是枝裕和監督、カンヌ最高賞受賞「社会のなかで見過ごされがちな人々を可視化」
2018年5月20日 09:19

[映画.com ニュース]第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に選出された「万引き家族」がパルムドールを受賞した是枝裕和監督が、5月19日(現地時間)の受賞式後、日本の報道陣の前でその喜びを語った。
パルムドールのトロフィーを持って現れた是枝監督は、「授賞式後ずっと持ち続けているので、じつは腕がもうがちがちなんです」と、少しリラックスした様子で笑顔をのぞかせた。そして「ふだんは緊張しないタイプなのですが、さすがに(壇上では)緊張しました。挨拶は喋りながら考えました。一番大きな賞を頂き、あと20年ぐらいは作り続けられる勇気をもらったと思います」とコメント。また今回家族をテーマにした作品で評価されたことについて、「『誰も知らない』のときにふだん社会のなかで見過ごされがちな人々を可視化させようと考えて作りましたが、今回もそれをストレートに出したつもりです。プレミア上映のときのリアクションも良く、海外の記者の取材を受けたときも『タッチング』や『ラブ』という言葉を良く聞いたので、届きたいところに届いたのかなと感じました」と語った。
審査委員長のケイト・ブランシェットも、「ふだんあまり目につかない人々をとりあげた作品が今年は目立った」と語り、そのなかでも是枝作品を「監督のビジョンが感じられる素晴らしい作品」と評価。また審査員のひとりであるドゥニ・ビルヌーブ監督も、「とても深く心を動かされた。深みがあり、演出も秀でていて、輝くものがある」と語った。
グランプリは、こちらも下馬評の高かったスパイク・リーの「Blackkklansman」が受賞。白人至上主義の秘密結社クー・クラックス・クランに潜入する覆面刑事の姿を描いたパワフルな作品で、リー復活を印象付けた。
男優賞は、イタリアで実際に起きた殺人事件を元にしたマッテオ・ガローネの「Dogman」に主演したマルチェロ・フォンテに、女優賞はロシアのセルゲイ・ドボルツェボイ監督作「Ayka」で、貧しさのなかで搾取されるヒロインに扮したサマル・イェスリャモワが受賞。監督賞には、アカデミー賞外国語映画賞を受賞した「イーダ」に続き、再びモノクロで戦争を背景にしたラブストーリーを描いた「Cold War」のパベウ・パブリコフスキが輝いた。
脚本賞はジャファル・パナヒの「3 Faces」とイタリアのアリーチェ・ロルバケルの「Happy as Lazzaro」が分け合い、審査員賞はレバノンのナディーン・ラバキー監督がストリートで自活する子供達を描いた「Capharnaum」に。また審査員メンバーのたっての希望で、「The Picture Book」のジャン=リュック・ゴダールにスペシャル・パルムドールが授与された。
開幕の記者会見で審査員長のケイト・ブランシェットは、政治的なテーマであるか否かは関係なく、あくまで映画の質で評価することを明確にしていたが、結果的に是枝監督作をはじめとして、リー、ゴダール、ラバキー、ドボルツェボイ作品など、どちらかといえば政治的、社会的なテーマを含んだ作品が注目された形となった。(佐藤久理子)
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