第75回カンヌ映画祭、リューベン・オストルンドに2度目の栄冠 是枝裕和監督作2冠、早川千絵監督にカメラドールスペシャルメンション
2022年5月29日 15:10
第75回カンヌ国際映画祭が5月28日に閉幕し、リューベン・オストルンドの「Triangle of Sadness」がパルムドールに輝いた。オストルンド監督は前作「ザ・スクエア 思いやりの聖域」でもパルムドールに輝き、2作続けての快挙となった。「1度目の受賞は偶然ということも考えられるが、2度目となるとやはりそれなりに認められたということを認識できて、とても励みになる」と、喜びを顕にした。
本作は、ある豪華客船が嵐により遭難し、島に遭難した何人かの生存者の間で、乗客と彼らに使える従業員のそれまでのパワーバランスが逆転していく様を、辛辣なユーモアを交えて描く。審査員長のバンサン・ランドンは、「衝撃を与えられた。辛辣でユーモアに富み、エンターテインメント」と評価した。
是枝裕和監督の「ベイビー・ブローカー」は、キリスト教関連の団体が与えるエキュメニカル賞を受賞。さらに主演のソン・ガンホが男優賞を受賞した。ガンホはカンヌでも欧米のスター並みに人気が高く、あらためてその存在の大きさを感じさせた。
一方、女優賞には、アリ・アッバシがイランで実際に起きた娼婦の連続殺人事件を元に描いた「Holy Spider」で、事件の真相を追求するジャーナリストに扮したザル・アミル・エブラヒミが受賞。ヨルダンで撮影された本作は、ヨーロッパ4カ国の合作でイランからの投資はなく、エブラヒミは「イランだったらこの映画を作ることはできなかっただろう」と、アッバシ監督の勇気を讃えた。
今年の審査員メンバーはとくに気前がよく、グランプリと審査員賞にはそれぞれ2作品が選ばれ、さらに第75回を記念し特別に第75回賞を創設。ふだんより多くの作品に賞を授与した。
第75回賞に輝いたのは、カンヌ常連で無冠のことの方が少ない印象のあるダルデンヌ兄弟の「Tori and Lokita」。共にアフリカからベルギーへ亡命し、姉と弟のように心を通わせるふたりの孤独なティーンの苦闘を描く。ダルデンヌ兄弟の冷徹な眼差しに変わりはなく、本賞は彼らのキャリアに対する功労賞とも言えるかもしれない。
グランプリを分け合ったのは、下馬評の高かったベルギーのルーカス・ドンによる、ふたりの少年の強い友情を描いた「Close」と、クレール・ドゥニが南米を舞台に出口のない恋愛を描いた「Stars at Noon」。監督賞は、ある殺人事件をきっかけに、被害者の妻と刑事が関係を深めていく様をスリリングに描いた「Decision to leave」のパク・チャヌクに渡り、脚本賞はタリク・サレがカイロの大学に巣食うイスラム指導者の腐敗を描いた「Boy From Heaven」に授与された。
審査員賞は、こちらも人気の高かったルカ・マリネッリとアレッサンドロ・ボルギ主演の「The Eight Mountains」と、イエジー・スコリモフスキがロベール・ブレッソンの「バルタザールどこへ行く」をリメイクした「EO」が分け合った。
日本関連では「ある視点」部門に入選した早川千絵監督の「PLAN 75」に、カンヌの全部門を通して初長編作品に与えられるカメラドールのスペシャル・メンション(次点)が授与された。日本人監督としては、「萌の朱雀」(1997)の河瀬直美監督に続く快挙となった。早川監督は受賞式の壇上で、「誰にとっても最初の一本というのは思い入れが深く、特別なものだと思いますが、私にとって特別で大切な1本目の映画をカンヌに呼んで頂き、評価して下さって本当にありがとうございます」と述べ、喜びを噛み締めた。(佐藤久理子)
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
【推しの子】 The Final Act NEW
【忖度なし本音レビュー】原作ガチファン&原作未見が観たら…想像以上の“観るべき良作”だった――!
提供:東映
物語が超・面白い! NEW
大物マフィアが左遷され、独自に犯罪組織を設立…どうなる!? 年末年始にオススメ“大絶品”
提供:Paramount+
外道の歌 NEW
強姦、児童虐待殺人、一家洗脳殺人…地上波では絶対に流せない“狂刺激作”【鑑賞は自己責任で】
提供:DMM TV
全「ロード・オブ・ザ・リング」ファン必見の超重要作 NEW
【伝説的一作】ファン大歓喜、大興奮、大満足――あれもこれも登場し、感動すら覚える極上体験
提供:ワーナー・ブラザース映画
ライオン・キング ムファサ
【全世界史上最高ヒット“エンタメの王”】この“超実写”は何がすごい? 魂揺さぶる究極映画体験!
提供:ディズニー
ハンパない中毒性の刺激作
【人生の楽しみが一個、増えた】ほかでは絶対に味わえない“尖った映画”…期間限定で公開中
提供:ローソンエンタテインメント
【衝撃】映画を500円で観る“裏ワザ”
【知って得する】「2000円は高い」というあなただけに…“超安くなる裏ワザ”こっそり教えます
提供:KDDI
モアナと伝説の海2
【モアナが歴代No.1の人が観てきた】神曲揃いで超刺さった!!超オススメだからぜひ、ぜひ観て!!
提供:ディズニー
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。