存在のない子供たち

劇場公開日:

存在のない子供たち

解説

長編デビュー作「キャラメル」が高い評価を得たレバノンの女性監督ナディーン・ラバキーが、貧しさゆえに親からまともな愛情も受けることができずに生きる12歳の少年の目線を通し、中東の貧困・移民問題を抉り出した人間ドラマ。中東の貧民窟で暮らす12歳のゼインは、貧しい両親が出生届を提出していないため、IDを持っていない。ある日、ゼインが仲良くしていた妹が、知り合いの年上の男性と強制的に結婚させられてしまい、それに反発したゼインは家を飛び出す。仕事を探そうとしたがIDを持っていないため職に就くことができない彼は、沿岸部のある町でエチオピア移民の女性と知り合い、彼女の赤ん坊を世話しながら一緒に暮らすことになる。しかしその後、再び家に戻ったゼインは、強制結婚させられた妹が亡くなったことを知り……。2018年・第71回カンヌ国際映画祭で審査員賞とエキュメニカル審査員賞を受賞。

2018年製作/125分/PG12/レバノン
原題:Capharnaum
配給:キノフィルムズ
劇場公開日:2019年7月20日

スタッフ・キャスト

全てのスタッフ・キャストを見る

受賞歴

第91回 アカデミー賞(2019年)

ノミネート

外国語映画賞  

第76回 ゴールデングローブ賞(2019年)

ノミネート

最優秀外国語映画賞  

第71回 カンヌ国際映画祭(2018年)

受賞

コンペティション部門
審査員賞 ナディーン・ラバキー

出品

コンペティション部門
出品作品 ナディーン・ラバキー
詳細情報を表示

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む

映画評論

フォトギャラリー

  • 画像1
  • 画像2
  • 画像3
  • 画像4
  • 画像5
  • 画像6
  • 画像7
  • 画像8
  • 画像9
  • 画像10

(C)2018MoozFilms

映画レビュー

5.0少年の強い瞳

2019年8月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

主人公の少年の瞳が観客を射抜く。この映画を観ているあなたは、世界の残酷さについて何を知っているのかと終始問いかけてくる。貧困の中で生まれた少年は、絶望的な環境に自分を産んだ罪で両親を告訴する。子は親を選べない、誰も産んでほしいと頼むことはできない。生を受けることは素晴らしいことだと余人は言うかも知れないが、この過酷さを前に同じことを言えるのか。
主人公を演じる少年は、シリア難民だそうだ。10歳のころから家族のために働いていたところを監督にスカウトされ出演することになったそうだが、この少年の全身から発する、本物の過酷さを知るオーラがこの映画を支えている。少年は絶望的な状況でも生きることを諦めない。その瞳にはなんとしても生き抜くんだという強い決意が宿っている。
近年、レバノンから傑作映画がいくつか生まれているが、これはその中の最高峰の一本だ。

コメントする (0件)
共感した! 18件)
杉本穂高

4.0ゼインの瞳が貧困層の深い絶望を映す

2019年7月30日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

泣ける

悲しい

まるで地獄を見続けて、並みの怒りや悲しみをはるかに超越したかのような、主演の少年ゼイン・アル・ラフィーアの冷めたまなざしに目を奪われ、圧倒される。ナディーン・ラバキー監督が原告側弁護士役を演じた以外は、主要なキャラクターのほぼ全員に、役と同じような境遇の素人を探してきて演じさせたという。いや、カメラの前で存在させたと言うべきか。劇映画でありながら、彼らの訴えや涙は本物なのだ。

レバノン映画と言えば、「判決、ふたつの希望」もまた、裁判が進むにつれ社会の深刻な事情が明らかになっていく構成だった。レバノンの映画人は、国の特殊な事情の中にある人類普遍の問題を、法廷映画のスタイルで世に訴える術を獲得したようだ。そういえばラバキー監督が主演も兼ねた「キャラメル」で恋人役を務めたアデル・カラムは、「判決…」の主演の1人だったし、国の映画界のつながりの中で互いに影響を与え合っているのかもしれない。

コメントする (0件)
共感した! 21件)
高森 郁哉

4.5俺たちは虫けらなんだ!! 少年ゼインがひたむきに生きた証を描いた作品

2023年9月30日
Androidアプリから投稿

レバノンのスラム街で出生届も出されずに
育った子供たちがいたけれど、
自分の妹や、幼き子供たちを愛して生きてきた
人生の路、強い存在が感じられたストーリー
でした。
学校に通うことも出来ない、小さな体で
過酷な労働を強いられながら、ひたむきに生きる少年ゼインの姿がありました。

ゼインの妹であるサハルがアサードに売られて
しまったときのショック、傷付いた気持ちは
計り知れないものだったと思います。

不法就労、人身売買、証明書の偽造、薬物
人間が生きていくために
精神的に追い詰められていく状況を見て
心の痛む苦しさを思いました。

ゼインが証明書を取りに自分のアパートに
帰ったとき!

真実を知って自分を生んだ両親を恨む気持ちが少年のゼインの表情から窺うことができました。

裁判で争うことになった場面は

ゼインの父親のセリームの台詞が罪を犯さなければ生きていくことが出来なかった状況と
感情を強く感じ取りました。

ゼインが自分の母親に対して言った
『人の心が無いのか?』
という言葉が心に突き刺さりました。
社会の闇を見る人に訴えかけるストーリーでした。

コメントする 3件)
共感した! 20件)
美紅

5.0傑作

2023年9月26日
iPhoneアプリから投稿

ゼインの生活を知ってしまった以上、誰もがもうこの映画を観る前の自分に戻ることはできないだろう。

「愛」なんて入る余地がない過酷な状況の中、彼は小さき者を愛し守った。ゼインの愛と機知と勇気こそが、我々人類の光(神)だ。

カラマーゾフの兄弟のイワンの、矛盾を突いた名言を思い出す。“幼い受難者のいわれなき血を必要としている神など、絶対に容認するわけにはいかない”
“永遠の調和のためにこの幼児たちの苦しみが必要だというのなら、自分はそんなに高価な犠牲を払ってまでして入場しなければならない社会の入場券など突っ返したい”

虐待するだけで心のない両親へのきっぱりとした訴えは、そのまま、矛盾が爆発しながら放置する人類全体への訴えとして私は聞いていた。

コメントする (0件)
共感した! 1件)
Raspberry
関連DVD・ブルーレイ情報をもっと見る

他のユーザーは「存在のない子供たち」以外にこんな作品をCheck-inしています。