝」製作委員会

李監督は語る。「もしこの映画が子どもなら、信じられないほど強い魂を持ち、一歩一歩成長している。この映画が――そのタイトルが示す運命を背負いながら――どこまで行けるのか、私たちは皆、期待を込めて見守っています」。

国宝」は2月6日からニューヨーク、ロサンゼルス、トロントの3都市で、2月20日以降は北米主要都市で、順次一般劇場公開される予定だ。

画像12(C)吉田修一/朝日新聞出版 (C)2025映画「国宝」製作委員会
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画像14(C)吉田修一/朝日新聞出版 (C)2025映画「国宝」製作委員会

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