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警視庁特車二課第二小隊の活躍を描くロボットアニメ『機動警察パトレイバー』シリーズの、14年ぶりの新作となる短編映画。
日暮里の谷中商店街に出没した暴走レイバーを捕らえるため、女隊長の率いる新生特車二課が現場に急行する…。
イングラム一号機のパイロットや暴走レイバー事件の犯人など、全男性キャラクターの声を演じているのは、テレビアニメ版『機動警察パトレイバー』でも端役として出演していた山寺宏一。
企画/エグゼクティブプロデューサーを務めるのは『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズや『シン・ゴジラ』で知られる映画監督、巨匠・庵野秀明。
庵野秀明率いるアニメ制作会社「カラー」と、ニコニコ動画で知られるIT企業「ドワンゴ」の共同企画による短編アニメ映画制作プロジェクト『日本アニメ(ーター)見本市』(2014〜2016)の内の一編。
劇場版第3作『WXIII 機動警察パトレイバー』(2002)から14年。どこに需要があるのかわからない実写版シリーズを経て、ついに誕生したファン待望の完全新作アニメであるのだが…。
8分で、3,000円!……いやぼったくりやろこれ。
本作はレンタルショップでの取り扱いがなく、配信も一切されていない。そのため、今現在リーガルな方法で鑑賞するにはソフトを購入するしか無いわけだが、本作の上映時間はわずか8分。バンダイさん、コレで¥3,000って流石にファンを舐めすぎてやしないかおい?
「バンダイチャンネル」って独自の配信サービスがあるんだから、そこで配信するなりなんなりいくらでもやりようがあるだろうに。守銭奴と言われてもしょうがないよコレは🌀
『パトレイバー』の原作者であるクリエイターユニット「ヘッドギア」(ゆうきまさみ、出渕裕、伊藤和典、高田明美、押井守)からゆうき(キャラクター原案)・出渕(メカニカルデザイン/監修)・伊藤(脚本)の3人が参加。また音楽は初期OVAシリーズから実写版まで、全ての映像化作品に携わっている川井憲次が手掛けている。
そして、監督/脚本を務める吉浦康裕は業界に入る前から『パトレイバー』のレイアウト集を参考にしてアニメの自主制作に励んでいたという筋金入りのシリーズファン。
シリーズのオリジネイターと、彼らに影響を受けた新世代ががっちりと手を組み作り上げた、情熱の籠った作品である事は間違いない。
脚本のほとんどは吉浦康裕監督自身が手掛けているが、挑発された主人公が犯人と揉めてゴタゴタしたままエンディング、という展開は伊藤和典さんのアイデアだという。本来は主人公の「法令遵守!」というセリフとキメ顔で締める予定だったらしいが、こうした方が『パトレイバー』っぽくなるという事で伊藤さんが付け足したらしい。さすが原作者というか、確かにこういうどこか抜けたお茶目さがあるだけで『パトレイバー』らしさがグッと跳ね上がる。
また、犯人に銃を向けるという緊迫したシーンにあえて小鳥がちゅんちゅんと飛んでいくお間抜けな画を挟むように提案をしたのは出渕さん。こういう抜け感こそが『パトレイバー』のキモ!当たり前だけど、やっぱ原作者って偉大なんですねぇ。
ちなみに、作中全てのキャラクターを2人で演じた山寺宏一と林原めぐみは、旧シリーズにもチラッと参加している。当時はまだ新人で小さな役しか演じさせてもらえなかった2人が、この新作でメインを張っているというのはなんとも感慨深いものがある。
…とはいえ、正直あんまり声合ってなかったんだけどね。若手隊員にしては貫禄ありすぎ。
実はこの『アニメ(ーター)見本市』、30本以上ある作品すべてを山寺・林原の2人だけで声を当てているらしい。そういう縛りがあったから、本作でもこの2人が声優を務めていたわけです。企画内の1作品なんだからルールから外れるわけにはいかないというのもわかるけど、どうせならちゃんと役に合った声優を選んで欲しかった。
レイバーの作画はCG、それ以外の人物画などはアナログと、新旧の技法を混ぜ合わせて描かれている今作。CGのクオリティはかなり高く、違和感はほとんどない。2Dと3Dが程よく調和している。
背景美術やカラーリングもとても美しく、まるで新海誠作品を観ているよう。ただ、あまりにも綺麗になりすぎていて、旧作のような泥臭さや生々しさは全く感じられない。なんというか、尺の短さも相俟って警視庁のプロパガンダCMを観ているような気持ちになってしまい、イマイチ気持ちが乗っていかなかった。
新たな『パトレイバー』のアニメが観られたのは素直に嬉しいが、その反面この程度の作品ならわざわざ作る必要なかったよね、という気持ちがあるのもまた事実。わざわざDVDを買ってまで観るものでは無い。…んだけどDVDを買わなければ観られないんだよね。ほんとアコギな商売だよっ!😡
本作が公開された後、『パトレイバー EZY』という新作アニメの企画が立ち上がったとの報せがあったのだが未だに完成/公開はしていない。一応まだ進行中のようなのだが、果たして完成まで漕ぎ着けることは出来るのだろうか…?