The NET 網に囚われた男
劇場公開日:2017年1月7日
解説
「嘆きのピエタ」の鬼才キム・ギドクが、事故で北朝鮮と韓国の国境を越えたために理不尽な運命にさらされる漁師の姿を通し、弱者が犠牲となる現代社会の闇をあぶり出した社会派ヒューマンドラマ。北朝鮮で妻子と平穏な毎日を送っていた漁師ナム・チョルは、ある日の漁の最中に網がエンジンに絡まり、韓国側へ流されてしまう。韓国警察に身柄を拘束された彼はスパイ容疑で激しい拷問を受け、韓国への亡命を強要されながらも、妻子のもとへ帰りたい一心で耐え続けるが……。「ベルリンファイル」などの実力派俳優リュ・スンボムが主人公を熱演。残忍な取調官役を「殺されたミンジュ」のキム・ヨンミン、主人公の帰りを待つ妻役を「メビウス」のイ・ウヌがそれぞれ演じた。
2016年製作/112分/G/韓国
原題:The Net
配給:クレストインターナショナル
スタッフ・キャスト
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2022年9月19日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
考えさせられる内容でその描写は見事としか言い様がない。見終わって一日たってみて昨日以上にインパクトがあった事に気づく。やはりキムギドクは天才だ。この作品は地味だがすべてが描かれている。そして監督の生涯のテーマもまた描かれている。まんべんなく余すところなく・・・。本当に素晴らしい。
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キムギドク監督作には人物が、設定も描写も役者さんもすごすぎる。
この映画では、北朝鮮でも便宜的に祖国と党に忠誠を誓いそこに嘘偽りはないが普通の市民として家族と安寧に暮らすことを人生の第一義としている男が思う存分に描かれており、このような洗脳されてるわけでもなく市井に暮らしている人がたくさんいるはず。テレビのニュースなどで、センセーショナルに編集された北朝鮮を見て、人々はどのように食べているのか暮らしているのか、と不思議に思うがこういうことなのだ、と思う。このチョルさんという漁師は軍隊経験もあり力も強いが、スパイとかでもなく、家族への愛とか普通のレベルでの国に対する忠誠、愛国心があり、それも家族と生活を守るためであり貧しくも非常にささやかながら幸福の中に生きている。国境の川で魚を採り暮らしている。暮らしは楽ではないから商売道具の船は命と同じ大切さで、そのはため船を捨てられず韓国に流れ着いてしまう。その後の流れは思っていたのとだいぶ違い、ほんとに紆余曲折ありながら、北朝鮮に帰ってしまうのだ。南の資本主義の網には引っ掛からなかったんだな。そこが意外であり、同志ジヌさんの細やかな警護、南でも国家保安のところは自由主義ではなく、北とほぼ鏡の裏表に主観的でバイアスがかかった人たちと、他の映画や本でもよく見るのでそうなんだろう、内実は共産主義とか将軍様とかいうかいわないかの差でそこには先進的な人権意識もあまりなかった、、でも時代がすすみ、世代的な考えも変わり、これが硬直した北と変わる南という違いが出るところでその象徴がジヌさんでありジヌさんの話にも耳を傾ける署長?であろう、、、結局個人としての彼、自分の人生に信念を持ち家庭人として生きる責任を持つ彼をそのように北も南も扱う事をせず、それぞれの国家主義的事情で尋問され書かされストーリーを作られ裏切られる。北と南でミラールームのように全く同じ取り調べが行われるのが面白い。それぞれの言い分があり、それに翻弄されただけ。
女性同志は無表情で、悲しいことがあるたびに泣かねばならないかと問う。いちいち悲しみに泣いたりはしないのだ、そのように訓練もされているのしおそらくそこに至る前に悲しみ苦しみは溢れてもう涙は残ってない。明洞の物量、繁栄、に眼を奪われ反応するのではなく、捨てられるごみや捨てられたような人生を懸命に生きる人をみる。
とっ散らかってしまったが、心に残ったし勉強になった。
とにかく価値観ということを考えさせられた、軸となるものがあれば価値観も思想も陣営も関係なく軸があっだゆえに本当に悲しい結末となってしまった男の話。
それにしても今2021年、コロナ禍で、画面に映る懐かしいソウル明洞の街。
2021年1月21日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD
中盤までは少々クサさも感じていたけれど、観終えてみればズンと響く作品だった。
苦しい歴史が生んだ社会の闇、その中に暮らす人間の日常が些細な出来事一つで壊され翻弄される。人間の尊厳て何だろう。
邦題が若干勿体ない気がする。
原題は『網』。たった一言に、ただ「男が囚われた」だけではない表現せんとする世界観を示唆しているのではないかと感じた。