「アラジン」放送記念 ガイ・リッチー監督が大好きだ! おすすめ映画5選 【映画.comシネマStyle】
2021年5月21日 20:00
毎週テーマにそったおすすめ映画をご紹介する【映画.comシネマStyle】。本日5月21日にディズニー不朽の名作を実写化した「アラジン」が、日本テレビ系「金曜ロードショー」でテレビ初放送されることを記念し、今週はメガホンをとったガイ・リッチー監督のおすすめ映画をご紹介します。(文:蛯谷朋実、佐藤レモナ、ドーナッツかじり)
長編初監督作「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」、続く「スナッチ」が大ヒットとなり、華々しいデビューを飾ったリッチー監督。その後も「シャーロック・ホームズ」シリーズ、「コードネーム U.N.C.L.E.」など、様々な作品を手がけてきました。マシュー・マコノヒーら豪華キャストが集結した新作「ジェントルメン」も公開中。本記事では、「スナッチ」から「ジェントルメン」まで、リッチー監督の魅力を存分に堪能できる映画5本を集めてみました。
「スナッチ」(2000年/102分)
86カラットのダイヤをめぐって繰り広げられるワルたちの群像劇。それが、リッチー監督の長編映画2作目となる「スナッチ」です。
ベルギーの宝石業者から86カラットのダイヤを奪った、フランキー・フォー・フィンガー(ベニチオ・デル・トロ)。ニューヨークにいるボス・アビー(デニス・ファリナ)にダイヤを渡す前に、小粒のダイヤをさばくため、彼はロンドンに降り立った。そんな情報がロンドン裏社会の面々に伝わり、彼は狙われることになる。一方、非合法ボクシングのプロモーター・ターキッシュ(ジェイソン・ステイサム)と相棒トミー(スティーブン・グレアム)は、ブリック・トップ(アラン・フォード)のもと、裏ボクシングの八百長試合を仕込むことに。しかし、用意したボクサーが“パイキー”と呼ばれる流浪民のミッキー・オニール(ブラッド・ピット)に倒されてケガをしてしまい急遽、ミッキーを代役に立てることになるが……。
一見全く関係のなさそうな、86カラットダイヤと裏ボクシング。そこに関わる男たち。初めは登場人物も多く「一体どういうことなんだろう……?」と、頭に「?」が多く浮かんでいたのですが、少しずつ物語の進行とともに様々な要素が絡み合っていくと、「次はどうなるんだ」「あの人は一体」「え、どうするのこの状況!?」と、どんどんのめりこんでいきます。
さらに、登場するキャラクターそれぞれが魅力的なことも、物語にのめりこんでしまう理由に。それぞれがどこか抜けていて、ここぞという場面で何かしらうまくいかない――その連続によって繋がり、紡ぎ出されていく展開に、ハラハラの合間のちょっとした笑いがスパイスとなって、いつの間にやらこの映画の虜になってしまいました。筆者は、質屋の3人組がお気に入りです。
演じる俳優たちもまた最高。裏ボクシング界でのし上がろうとしつつも、どんどんヤバい方向に落ちていくターキッシュを演じるのはステイサム。アクションのイメージが強い彼ですが、今作では銃をぶっ放したり、派手なカーチェイスを繰り広げたりすることはないのですが、トラブルの数々に直面したときのおちゃめな困り顔を、この作品で拝むことができます。
そんなターキッシュが裏ボクシングのために雇うのが、素手ボクシングのチャンピオン“パイキー”のミッキー・オニール。彼を演じるのはピット。トップスターの彼が破格の金額でこの作品に出演したことも、公開当時話題となりました。流浪民という役でキツいアイリッシュなまりで話し、イギリス人にすら何を話しているのか伝わらないという役柄について、リッチー監督は過去のインタビューで以下のように語っていました。
「アメリカ人であるブラッド・ピットに、むりやり正しいイギリス英語を話させるなんて、そもそもくだらないと思ったんだ」
ピットが「ファイト・クラブ」でも観客を魅了したボクシングシーンは、本作でも必見です。
「シャーロック・ホームズ」(2009年/129分)
幾度となく描かれてきたシャーロック・ホームズを、リッチー監督が撮るとどうなるのか? 原作にはないオリジナルストーリーで描いたのが本作です。
19世紀末のロンドン。ホームズ(ロバート・ダウニー・Jr.)と医師ワトソン(ジュード・ロウ)のふたりは、怪しい黒魔術の儀式を行い、若い女性を次々と殺害するブラックウッド卿(マーク・ストロング)を逮捕する。だが、処刑されたはずのブラックウッドがよみがえり、再び殺人事件が発生する……。
ホームズといえば、天才的な観察力と推理力、さらに幅広い知識を有し、様々な難事件を解く名探偵である一方、偏屈で頑固で、人をいらつかせることにも長けている。そんな常人にはなかなか理解し難いキャラクターですが、この作品ではそんな彼の頭の中を少しのぞくことができる気がします。物語のスタート、ブラックウッド卿を追ってホームズは、儀式が行われている場所に潜入します。そこで見張りを倒すときに、ホームズの頭の中が、観客に鮮明に映し出されます。見張りの動きを予測し、どういった手で倒していくのか、そのシーンを初めて見たときの興奮をいまだに覚えています。
また、マーベルファンとしてもこの「シャーロック・ホームズ」シリーズは必見です。なんといっても、ホームズを演じるのはダウニー・Jr.。そしてホームズは天才的で正義感も強いが性格に難あり、といったら、もう思い浮かべる人物はひとりではないでしょうか? そう、「アイアンマン」。キャラクターの一致もさることながら、それ以外にもマーベルファンに必見な部分が多々あります。
ミステリーものではある本作ですが、目玉のひとつは数々のアクション。多くの敵に囲まれながらワトソンとタッグを組んで切り抜けていくシーンは、さながらアベンジャーズの共闘シーンのよう。特に、続編の「シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム」では、宿敵モリアーティ(ジャレッド・ハリス)が武器商人であり、雪積もる林の中でのスピーディな戦闘シーンは、「アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン」のオープニングも彷ふつとさせます。そんなことを考えながら見てみるのもいかがですか?
シリーズ最新作「シャーロック・ホームズ3」の製作は決定しているものの、現在製作はストップしているようです。3作目よりリッチーから「ロケットマン」のデクスター・フレッチャーに監督が変更になりますが、新たなホームズの活躍を心待ちにしています。
「コードネーム U.N.C.L.E.」(2015年/116分)
1960年代に人気を博したイギリスのテレビシリーズ「0011 ナポレオン・ソロ」を、映画としてリメイクしたスパイアクション。
舞台は、東西冷戦下の60年代前半。核兵器とその技術の拡散によって世界を滅ぼそうとする国際犯罪組織の存在がキャッチされ、その陰謀を阻止するべく、アメリカのCIA工作員ナポレオン・ソロ(ヘンリー・カビル)と、ロシアのKGB工作員イリヤ・クリヤキン(アーミー・ハマー)は手を組むことになる。凄腕だがプレイボーイのソロと、真面目で几帳面だが短気なイリヤ。正反対のふたりは、事件の鍵を握るドイツ人科学者の娘ギャビー(アリシア・ビカンダー)を守りながら、疾走した科学者の行方を追う。
本作は、「ガイ・リッチー力高い!」と叫びたくなるほど、リッチー監督らしさが炸裂しています。本編開始から約6分が経過したあたりで、容赦ないスピードでカーアクションが畳みかけられるので、目を閉じている暇はありません。冒頭で「あ~、ガイ・リッチーの映画見てるな~」と体感し、気付けばアクションに次ぐアクションに身を委ねているのです。
また60年代が舞台ということもあり、少々ローテクでレトロな印象も与えるメカも要チェック。一時的にバディを組んでいるとはいえ、対立関係にあるソロ&イリヤは、子どもじみたメカ対決(それは、アメリカとロシアの国家の威信をかけた開発力バトルをも意味する)や、ギャビーのコーディネートをめぐるファッション対決を繰り広げ、コミカルなシーンもたくさん挿入されています。
斬新な画面分割、全編にちりばめられたスタイリッシュな音楽、時間軸を巧妙に操作する映像表現、軽妙洒脱な会話など、リッチー監督の演出が光ります。特筆すべきは、ソロ&イリヤが潜入した兵器工場で警報が鳴り、脱出を試みるシーン。ふたりはボートで逃げようとしますが、途中でソロが振り落とされてしまいます。地上に上がり、トラックに乗りこんだソロ。ここで「ガラスの部屋」(ペピーノ・ガリアルディ)の哀愁漂うメロディが響き、ソロはトラックのなかで見つけたワインを飲み、サンドイッチを頬張りながら、イリヤの決死の逃走劇をのんびり見守るのです。この緩急のリズムがたまりませんよね。
筆者は公開時、非常に楽しみにしていた作品だったので、「4DXで見よう!」と思い立ち、地元の映画館へ。当時は大学生で時間に比較的余裕があったため、平日の昼間に足を運びました。映画館までの道が混んでいたので、到着したのは上映時間10分前。慌てて場内に駆けこむと、通路ですれ違ったスタッフの方に「見ますか?」と謎の質問をされました。戸惑っていると、通路でそのまま4DXの注意点のレクチャーが始まり……、そう、この回の観客は私ひとりだったんです。
いままで映画館でひとりになることはありましたが、ひとり4DXは初。「ひとりのために、こんな素晴らしい装置を稼働して下さるのか……。しかも『駆け込みで来やがって』って、絶対思われてるよな……」と、嬉しさ半分、申し訳なさ半分で見た思い出があります。ソロ4DXでは、「(揺れて)うわっ」「(水がかかって)冷たっ」、そして声を出してしまったことへの照れ笑いなど、全てが映画館の暗闇に吸いこまれていきますので、ある程度の覚悟は必要ですが、最高に贅沢な体験であることは間違いありません。そんな思い出もこみで、本作はいつまでも特別な存在です。
「アラジン」(2019年/128分)
「アラビアン・ナイト」の物語をベースにしたディズニー・アニメの名作「アラジン(1992)」を実写映画化。全世界で1000億円を超える大ヒットとなり、日本でも同年の実写映画第1位となる、興行収入121億6000万円を記録しました。アニメ版で第65回アカデミー賞作曲賞を受賞した、アラン・メンケン作曲、ティム・ライス作詞の「ホール・ニュー・ワールド」などおなじみの名曲に加え、「ラ・ラ・ランド」「グレイテスト・ショーマン」のベンジ・パセック&ジャスティン・ポールが手がけた新曲も物語を彩っています。中村倫也、木下晴香、山寺宏一、北村一輝ら日本語吹き替え版キャストも話題になりました。
貧しくも真っ直ぐな心を持ち、人生を変えるチャンスをつかもうとしている青年アラジン(メナ・マスード)と、自由に憧れる王女ジャスミン(ナオミ・スコット)。ふたりの運命的な出会いをきっかけに、それぞれの願いが動き始める。やがてアラジンは、邪悪な大臣ジャファー(マーワン・ケンザリ)の甘い誘いに乗り、魔法の洞窟からランプを手に入れ、ランプの魔人ジーニー(ウィル・スミス)と出会う。「3つの願いを叶える」というジーニーとともに、アラジンはジャスミンと再会しようと奮闘する。
クールでスタイリッシュな犯罪群像劇を数多く手がけてきたリッチー監督のディズニー作品への参加は、当初「異例の抜てき」とも報じられていました。しかし、ロマンティックでファンタジックなアニメの良さを生かしながら、リッチー監督らしいスピード感溢れるアクションを織り交ぜ、実写ならではの世界観を創出。コナン・ドイルの推理小説を下敷きにした「シャーロック・ホームズ」シリーズ、テレビドラマをリメイクした「コードネームU.N.C.L.E.」などで培ってきた、ベースとなった作品を新たな視点でアレンジする演出力を、遺憾なく発揮しているのです。
筆者は一人っ子だったため、幼少期は両親からアニメや映画のビデオをたくさん買い与えられていました(ここで映画好きの土壌が形成されたのかもしれません……。孤独ではありませんでした、とあえて言います)。もちろんディズニー作品もたくさんあり、そのなかで1番見ていたのが「アラジン」。だからこそ実写化のニュースを聞いた際は非常に嬉しく、ハードルもぐんぐん上がっていたのです。そして遂に映画館で見たとき、そのハードルを軽々と超えるものを目の当たりにしました。
まず言いたいのは、実写化のオリジナル要素がことごとく良い! ジャスミンの「戦う強い女性」というヒロイン像や、心震えるメッセージを力強く歌い上げる新曲「スピーチレス」、オリジナルキャラクターである侍女ダリア(ナシム・ペドラド)とのシスターフッドの要素も見逃せません。アニメ版では言及されていないのですが、ジャファーが実はアラジンと同じく貧困層の出身で、のし上がってきたという過去も描かれ、より人間味のある印象に。時代に合わせたアップデートや、アニメ版で描かれなかった部分の調整などが、細かく施されているのです。
そして1番の見せ場でもある、アラジンとジャスミンの「ホール・ニュー・ワールド」。イギリスでミュージカルを見たことがあり、そのときと同様、映画でも大号泣してしまいました。空を飛ぶというのは、なぜこんなにも夢があって、胸をいっぱいにするのでしょうか……。幼い頃にビデオが擦り切れるほど繰り返し見ていたこのシーンは、ディズニープリンセスに憧れ、夢を持っていた“あの頃”の記憶を瞬時によみがえらせてくれるのです。
「ジェントルメン」(2020年/公開中)
イギリス・ロンドンの暗黒街を舞台に、大麻ビジネスの利権を巡り、悪党たちがし烈な駆け引きを繰り広げるクライムサスペンス。
一代で大麻王国を築き上げたマリファナ・キングのミッキー(マシュー・マコノヒー)が、総額500億円にも相当するといわれる大麻ビジネスのすべてを売却して引退するという噂が駆け巡った。その噂を耳にした強欲なユダヤ人大富豪、ゴシップ紙の編集長、ゲスな私立探偵、チャイニーズ・マフィア、ロシアン・マフィア、下町のチーマーといったワルたちが一気に動き出す。
「アラジン」でリッチー監督作品を初めて見た方は、ちょっと驚くかもしれません。「シャーロック・ホームズ」シリーズともまた違う、「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」や「スナッチ」の路線に近い、大人の映画の楽しみ方ができる作品です。
まず、冒頭映像(https://eiga.com/news/20210324/18/)がとにかくおしゃれ。大麻の大量栽培・販売で財を成したミッキーが襲撃されるシーンの後、主要キャストが煙のように消えては次々と現れる映像が使われているのですが、音楽も煙の動きもセンスの塊。“ガイ・リッチー節”とはこういうことなんだと教えてくれます。
初期のリッチー監督作品で頻出するトランクショット(車のトランクに詰められた人物の一人称視点ショット)も使用されるなど、リッチー監督の“不変”に嬉しくなりつつ、豪快さや伏線回収の面白さで“変化”も感じさせます。
ミッキー役のマコノヒーが家に持ち帰るほど気に入ったというオーダースーツをはじめ、細部までこだわった衣装にも注目を。
ガイ・リッチー監督映画セレクト、いかがだったでしょうか。「アラジン」をきっかけに、“ガイ・リッチー沼”に足を踏み入れてみては? 本記事がそのガイド役としてお役に立てば幸いです。
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