存在のない子供たち
劇場公開日 2019年7月20日
解説
長編デビュー作「キャラメル」が高い評価を得たレバノンの女性監督ナディーン・ラバキーが、貧しさゆえに親からまともな愛情も受けることができずに生きる12歳の少年の目線を通し、中東の貧困・移民問題を抉り出した人間ドラマ。中東の貧民窟で暮らす12歳のゼインは、貧しい両親が出生届を提出していないため、IDを持っていない。ある日、ゼインが仲良くしていた妹が、知り合いの年上の男性と強制的に結婚させられてしまい、それに反発したゼインは家を飛び出す。仕事を探そうとしたがIDを持っていないため職に就くことができない彼は、沿岸部のある町でエチオピア移民の女性と知り合い、彼女の赤ん坊を世話しながら一緒に暮らすことになる。しかしその後、再び家に戻ったゼインは、強制結婚させられた妹が亡くなったことを知り……。2018年・第71回カンヌ国際映画祭で審査員賞とエキュメニカル審査員賞を受賞。
2018年製作/125分/PG12/レバノン
原題:Capharnaum
配給:キノフィルムズ
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2019年8月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
主人公の少年の瞳が観客を射抜く。この映画を観ているあなたは、世界の残酷さについて何を知っているのかと終始問いかけてくる。貧困の中で生まれた少年は、絶望的な環境に自分を産んだ罪で両親を告訴する。子は親を選べない、誰も産んでほしいと頼むことはできない。生を受けることは素晴らしいことだと余人は言うかも知れないが、この過酷さを前に同じことを言えるのか。
主人公を演じる少年は、シリア難民だそうだ。10歳のころから家族のために働いていたところを監督にスカウトされ出演することになったそうだが、この少年の全身から発する、本物の過酷さを知るオーラがこの映画を支えている。少年は絶望的な状況でも生きることを諦めない。その瞳にはなんとしても生き抜くんだという強い決意が宿っている。
近年、レバノンから傑作映画がいくつか生まれているが、これはその中の最高峰の一本だ。
2019年7月30日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会
まるで地獄を見続けて、並みの怒りや悲しみをはるかに超越したかのような、主演の少年ゼイン・アル・ラフィーアの冷めたまなざしに目を奪われ、圧倒される。ナディーン・ラバキー監督が原告側弁護士役を演じた以外は、主要なキャラクターのほぼ全員に、役と同じような境遇の素人を探してきて演じさせたという。いや、カメラの前で存在させたと言うべきか。劇映画でありながら、彼らの訴えや涙は本物なのだ。
レバノン映画と言えば、「判決、ふたつの希望」もまた、裁判が進むにつれ社会の深刻な事情が明らかになっていく構成だった。レバノンの映画人は、国の特殊な事情の中にある人類普遍の問題を、法廷映画のスタイルで世に訴える術を獲得したようだ。そういえばラバキー監督が主演も兼ねた「キャラメル」で恋人役を務めたアデル・カラムは、「判決…」の主演の1人だったし、国の映画界のつながりの中で互いに影響を与え合っているのかもしれない。
2022年5月1日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD
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ベイルートの貧民街に住むゼインは12歳 11歳の妹を結婚させ死んだ。その両親を刑務所から訴えた。もう子供を産むなと。貧困は、児童婚と児童売買 ゼインのしっかりした話ぶりが素晴らしい。ようやくIDを作ってもらう時の笑顔がいい。
2022年4月3日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
辛すぎて一気に観ることが出来ず、数日に分けて観た。
主人公はスラム街に住む家のシリア難民の少年。クシャッとした髪が可愛い男の子だけど、その幼さとは裏腹に大人以上に一生懸命自分の人生を生きようとしている。
俳優達は実際に役どころと近い境遇の素人を使ったそうで、この主人公の少年も実際にシリア難民だったそう。主人公役の少年は今はノルウェーに家族と移住し、学校にも通い、また、新しい作品にも出演しているそう。180度違う生活になった事だろう。
育てられもしないのに無責任に子供を沢山作る大人達。
本当に、何故そんなに子供を作るんだろう…。
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