戦場でワルツを
劇場公開日:2009年11月28日
解説
フランスのセザール賞ほか数々の賞に輝き、第81回アカデミー外国語映画賞にもノミネートされたイスラエル映画。2006年のある夜、旧友に呼び出された映画監督のアリは、26匹のどう猛な犬に追われる悪夢に悩む話を聞き、それは自分たちが従軍した82年のレバノン侵攻の後遺症ではないかと疑う。しかし自分に当時の記憶が全くないことに気付いたアリは、その謎を解こうとかつての戦友たちを訪ねるが……。監督のアリ・フォルマンの実体験に基づいて製作されたアニメーションの意欲作。
2008年製作/90分/PG12/イスラエル・ドイツ・フランス・アメリカ合作
原題:Waltz with Bashir
配給:ツイン
スタッフ・キャスト
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2023年4月26日
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鑑賞方法:DVD/BD
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本作を鑑賞前に、ラストが衝撃的などと聞いていたためか少々先入観を持っての鑑賞となってしまった。
主人公が従軍した頃の記憶がすっぽりと抜け落ちてしまっていて、その失われた記憶をたどる物語。
途中、カメラを通して戦場をリアルに感じられなかったカメラマンがカメラを失い、現実を直視してショックを受けたという話が伏線として挟まれており、てっきり主人公が虐殺に直接関わっていたというオチだと想像してしまった。
自身が犯した虐殺行為を直視できずに自己防衛からその記憶を心の奥底へと沈めてしまったのかと。
実際は知らずに虐殺に関わった部分があったのは事実だが、誰も彼を責められるようなものではないだろう。
ラストはアニメーションから実写に切り替わり、惨たらしい虐殺の事実をまざまざと見せつけられる。これはこれで確かに衝撃的だ。しかし、変な先入観を持ったがために本来本作の持つ作品としての価値を読み取れずじまいだった。
アニメーションは作家性が強いセンスの良いものだった。この監督の別の作品も観てみたい。
2023年4月8日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
アリ・フォルマン監督自身が体験したレバノン内戦を元に描いたアニメーションであり、ドキュメンタリー映画。アリ氏が自身の記憶がないことに気付いたときの衝撃がこの作品の始まりにあり、そして、取り戻した記憶の中にあった戦争の実態が実際の映像で映し出されるラストに思わず目を背けたくなります。記憶をなくさないと生きていけないほどの現実を目の当たりにし、この作品は閉じられます。誰も望まないはずの戦争が今なお世界のどこかで膨大なエネルギーを投入して続けられていることに愕然としてしまいます。
82年イスラエル軍のレバノン侵攻におけるサブラ・シャティーラの虐殺をテーマにした作品。当事者であるAri Folman監督自身が参戦した虐殺現場での記憶をたどる旅をアニメーションで描いている。
正直、日本のアニメ技術に馴染んでいる身としては、イスラエルのそれはお世辞にも優れた技術とはいえないが、内容とともに鮮烈に印象に残る映像だ。そして、最後は痛ましい実際の映像を突きつけられる。
Ari Folman監督の症状は「解離性健忘」といわれ、トラウマやストレスによって引き起こされる記憶喪失(健忘)のことで、自分にとって重要な情報が思い出せなくなる、自己防衛の現れらしい。
この作品もあまりにも酷い話のためアニメーションでの表現にせざるを得ないのか、アニメーションだから勇気を持って表現できたのか。
パレスチナ側からみる記述は多いが、加害者側であるイスラエル側からの視点は伝えていくべき貴重な記録。戦場には善も悪も神もない。そしてその惨状は今でもシリアなどで繰り返されている。
2020年12月24日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
1982年のレバノン内戦時にイスラエル軍に従軍していた主人公。
旧友と再会しその時の記憶が曖昧なことに気づいた主人公は、知り合いの心理学者や当時軍にいた人、ジャーナリストなどの話を聞き、段々と記憶を取り戻していく…
アニメ映画ではあるが内容は監督自身の体験であり、ドキュメンタリーである。
登場人物が語る証言、主人公が思い出す記憶全てが地獄絵図。この世で起きているとは思えない光景の数々。実写で撮っても過激すぎて「ま、映画だしね。ちょっと誇張してるでしょう」と脳が解釈してしまいそうだが、アニメーションで表現することによってすんなりと見せ、最後に実際の映像を映し出すことによって「アニメだったけど全部本当のことだったんだ」と理解させることに成功している。