ジャージー・ボーイズ : 特集
誰もが知る名曲をテーマに、見る者すべての胸を打つ感動作
名匠クリント・イーストウッドが、“新たなる傑作”をまた生み出した。
名匠クリント・イーストウッド監督が、伝説のポップス・グループ「ザ・フォー・シーズンズ」を題材に、名曲「君の瞳に恋してる」誕生の裏に隠された4人の若者たちの栄光と挫折、そして再起の真実を描く感動のヒューマン・ドラマ。イーストウッドの新たなる傑作「ジャージー・ボーイズ」(9月27日公開)の見どころとは?
■「歌うことは生きること」4人の若者の栄光と挫折、再生の実話から浮かび上がる
イーストウッドが追い続ける永遠のテーマ──「人が生きる」ということ
1960年代、ザ・ビートルズよりも前に世界を席巻した4人組のポップス・グループ「ザ・フォー・シーズンズ」。これまでに売り上げたレコードは1億7500万枚、代表曲「シェリー」「君の瞳に恋してる」は今なお世界中で愛され続けている名曲中の名曲だ。本作「ジャージー・ボーイズ」は、1990年に「ロックの殿堂」入りも果たしたこの伝説の4人組の栄光と挫折、そして再生を描く感動的な物語だ。
犯罪が日常茶飯事のニュージャージーの貧しい街。イタリア移民が集まるその街から抜け出すには、軍隊に入るかギャングになるかしかない(つまりどちらも“死”が待っている)と言われたなかで、フランキー・バリ、トミー・デビート、ボブ・ゴーディオ、ニック・マッシの4人の若者たちは、美しいファルセット・ボイスと完ぺきなハーモニー、そして曲作りの能力という神が与えた特別な才能を武器に、スターへの階段を一気に駆け上がる。だが、栄光の影には闇がある。小さかったほころびはやがて大きな亀裂へと発展し、4人には容赦のない裏切りとグループの解散という挫折が訪れる。さらに、フランキーは最愛の家族までも失ってしまう。絶望の淵に立つ彼にボブから贈られたのは、新曲「君の瞳に恋してる」。再起をかけ、フランキーは再びステージに立つ……。
「ミリオンダラー・ベイビー」「グラン・トリノ」ほか、数々の傑作でクリント・イーストウッド監督が描いてきたのは、「人はどう生きるか」という誰にも当てはまる普遍的なテーマ。楽しいことがあれば辛いこともある、プラスとマイナスを合わせてこそが人生なのだという真理が、「歌うことこそが生きること」という4人の若者の姿を通して胸を締めつけるほど鮮烈に描かれるのだ。エンドロールでは、彼らの半生が再び思い起こされ、熱い思いが胸にこみ上げてくるのは間違いないだろう。
■我々はあと何本、この男の作品を見ることができるのだろうか──
新たに誕生した“傑作”を観賞することは、もはや映画ファンとしての義務
クリント・イーストウッド──名優でありながら、2度のアカデミー賞監督賞に輝く名監督として、映画ファンなら誰もがその手腕を認める男の、「J・エドガー」以来3年ぶりとなる新作だ。
オスカー受賞作「許されざる者」「ミリオンダラー・ベイビー」はもとより、「父親たちの星条旗」「硫黄島からの手紙」の“硫黄島二部作”、「グラン・トリノ」「インビクタス 負けざる者たち」等々、実話からフィクション、ジャンルを問わずに人間の生きざまを描き続けてきた名匠の作品は、見る者の心に強いメッセージを常に与え続けてきた。そして御年84歳になるこの巨匠、そのキャリアは仕上げの時期にさしかかっていると言っても過言ではない。私たちに、また“新たなる傑作”を残してくれたのだ。
ためらいなく新しいことをやってのけるイーストウッドの軽やかさには驚かされる。今作では、観客動員数2000万人を超えるトニー賞受賞の傑作ブロードウェイ・ミュージカルを原作に、“映画”としての正攻法の語り口を音楽と歌によって彩るという手法を採用。さらなる高みへと到達した。イーストウッド監督の新作、すなわち新たな傑作を鑑賞することは、もはや映画ファンにとっては義務以外の何ものでもない。
■記憶に残る名曲と登場人物たちが織り成す感動のストーリー──
本作は《音楽×映画》の傑作! そして“ファッション”“舞台”愛好家の心までつかむ
「人の心を打つ」のに、映画に勝るとも劣らない力を持つのが“音楽”。それだけに、映画と音楽が高度なレベルで融合した作品は、圧倒的な傑作として映画史に名を残す。
そのなかでも、実際のミュージシャンの成功を描く伝記的な作品は、主人公の知名度とそれを彩る名曲がすでに用意されているだけに強い。モータウンの伝説的女性グループ「スプリームス」をモデルにした「ドリームガールズ」やカリスマ的ラッパー、エミネムの「8 Mile」、盲目の天才レイ・チャールズの生涯を描く「Ray レイ」もその例に漏れず、音楽ファンの話題をさらった。「アクロス・ザ・ユニバース」は伝記的作品ではないが、全編ビートルズ・ナンバーで構成されており、“名曲の力”が発揮された。
だが、映画として成功するには、やはりそこで描かれる物語も重要だ。ミュージシャンの伝記が力強いのは、それが若者の成長と成功を描く、カタルシスにあふれるサクセスストーリーだから。「8 Mile」は、デトロイトの工場で働く青年が、ラップを通して貧しい生活から抜け出していく話であり、「BECK」もまた、平凡な普通の高校生が、音楽を通して才能を開花させていく姿を描いている。
描かれるミュージシャンは全世界で1億7500万枚ものレコードを売り上げ、今なお人気を誇るザ・フォー・シーズンズ。名前を知らなくても、フランク・シナトラをはじめ、ボーイズ・タウン・ギャング、ペット・ショップ・ボーイズ、ローリン・ヒル、ミューズといった各世代の世界的アーティストたちだけでなく、日本でも椎名林檎、ZARD、MISIA、東京スカパラダイスオーケストラなど、数々のミュージシャンによってカバーされている代表曲「君の瞳に恋してる」を知らない人はいないだろう。イタリア移民の街から才能だけを武器に成り上がり、そして挫折を迎えるという彼らのストーリーは、絶望を経て、やがて再起を果たすという2段構え。映画以上に映画らしい現実が名曲とともに映し出す、人の生きざまが観客の心をつかむのは間違いない。
■《イーストウッド・ファン限定試写会》開催!
参加者の熱いコメントが、“最上級のクオリティ”を保証する
9月10日(水)、都内にて「ジャージー・ボーイズ」映画.com独占試写会が開催された。銘打たれたタイトルは「イーストウッド・ファン限定」。果たして「ジャージー・ボーイズ」は、そんなファンたちの目にどう映ったのか?