あさがくるまえに : 特集
映画.comが“いま一番見てもらいたい”フランス映画の1本──
“あたらしいあさ”が照らし出す「生と死」「愛と喪失」「再生」の物語
気鋭の女性監督カテル・キレベレによる、ビル・ゲイツも賞賛した世界的ベストセラーを映画化した「あさがくるまえに」が、9月16日に全国公開される。ベネチア国際映画祭、トロント国際映画祭で注目を集め、人気アーティストの秦基博も映画が描く世界に共感し、自身の楽曲をイメージソングとして提供した、話題のヒューマン・ドラマだ。
秦基博、米業界誌、そしてビル・ゲイツまでを魅了した1作──
この「命をめぐる、たった1日の物語」を映画ファンにこそ届けたい
見終わった後に、なにか大きな、大切なものを受け取ったと感じられる映画。決して押しつけがましいわけではないが、描かれているテーマや出来事に、自分の人生を照らされずにはいられない映画。美しい映像と、丹念に描写される登場人物たちの姿に、心が捕われてしまう映画。「この映画、見てよかった」と思える“良作”を求める映画ファンに、映画.comがぜひ見てほしいと伝えたい映画が、本作「あさがくるまえに」だ。
フランス映画と聞くと、どうしても「難解そう」という印象を持ってしまうかもしれない。だが、本国フランス、アメリカ、そして日本で、多くの人々が本作への温かな関心と強い支持を表明している。ミニシアター系作品、インディペンデント系作品を見慣れている映画好きであれば誰でも、この命をめぐるたった1日の物語、深遠なヒューマン・ドラマが深く心に響くはずだ。
日本では人気ミュージシャンの秦基博が本作に賛同。カテル・キレベレ監督が日本の配給会社を通じて、映画と同じタイトルを持つ秦の楽曲「朝が来る前に」を聞き、「ぜひコラボレーションを」と提案。オフィシャル・イメージソングとなった。また、キレベレ監督も編集に関わった同曲のミュージックビデオが公開されると、それを見た人々からSNSなどを通して多くの絶賛評が寄せられた。その他にも、作家や女優など数々の著名人が絶賛評、コメントを寄せている。
米業界誌「バラエティ」は、6月に「17年上半期のベストフィルム13本」を発表。エドガー・ライト監督の「ベイビー・ドライバー」や、M・ナイト・シャマラン監督の「スプリット」などと並び、本作が見事選出されているのだ。選出した記者によれば、「アカデミー賞を狙ったスタジオ系の新作公開は1年の後半に集中するため、上半期は人々を満足させるクオリティの高い作品が乏しいと見られがちだが、現在までの最大かつ歓迎すべき驚きに満ちた作品群」とされている。
マイクロソフト社の共同創業者であり、世界に多大な影響を与える大実業家のビル・ゲイツ。読書家として知られ、数多くの書評も発表しているゲイツが、「この夏の必読書5冊」の中で唯一選んだ小説が、メイリス・ド・ケランガルによる本作の原作「The Heart」だ。本国フランスで14年に発表されるや、またたく間にベストセラーに。多くの読者を魅了したばかりでなく、10を超える文学賞に輝いた傑作だ。
あなたの大切な人の「死」が、別の人の「生」につながる──
さまざまな立場や境遇を越え、本作が映し出す「命の尊さ」
愛する人を突然失ってしまった者の戸惑いと悲しみ。だが、その「死」が別の誰かの「生」へとつながっていくさまを、美しい映像と緻密な人間描写で映し出していくのが本作。ある者にとっては「絶望」であることが、別の者にとっては「希望」となる。それは、見る角度が違えば物事の意味がまったく変わってしまうという、人生の真理そのものだ。朝日がのぼる前から、また次の朝を迎えようとするその時まで、たった24時間の出来事にも関わらず、そこにはひとりの青年、その親、恋人、そして心臓の移植コーディネーター、医療チーム、さらには移植を受ける女性とその恋人、家族の視点がつぶさに交わる。やがて迎える「新しい朝」が照らす「命の不思議さ」に、心を引き込まれずにはいられない。
青年シモンは夜明け前にそっと恋人と眠ったベッドを抜け出し、友人たちとサーフィンに出かけるが、その帰路に自動車事故に巻き込まれてしまう。脳死と判定され、臓器移植コーディネーターを紹介されるシモンの両親は、現実を受け入れられず大いに戸惑う。一方で、パリで暮らす女性音楽家のクレアは、重い心臓疾患で余命幾ばくもなかった。ドナーが見つかった知らせを受け取った彼女だが、若くない自分が他人から贈られた命によって延命してもいいのか?と自問して……。
登場するすべての人たちの心を見つめながらも、一歩引いた視点で、過度にエモーションをあおることなく人々のドラマを紡いだのは、今作が日本デビューとなるカテル・キレベレ監督。「たかが世界の終わり」のグザビエ・ドランや、「未来よ こんにちは」のミア・ハンセン=ラブなど、映画界を席巻する新世代監督たちに続く、新たな才能の登場だ。本作はベネチア国際映画祭オリゾンティ部門に選出されたほか、英米各国のメディアで絶賛の評を浴びている。
新時代の才能のもとに集結した、実力派俳優たちにも触れておかねばならないだろう。「ダゲレオタイプの女」(黒沢清監督)、「預言者」(ジャック・オーディアール監督)のタハール・ラヒムが移植コーディネーター役、「毛皮のヴィーナス」(ロマン・ポランスキー監督)のエマニュエル・セニエが、事故に遭う青年の母として苦悩を体現する。そして、グザビエ・ドラン作品の常連女優「Mommy マミー」のアンヌ・ドルバルが、「生」を受け継ぐ女性音楽家に扮している。青年を演じたギャバン・ベルデ、恋人役のガラテア・ベリュジは無名だが、あふれる透明感に注目したい。
映画ライター・よしひろまさみちも推す「今秋の良質作」──
「普段、ヨーロッパ映画に触れていない映画ファンに見てほしい」
映画ライターのよしひろまさみち氏が、本作を鑑賞。ミニシアター系作品、インディペンデント系作品に関心が高いにも関わらず、普段見るのはアメリカ、イギリス作品が中心という映画ファンに向けて、本作の注目ポイントを述べてもらった。