「リメンバー・ミー」金曜ロードショー放送記念 ディズニー&ピクサー映画を彩る名曲たち【映画.comシネマStyle】
2022年3月4日 22:00
毎週テーマにそったおすすめ映画をご紹介する【映画.comシネマStyle】。
陽気でカラフルな「死者たちの世界」を舞台に、ギター少年ミゲルの冒険と、家族との強い絆を描いたピクサー・アニメーション「リメンバー・ミー」が、本日3月4日に「金曜ロードショー」で放送中です。第90回アカデミー賞で主題歌賞を受賞した、物語の鍵を握る劇中歌「リメンバー・ミー」も人気を博しました。そこで今週は、名曲が堪能できる、編集部おすすめのディズニー&ピクサー映画5本をご紹介します。
天才的なギターの才能を持つミゲルはミュージシャンを夢見ているが、過去の悲しい出来事が原因で、彼の一族では音楽禁止の掟が定められていた。ある日ミゲルは、憧れの伝説的ミュージシャン、デラクルスの霊廟に飾られていたギターを手にしたことをきっかけに、まるでテーマパークのように楽しく美しい「死者の国」へと迷いこむ。ミゲルはそこで出会った陽気で孤独なガイコツのヘクターに協力してもらい、元の世界へ戻る方法を探るが……。
「リメンバー・ミー」吹き替え声優・あらすじ ミゲル、ヘクターの声は誰?
▽「白雪姫」(1937年/83分/デビッド・ハンド監督)
グリム兄弟の童話をもとに映像化したウォルト・ディズニー製作による長編映画第1作で、世界初の長編アニメーション映画。
お城で暮らす美しい白雪姫は、意地悪な継母の女王にこき使われていた。ある日、女王は自分より白雪姫の方が美しいと魔法の鏡に言われて怒り狂い、手下の狩人に白雪姫を殺すよう命じる。哀れに思った狩人によって、難を逃れた白雪姫。森の奥へと迷い込み、7人の小人が暮らす家にたどり着く。小人たちと一緒に楽しく過ごす白雪姫だったが、魔法で老婆に化けた女王に騙され、毒リンゴを口にしてしまう。
恐らく誰もが知っている昔話ですが、本作の見どころは、いまではレトロなタッチが逆に新鮮な、丁寧な手描きのカラーアニメーション表現でしょう。キャラクターたちのイキイキとした滑らかな動きに、雨や嵐など天候の表現も見事。豪華な装丁本をめくるリアルなシーンから、美しいアニメの世界に見る者を誘う、まさにおとぎ話的な演出にもうっとりしてしまいます。フランク・チャーチル作曲による「ハイ・ホー」「いつか王子様が」は、一度聞いたら忘れられない名曲です。
有名なトリビアですが、7人の小人たちが軽快なリズムで、仕事の行き返りに列をなして歌う「ハイ・ホー」、これは英語では「仕事を終え家に帰ろう」というような歌詞がついているですが、日本語吹き替え版は、なぜか「仕事が好き」に変更されています。
「いつか王子様が」は、白雪姫が「いつか必ず王子様が私を見つけ出し、お城へ連れて行く~」と美声で歌いあげます。本作の製作は1937年。自力で自分の幸せを手にしようと奮闘する昨今のディズニープリンセスたちとは異なり、85年前のお姫様は、王子様頼みの受け身の姿勢です。また「怒りんぼ」という名で「女め!」「甘い顔をすると女はつけあがる」なんてセリフを吐く、現代においては女性蔑視のモラハラじいさんと一蹴されてしまうようなキャラも出てくるなど、古いジェンダーロールを考察することもできます。とはいえ、いつの時代に見ても「白雪姫が美しいのは心が美しいから」という普遍的なテーマを描く、不朽の名作アニメです。
▽「美女と野獣(1991)」(1991年/84分/ゲイリー・トルースデール監督、カーク・ワイズ監督)
野獣に姿を変えられた王子と、美しく聡明な娘ベルの愛の行方を描いた名作アニメ映画。第64回アカデミー賞で、アニメ映画として初めて作品賞にノミネートされ、歌曲賞を受賞しました。
森のなかの城で暮らすわがままな王子は、魔女によって醜い野獣に姿を変えられてしまう。魔法のバラの花びらが全て散るまでに“真実の愛”を見つけなければ、永遠に元の姿に戻れないという。数年後、城に閉じこもって暮らす野獣のもとに、美しく聡明な娘ベルが現れる。呪いで家財道具に姿を変えられた城の家来たちは、彼女こそ呪いを解いてくれる人物ではないかと考えもてなすが、野獣とベルは反発しあってばかり。しかし、城で暮らすうちに、ベルは野獣の本当の優しさに気付いていく。
シャンデリアがきらめく大広間で、黄色のドレス姿のベルが、正装した野獣と手を取り合い踊るダンスシーン。窓の向こうには満天の星が瞬き、天井画のキューピッドたちがふたりをそっと見守る……。ディズニープリンセスの物語のなかでも、特にロマンティックなこのシーンでポット夫人が歌っているのが、主題歌でテーマ曲の「美女と野獣」。ポット夫人のあたたかみのある優しい歌声が心地よく、愛の予感に胸がときめく名場面です。
タイトルを聞いた瞬間、頭のなかに流れ出すこの名曲を生み出したのは、「リトル・マーメイド」をはじめ数々のディズニー映画の音楽を手がけた作曲家アラン・メンケンと盟友ハワード・アシュマン。セリーヌ・ディオンとピーボ・ブライソンがデュエットした主題歌は世界中で大ヒットし、アカデミー賞の歌曲賞に輝きました。劇中のポット夫人の歌唱シーンは、オリジナル版をイギリス人歌手のアンジェラ・ランズベリー、日本語吹き替え版を歌手のポプラが担当しています。
ディズニーアニメで初めてブロードウェイミュージカルになった「美女と野獣」は、主題歌はもちろん全編通して名曲ぞろい。ベルと村人たちが歌う「朝の風景」に始まり、ユーモラスな「強いぞ、ガストン」、最高のおもてなし曲「ひとりぼっちの晩餐会」、ロマンティックな「愛の芽生え」など、珠玉のナンバーが物語を盛り上げます。エマ・ワトソン主演の実写版「美女と野獣」では、アニメ版に登場した全てのミュージカルナンバーが使用されたほか、メンケンによる新曲3曲が追加に。野獣の心情を綴った「ひそかな夢」など、新たな名曲が生まれました。
2020年には、東京ディズニーランドの「美女と野獣」エリアが満を持してオープン。新アトラクション「美女と野獣“魔法のものがたり”」では、名曲とともに名シーンの数々が完全再現されています。コロナ禍で筆者はまだ実際に体験できていませんが、いつか必ず訪れて、物語の世界にどっぷりと浸りたいと思います。
▽「アラジン(1992)」(1992年/90分/ジョン・マスカー監督)
「アラビアン・ナイト」の物語をもとに、不思議なランプを手に入れた主人公アラジンの冒険を描くファンタジーアニメーション。音楽は「美女と野獣(1991)」と同じく、巨匠アラン・メンケンが担当しました。
貧しいながらも真っ直ぐな心を持ち、人生を変えるチャンスをつかもうとしているアラジンは、自由になることを望む王女のジャスミンと、3つの願いを叶えてくれるランプの魔人ジーニーに出会う。身分の差がありながらも惹かれ合っていくアラジンとジャスミン。そんなふたりを見守るジーニーは、ランプから解放されたいと願っていた。
冒頭の「アラビアン・ナイト」で一気に「アラジン(1992)」の世界に引き込まれ、その後も一度は聞いたことのある曲が続きますが、特にアラジンとジャスミンが魔法の絨毯で世界中を旅するシーンで流れるバラード「ホール・ニュー・ワールド」は、音楽の授業やカラオケなどで触れてきた方も多いのではないでしょうか。
そんな名曲ぞろいの本作のなかで私が特に好きなのは、ジーニーが魔法のランプについて説明する「フレンド・ライク・ミー」です。幼少期にビデオで「アラジン」を見たときは陽気なメロディしか覚えていなかったのですが、高校生時代に再び聞いたことで、改めてこの曲の偉大さを知ることになります。
それは部活帰り、友人と4人で帰宅しているときのことでした。好きなディズニー作品の話題で盛り上がり、誰かが「アラジン」のタイトルを挙げると、なぜか私以外の3人がこの曲の日本語バージョンを前奏から歌い始めたのです。「なんでみんな歌えるの。あとなんで前奏から」と驚きましたが、そのまま聞いていると「そう、アリババには40人もの盗賊がいた」の「そう」の難しいタイミングもみんな完璧。後半になるにつれ体を揺らしながら歌う友人たちの姿に若干引いたものの、そうしたくなるほどの“心躍る”メロディとは、まさにこのことなんだなと実感しました。
それから何度も聞いてきましたが、実際に歌おうとすると音程と強弱がかなり難しいのです。ジーニー役のロビン・ウィリアムズさん、日本語吹き替え版でジーニー役を務めた山寺宏一さんの表現力には、いまも圧倒され続けています。
ちなみに、実写「アラジン」でも同曲は見せ場のひとつ。ジーニーを演じたウィル・スミスさんによく合った、ヒップホップ調の「フレンド・ライク・ミー」がかっこいいので、そちらもおすすめです。
▽「魔法にかけられて」(2007年/108分/ケビン・リマ監督)
ディズニーアニメのプリンセスが、実写の世界へ迷い込んだことで起こる大騒動を描いたファンタジックコメディ。
魔法の国アンダレーシアで暮らすジゼル(エイミー・アダムス)は、王子との結婚式の日に、彼の義母であるナリッサ女王(スーザン・サランドン)に騙され、現代のニューヨークへと送り込まれてしまう。いままでいた世界の常識が通じず困り果てていた彼女は、超現実主義の離婚弁護士ロバート(パトリック・デンプシー)と出会う。
幼い頃から親しんでいたディズニープリンセスが、魔法の井戸を抜けて、実写の世界に現れる……そんなオリジナリティ溢れる設定に、公開当時中学生だった筆者は、どんなに胸を躍らせたことか。現代のニューヨーク、タイムズスクエアのど真ん中でマンホールから顔をのぞかせる、純白&超ふわふわのウエディングドレス姿のジゼル。その姿をひと目見たときの高揚感は、いまでも新鮮に思い出すことができます。
本作の見どころは、おとぎの国と現実世界のギャップ。「運命の王子様と出会い、一緒に歌でデュエットしたら、すぐに結婚する」「結婚したあとは、お城で永遠に幸せに暮らす」「プリンセスは歌とダンスが完璧で、動物とも仲良し」……そんなディズニーアニメの“プリンセスあるある”に、ほかでもないディズニー作品自らツッコミを入れ、現代風にアップデートしていきます。いつまでも王子様を待つのではなく、自分の力で幸せになり、愛する人のために戦う。ジゼルのキャラクター像は、近年のディズニーアニメのヒロインに見られる強さ、たくましさにつながっていると言えます。
しかし一方で、本作以前のディズニーアニメと逆行するわけではなく、過去の名作のオマージュが満載で、大切なメッセージが継承されているのも嬉しいところ。ジゼルのストーリーの端々から、「白雪姫」「シンデレラ」「眠りの森の美女」のエッセンスを感じることができます。さらに、おとぎの国の住人であるジゼルが、現代を生きる人々に、夢を見ることや、愛を伝えることの大切さを伝えるシーンに心動かされ、大人を童心に返らせてくれるんです……本当に素敵な作品なんですよ……。
物語は一瞬で魔法の世界に誘ってくれる、夢見るジゼルの歌声が甘く響く「真実の愛のキス」で幕を開け、ニューヨークでまさかの(!)動物たちと、ごきげんに部屋を掃除する「歌ってお仕事」、ジゼルのプリンセス力が炸裂し、ニューヨークの人々を巻きこむミュージカルへと発展する「想いを伝えて」などが、物語を華やかに彩ります。なかでも、ジゼルが本当の愛を知る「そばにいて」は他楽曲と打って変わって、切ないメロディと歌詞が印象的。ふたつの世界、ふたつの愛の間で揺れるジゼルの複雑な心情が感じられ、「美女と野獣」の大広間のダンスに並ぶ名シーンになっています。
そしてファンには嬉しいことに、15年後の世界が舞台の続編「ディスエンチャンテッド(原題)」が、2022年にDisney+で配信予定。アダムス、デンプシー、エドワード王子役のジェームズ・マースデン、エドワード王子と恋に落ちるナンシー役のイディナ・メンゼルが続投、マーヤ・ルドルフらが悪役で参戦し、「ヘアスプレー」「glee グリー」の名匠アダム・シャンクマンが監督を務めます。アダムスが「前回より歌とダンスの数が増えた」と語っているので、期待が高まりますね!
▽「トイ・ストーリー3」(2010年/103分/リー・アンクリッチ監督)
1995年に製作されたピクサー第1弾長編アニメ「トイ・ストーリー」から、約10年後の世界が描かれたシリーズ第3弾。第83回アカデミー賞にて、作品賞含む5部門にノミネートされ、長編アニメーション賞と、「We Belong Together」(邦題「僕らはひとつ」)で主題歌賞を獲得しました。
アンディのおもちゃであるウッディやバズ・ライトイヤーたちは変わらずアンディの家にいた。しかし17歳になったアンディの大学進学が決まり、おもちゃは整理されることに。ウッディは大学に、バズたちは屋根裏部屋に保管されることになるが、トラブルで近くの保育園に寄付されてしまう。アンディに捨てられたと思いこみ傷心のおもちゃたちだったが、ウッディはただひとりアンディを信じて、保育園からの脱出を試みる。
「トイ・ストーリー」といえば、1作目で主題歌となった「You've Got A Friend In Me」(邦題「君はともだち」)を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか? 「トイ・ストーリー3」でも、オープニングでこの曲がかかります。大きくなっていくアンディと、いつも隣にいるウッディの思い出の場面とともに流れるその曲は、変わらず名曲として響きますが、どんどん成長するアンディとフェードアウトしていく曲に寂しさを感じてしまいます。
子どもたちと遊ぶことが生きがいともいえるおもちゃは、時の流れとともに子どもたちの手から離れていってしまう運命。あんなにいつも一緒だったアンディとウッディですら……。ただ大好きなあの人の思い出のなかで屋根裏部屋にいることが幸せか、はたまた新たな子どもたちと出会うことが幸せか。そんなおもちゃたちに新たな幸せが見つかるエンディングで、「僕らはひとつ」がかかります。アンディの背中を見送るウッディ。「僕らはひとつ 僕らはひとつなのさ どこまでもつづく ずっと」という歌詞は、離ればなれになり、時が経っても、彼らは永遠の相棒同士だと、強く信じさせてくれます。
「きみのすぐそばに、いつもおれがいる」から「ぼくらはひとつなのさ」という関係へ、アンディだけではなく、ウッディやおもちゃたちの成長、進化を感じさせる作品と歌です。
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