前田敦子が「山路ふみ子映画賞」女優賞 人生経験を積むことができる映画界は「たまらない世界」
2019年11月29日 20:10
[映画.com ニュース]元女優の故山路ふみ子さんが設立した「山路ふみ子文化財団」が、優秀な作品や映画人を表彰する「第42回山路ふみ子映画賞」の贈呈式が、11月29日に東京・千代田区の一ツ橋ホールで行われた。作品賞に当たる山路ふみ子映画賞を獲得した「蜜蜂と遠雷」の石川慶監督をはじめ、前田敦子(女優賞)、関水渚(新人女優賞)、倍賞千恵子(文化財団特別賞)、衣装デザイナー・ワダエミ氏(映画功労賞)らが出席した。
山路ふみ子映画賞に輝いた「蜜蜂と遠雷」の原作は、第156回直木賞と2017年本屋大賞のダブル受賞という史上初の快挙を成し遂げた、恩田陸氏の小説で、若き4人のピアニストが、国際ピアノコンクールの熾烈な戦いを通して成長していく物語。石川監督は「これまでの受賞歴を見ていると、自分の映画人生がそのまま反映されたような、本当に素晴らしい方々や作品が並んでいて。その末席に自分の映画も加えて頂けるというのは、光栄なことだと思っております。この映画賞の名に恥じぬように、これからも良い映画を撮っていきたいと思います」と力強く宣言した。
続いて、オダギリジョー監督が長編初監督を務め、近代化以前と思しき山村で船頭を続ける男を描いた「ある船頭の話」で映画功労賞を獲得したワダ氏は、「(自身が携わった)大島渚監督の『御法度』が1999年で、それから20年間、オダギリジョー監督以外、日本の監督からは1度もオファーがありませんでした」と笑う。時代を反映させた衣装について、オダギリ監督と何度も話し合いを重ねたといい、「今まで、基本的に『1本の映画の衣装を全て作る』ことを条件にして仕事をしてきました。20歳から映画に関わり、今年で82歳になる私としては、今回のオダギリ組の役者さん、スタッフさんは本当に素晴らしかったです。こういうチームが日本にあったんだと気付きましたし、大島監督の『御法度』をやった時と同じ感動を得ました」と絶賛した。
続いて、黒沢清監督作「旅のおわり世界のはじまり」と、石井裕也監督作「町田くんの世界」で女優賞を受賞した前田が登壇。異国の文化に戸惑いながらも自分の道を模索していくテレビ番組リポーターを演じた「旅のおわり世界のはじまり」に関して、「主人公がウズベキスタンから日本に帰って一歩踏み出す映画。私自身もこの映画を通していろいろな人生経験をしました。主人公と自分がすごくリンクして、不思議なくらい自分の人生にマッチするタイミングで出会わせて頂いた、一生ものになる作品だと思っています」と言葉に熱をこめる。一方、「町田くんの世界」では同級生の不器用な恋模様を毒舌で解説する女子高生という、全く異なる役どころ。同作で新人女優賞に輝いた、5歳以上年下の関水と同級生役だったことを自虐気味に明かした前田は、「関水ちゃんのフレッシュさにすごく支えられました」と感謝を伝える。そして、「人生経験をたくさんさせて頂ける映画の世界はたまらないなと思います。まだまだこれからもいろんな役に飛び込んでいけるよう頑張っていきます」と、さらなる飛躍を誓った。
最後に、「男はつらいよ」のさくら役など常に日本映画界の第一線で活躍してきた功績を称えられ、文化財団特別賞をおくられた倍賞が挨拶。「今まで174本の映画に出演しまして……」と語り始めると、会場からは大きな拍手が沸き起こる。長いキャリアの中で思い出深い作品を問われ、井上和男監督の「水溜り」、山田洋次監督の「霧の旗(1965)」「家族」を挙げ、「『水溜り』は、下町の町工場に育った女の子が巣立っていく話。私の芸能界に入ったきっかけとなった役です。一時期、“庶民派スター”と言われるようになったきっかけかな」としみじみ。そして、「これからも体と心の続く限り、望まれるならずっと映画を撮り続けていきたいなと思っている今日この頃です」と笑顔を浮かべ、締めくくった。
この日は、長年にわたり数多くの映画のタイトル題字を手掛けてきた赤松陽構造氏(文化賞)、欠席した「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」(福祉賞)の前田哲監督に代わりプロデューサーの石塚慶生氏が参加した。
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