ブラピ、怒りと悲しみを内包した演技は出色 「アド・アストラ」ベネチアで高評価得る
2019年9月2日 12:00

[映画.com ニュース] 第76回ベネチア国際映画祭は、前半に強力なアメリカ勢が集中している。開催2日目に立て続けに上映されたのが、ノア・バームバックの「マリッジ・ストーリー」と、ジェームズ・グレイの「アド・アストラ」だ。
Netflix製作の「マリッジ・ストーリー」は、バームバックお得意のコメディ。「結婚物語」というよりは、離婚にもめる若い夫婦(アダム・ドライバーとスカーレット・ヨハンソン)の軌跡をたどる。情熱的に愛し合っていたカップルが、互いの欠点が見え始めてギクシャクし、やがて取り返しのつかない事態を迎える過程が痛い。ウディ・アレン的な風刺とユーモアに、せつなさを足した快作で、バームバック監督とともにヨハンソンとドライバーがベネチアを訪れ、ファンを喜ばせた。
一方、グレイ初のSFとして注目を集めていた「アド・アストラ」は、グレイとともに主演のブラッド・ピット、リブ・タイラー、ルース・ネッガがレッドカーペットに登壇した。ピットはベネチアでも相変わらずの人気ぶりで、終始大物の余裕を見せ、サインを求めるファンに答えていた。
近未来を舞台にした本作は、20年前に海王星へ向かう途中で行方を絶った科学者の父を、ベテラン宇宙飛行士の息子が調査する任務を受ける。スペースアドベンチャーでありながら、宇宙を舞台にした父と子の物語だ。

プロデューサーも兼ねたピットは会見で「僕とジェームズは90年代半ばからの付き合いで、いつか一緒に映画をやろうと言い続けていた。彼が『ロスト・シティZ失われた黄金都市』を作ったあとにこの脚本をもらって、彼が映画的なヒーローを極めてパーソナルな視点から描いていることに感銘を受けた。人間として、父親として、さらに息子としても、心を動かされたんだ」と語った。
グレイ監督は、「歴史や神話は常に個人的なミクロコスモスから始まる。だから本作も、できる限り小さな個人的なストーリーを、可能な限り大きなタペストリーのなかで描きたかった」と語った。家族を置いて、宇宙の探求に献身した父親に対する怒りと悲しみを内包したピットの演技は出色で、俳優キャリアのなかで初めてアカデミー賞主演男優賞を受賞するのも夢ではないとの評価もあった。
映像のクオリティも評価が高く、とくに映画のなかのもっとも衝撃的なシーンの演出は印象的だ。いわば「2001年宇宙の旅」と「地獄の黙示録」と「ゼロ・グラビティ」を足して割った作品と言えるかもしれない(佐藤久理子)
(C)2019 Twentieth Century Fox Film Corporation
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