「ピーターラビット」放送記念 「動物VS人間」の仁義なき壮絶バトル映画4選 【映画.comシネマStyle】
2021年6月25日 19:00
毎週テーマにそったおすすめ映画をご紹介する【映画.comシネマStyle】。本日6月25日に世界中で愛されるベストセラー絵本を初めて実写映画化した「ピーターラビット」が、日本テレビ系「金曜ロードショー」で放送、続編「ピーターラビット2 バーナバスの誘惑」が公開となります。同シリーズの見どころは、ふわふわ&モフモフのピーターラビットのかわいらしさはもちろん、お隣のマグレガーさんとの、容赦なく最大火力で行われる壮絶なバトル。そこで今週は、「動物VS人間のバトルを描いた映画」を特集し、編集部メンバーがチョイスしたおすすめ作品4本をご紹介します。(文:蛯谷朋実、ドーナッツかじり)
なお「ピーターラビット」は、「イースター気分を味わえる映画3選」(https://note.com/eiga_com_style/n/n825372f8accb)の記事で取り上げましたので、こちらもチェックしてみてください。
人間のエゴによって生まれた巨大生物に街が襲われ、「ワイルド・スピード」シリーズのドウェイン・ジョンソンが立ち向かう。1986年に発売されたアーケードゲーム「RAMPAGE」をベースに映画化された、王道のアニマルパニックアクションをご紹介します。
宇宙ステーションで行っていた遺伝子実験が失敗し、不時着したカプセルから噴出されたサンプルにより、ゴリラ・オオカミ・ワニの3頭が感染。様々な遺伝子の長所を取り入れた遺伝子操作を受けたことにより、巨大化・狂暴化した動物たちに対し、軍部でも止める手立てがない。元特殊部隊隊員で霊長類学者のデイビス(ジョンソン)は、彼が世話しており、巨大化した親友のゴリラ・ジョージを何とか止めようと、巨獣たちがいる大都会シカゴの街へと向かう。
「巨大な動物による街の破壊を止める」というと、昔からよくある話だと感じる人も多いかもしれません。しかし、本作で動物たちを巨大化させる遺伝子サンプルがすごい! サメの死ぬまで続く成長、シロナガスクジラの高成長率、カブトムシの強い外骨格、チーターの俊敏さ、トゲマウスの細胞修復能力、さらにはコウモリのエコーロケーションの能力、それらすべての遺伝子操作が同時に起こるのです! つまり巨獣化した動物は、でかい!はやい!かたい!んです。ロケットランチャーでも傷をつけることすらできないんです。
「こんな巨獣たちを止めることはできるのか!?」とちょっと絶望しかけるんですが、大丈夫! 今回止めようとしているのは、ロック様ことドウェインです。安心感が段違いです。しかも彼は元特殊部隊かつ動物の専門家。巨獣を倒すためのスペック全部盛りです。
さらに、巨大化した動物のひとつは、そんなロック様と心と心が通じ合っているアルビノのゴリラ・ジョージ。このロック様とジョージのやりとりが何よりも最高。ハンドサイン(手話)を使ってコミュニケーションをとりあうふたり。言葉が通じていることにも感動しますが、ジョージがすぐに悪いジョークをいう。このふたりのやりとりをずっと見ていたいと思うところに、宇宙から降ってきた遺伝子サンプルがジョージを変化させてしまいます。自分の体が巨大化、強力化することに不安を覚えるジョージ。どうにかしたいロック様。しかし無情にも遺伝子サンプルの力はジョージを狂暴化させていく……。
こうなったら親友をどうにか救い、シカゴの街を守るため、ロック様が全力で事態の収拾に向かうのです! 軍もかなわなかった巨獣たちに果たしてどう立ち向かうのか! 一時も見逃すことのできないバトルを是非ご覧ください!
「ムーンライズ・キングダム」「グランド・ブダペスト・ホテル」のウェス・アンダーソン監督が、作家ロアルド・ダールの「すばらしき父さん狐」を、ストップモーションアニメで映画化。
キツネのMr.フォックスは、かつては盗みを働いていたが、妻と子のために足を洗い、いまは新聞記者として暮らしている。ある日、彼は丘の上の家を購入したが、丘の向こうには意地悪で愚かな金持ちの農場主3人が住んでいた。やがて野生の本能が目覚めたMr.フォックスは、人間たちの裏をかいて、農場から獲物を盗むように。遂に怒った農場主たちは結託し、トラクターを使い、キツネの家族が住む丘を根こそぎ掘り返し始める。
銃をぶっ放し、トラクターで住みかを荒らす非情な人間たちに負けず劣らず、えげつない作戦に打って出る動物たち。「ピーターラビット」同様、両者の攻防が、茶目っ気たっぷりに描かれます。ちなみに、キツネ家族を追いつめる農場主のひとり、七面鳥とリンゴ園を営むビーンは、原作者のダール氏がモデルになっているそうです。
声優キャストには、Mr.フォックス役のジョージ・クルーニーをはじめ、メリル・ストリープ、ジェイソン・シュワルツマン、ビル・マーレイらが集結。アンダーソン監督は実写と同じスタイルでの撮影にこだわり、またライブ感を出すため、声は野外で収録されました。演じるキャラクターたちと同様、キャストたちは実際に野原中を走り回り、穴を掘り、アフレコに臨んだそう。
ストップモーションアニメならでは、ぬいぐるみのような質感のキャラクターたちは、抱きしめたくなること必至! いつも見るたびに、「ぬいぐるみかフィギュアが欲しい……!」という気持ちになります。製作陣は4000点以上の小物、150以上のセット、500体以上のパペットを手作りし、12万5280コマ以上を撮影。ちなみにMr.フォックスのスーツは、アンダーソン監督がプライベートでオーダーメイドしている仕立屋から生地を入手し、ほぼ同じパターンで作られたものだそうです。こうしたこだわりが、風に揺れる毛や潤んだ瞳など、生き生きとした動物たちの表情を生み出しているのです。
筆者のお気に入りは、文化的でおしゃれな生活を送っているキツネ一家が、食べ物を前にした時など、ふとした瞬間に動物らしさが出てしまうところ。チャーミングなキャラクターにキッチュなアイテム、絵本のような世界観――丸ごとかわいい物語のなかで、アンダーソン監督らしいシュールさや毒気が良いアクセントになっています。
またアンダーソン監督は、2018年に再びストップモーションアニメ「犬ヶ島」を製作。こちらは日本を舞台に、「犬インフルエンザ」の蔓延で離島に隔離された犬たちと、自分勝手な人間のバトルが描かれていて、クセになる味わいがあるので、おすすめです。
現在公開中の「クルエラ」の主人公クルエラが、かわいいダルメシアンの子犬たちに襲いかかるディズニーアニメーション。
ロンドンにすむ2匹のダルメシアン、ポンゴとパジャータは、飼い主同士の結婚と合わせて幸せな家族となり、しばらくして15匹の子犬に恵まれる。パジャータの飼い主・アニタの学生時代の友人・クルエラから、その子犬たちを売るように頼まれる。クルエラは毛皮に目がなく、ダルメシアンの美しい毛皮に魅了されていたのだ。しかし、アニタが売ることを拒むと、クルエラは15匹の子犬たちを盗ませる。ポンゴとパジャータは誘拐された子どもたちを探すため、町中の犬から情報を集めていく。どうにか子どもたちを見つけ出した2匹だが、15匹の子どもたちのほかに84匹のダルメシアンの子犬たちが監禁されており、合計101匹による大脱出が開始される。
なんと映画が公開されたのは60年前! いまでも様々な商品展開もされており、キャラクターとして人気の高い「101匹わんちゃん」ですが、映画は見たことがないという人も多いのではないでしょうか? この映画もまさしく犬たちVS人間のバトル映画です。
主役はもちろん犬たち。ポンゴとパジャータはロンドンで子どもたち15匹ととても幸せに暮らしていました。15匹それぞれ個性も出てきて、かわいい盛りのころ、悪魔のような女クルエラによって誘拐されてしまいます。嘆き悲しむ2匹の親犬。どうにか見つけようと町中の犬たちにコンタクトを取ります。この犬のコミュニティもすごい! 遠吠えで情報を伝達、合間には通信兵(!?)の犬までいて、遠くの場所まで調査の幅を広げていくのです。
どうにか居場所を突き止めた2匹は、厚い雪道を超え、冷たい川を渡って子どもたちのもとへ向かいます。無事子どもたちと再会したものの、自分たちの子ども以外にも84匹もの子犬が捕まっていてさぁ大変! どうにかおまぬけな監視役のふたりのワル、ジャスパーとホーレスの目をかいくぐって逃げ出していきます。そこからクルエラと101匹の犬たちのデッドヒートが始まるのです。
かわいい子犬たちを追い回すクルエラの、異常なまでのダルメシアンへの執着に怖さを感じる本作。現在公開中の映画「クルエラ」ではその理由も明らかに!? 「101匹わんちゃん大行進」では何をやっても失敗ばかりのおバカなジャスパーとホーレスも活躍する「クルエラ」、ぜひ2作合わせて楽しんでください。
アルフレッド・ヒッチコック監督が、ダフネ・デュ・モーリアの短編小説を原作に、突如として凶暴化した鳥の大群に襲われる人々の恐怖を描いたパニックスリラー。
新聞社の社長令嬢メラニー(ティッピー・ヘドレン)は、ペットショップで知り合った弁護士ミッチ(ロッド・テイラー)に興味を抱き、彼を追ってボデガ湾沿いの港町を訪れる。その町で、メラニーは突然舞い降りてきた1羽のカモメに額を突かれ、ケガを負う。さらに翌日、ミッチの妹キャシー(ベロニカ・カートライト)の誕生日パーティで、カモメの大群が子どもたちを襲う事件が発生。夜には無数のスズメがミッチの家に侵入し、その後も町のあちこちで鳥が住人に襲いかかる。
筆者はヒッチコック作品が好きなので、「鳥」ももう何度も見ているのですが、見返すたびに新鮮に驚くほど、とにかく鳥が多い! おびただしい数の鳥が、群れをなして人間に襲いかかるシーンは、トラウマものです。注目ポイントは、鳥の襲来に備え、メラニーとミッチの家族が万全の対策を施し、家のなかで夜を明かすシーン。肌や目を突きまくるクチバシが最も恐ろしいのですが、何よりもその不気味な羽音を存分に体感することができます。姿は見えずとも、その羽音だけで恐怖が増幅する仕掛けになっているのです。
冒頭のペットショップ、無数に並ぶ鳥かごのなかの鳥たちは、人間に飼育される存在。動物と人間が戦う「動物パニック」系の映画では、見るからに獰猛なサメやワニやクマなどが“お約束”であるからこそ、身近で大人しい印象がある鳥の豹変は、かなりショッキングです。そして最も恐ろしいのは、最後まで、鳥が人間を襲う理由が説明されないこと。なぜ始まったのか分からない事象には、「どう止めれば良いのか」「いつ終わるのか」が分からない……という絶望感があります。
本作は、“サスペンスの帝王”ヒッチコックが、世界中で大ヒットした「サイコ(1960)」に続いて発表したもの。ヒッチコックは、鳥が人間を攻撃した実際の事件の記事を集め、リアリティを追求しました。また、彼のフィルモグラフィのなかで「技術的に最も困難な作品」ともいわれ、映像表現の点でも挑戦が多かったようです。
合成された鳥や模型も含まれていますが、調教師の指導のもと、本物の鳥も大いに活躍しました。子どもたちのパーティに鳥の大群が襲来する場面や、クライマックスのメラニーのシーンでは、洋服に鳥の足を縛りつけたり、カメラに肉を置いて鳥の動きを操作したりと、試行錯誤の連続。キャスト陣の体当たりの演技と多彩なアイデアで、スリリングなシーンが実現しています。
ドラキュラ、フランケンシュタインなど怪物映画が数多く製作された時代を経て、本作は「身近な存在が恐怖の対象となる」という新たなテーマを打ち出し、「ジョーズ」「トレマーズ」など、動物&怪物パニック映画の“お手本”ともいえる作品になりました。後世の作品に影響を与えた、恐怖のエッセンスの数々をお楽しみください。
「動物VS人間のバトルを描いた映画」セレクト、いかがだったでしょうか。「ピーターラビット」を楽しんだあとの映画選びに、本記事がガイド役としてお役に立てれば幸いです。
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