コラム:緊急事態コラム「新型コロナと映画業界のニュー・ノーマル」 - 第4回
2020年6月4日更新
全国で映画館が営業再開! 6月の公開・上映スケジュールは? 映画ファンの声も紹介
日本政府は5月25日、全国の緊急事態宣言の解除を発表しました。さらに都は同29日、休業要請の緩和措置を、映画館等が対象のステップ2へ移行することを決定。これを受け、都内の映画館が続々と営業を再開し始めました。
新型コロナウイルス感染拡大の防止を理由に、営業休止を余儀なくされていた全国の映画館に、再び火が灯ります。今回の記事では、6月の上映・新作公開スケジュールや、再開を待ち望んでいた映画ファンの喜びの声などを紹介していきます。なお言及する内容は、海外は含めず、国内での事例のみとしています。
■2~5月の状況を振り返ってみる
本題に入る前に、2~5月の映画館の営業状況について、簡単に振り返っていきます。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、日本の映画界が“自粛”に舵を切ったのは、2月下旬のことでした。
・2月26日 「第14回新型コロナウイルス感染症対策本部」での安倍晋三内閣総理大臣による「今後2週間は(大勢が集まる全国的なスポーツ、文化イベント等は)中止、延期又は規模縮小等の対応を要請する」に従い、 一定期間、休館する映画館が相次ぐ。
・2月末~3月 日本アカデミー賞授賞式が無観客となったほか、尾道映画祭2020など大型のイベントが続々と中止に。公開待機作の一般試写会も中止となり、「映画ドラえもん のび太の新恐竜」など新作の公開延期が次々と発表されるように。感染拡大を警戒しつつ、営業を続ける劇場もあった。
・3月25日 週末の外出自粛要請が東京都から発表され、28、29日は東京・神奈川・埼玉を中心とした各映画館が 週末の営業を休止する。
・4月7日 7都府県(埼玉、千葉、東京、神奈川、大阪、兵庫、福岡)で緊急事態宣言が発令され、 各所220サイト以上の映画館が休業。
・4月16日 緊急事態宣言がすべての都道府県に拡大。全国の映画館が営業を休止する。
・5月4日 特定警戒都道府県の対象ではない34県で、映画館に対する休業要請が解除される。 同12日からTOHOシネマズが全国10館で再開することを皮切りに、 イオンシネマ、松竹マルチプレックスシアターズなどが対象地域での営業再開を発表。
・5月14日 39県で緊急事態宣言が解除。同21日には大阪、京都、兵庫でも解除され、映画館の再オープンの波がさらに広がる。
そして5月25日、残る東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県と北海道の緊急事態宣言が解除。6月1日にはすべての都道府県で映画館の休業要請が緩和され、丸の内TOEI、渋谷TOEI、シネマサンシャイン(いずれも1日から)、TOHOシネマズ(5日から)などが続々と再開を発表しました。
当面は劇場内の感染防止策を徹底したうえ、座席の販売規模などを縮小させて営業することになります。しかし、およそ3カ月間におよぶ“休止”が終わりを告げ、全国の映画館が再スタートを切ります。
※具体的な防止方針については、全国興行生活衛生同業組合連合会(全興連)が5月22日付けで改訂した 「映画館における新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドライン」に詳しいので、そちらをご参照ください。
■6月の上映ラインナップと、映画ファンの声は?
各劇場の上映作品は、旧作と新作を織り交ぜたラインナップに。 6月5日のTOHOシネマズ日比谷を例にとると、「ミッドサマー ディレクターズカット版」「君の名は。」「ポリス・ストーリー/香港国際警察(4K上映)」「アベンジャーズ」「バック・トゥ・ザ・フューチャー」「E.T.」「男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け」などが上映されます。作品名を眺めているだけでワクワクしてきますね、これは。
6月の主な新作公開スケジュールに目を向けると、5日から「ハリエット」「ANNA アナ」「ポップスター」「デッド・ドント・ダイ」「パラサイト 半地下の家族 モノクロVer.」「AKIRA 4Kリマスター版」。12日から「ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語」「グッド・ボーイズ」「ホーンテッド 世界一怖いお化け屋敷」「パラサイト 半地下の家族 IMAX版」。
そして19日から「ドクター・ドリトル」「エジソンズ・ゲーム」「ペイン・アンド・グローリー」。26日から「ソニック・ザ・ムービー」「ランボー ラスト・ブラッド」。
ほかにも「コリーニ事件」(12日)など、多彩な作品が封切りの日を迎えます。編集部でも「再公開日が決定」という記事を書く機会も増えてきており、日増しに「日常に映画が戻ってきた」ことを強く感じています。
なお公開スケジュール一覧は、 こちらをご参照ください。
また、映画ファンは、映画館の再開をどのようにとらえているのでしょうか。6月2日のニュース 「TOHOシネマズ 東京・千葉・神奈川・埼玉の23劇場を6月5日から営業再開」を例に見てみましょう。
記事の更新を告知する Twitterには、3000以上のRT&いいねが。引用リツイートも約300にのぼり、「待ってた!」「楽しみ!」「嬉しい……(涙)」「やっぱり映画は映画館で観たい」「少しずつ日常が戻ってくるといいな」など、しみじみとした喜びの声であふれていました。
一方で、やはり不安の声も。「けど、再開して即映画館行くの怖い」「嬉しいけど、行ってもいいものか迷う」など……。映画館は、果たして「行っても大丈夫」な場所なのでしょうか?
■新しい映画鑑賞マナーを
「映画館はいわゆる“三密”であり、感染リスクが高い場所なのでは?」という不安は、どうしてもつきまといます。ですが映画館は、毎年流行するインフルエンザの対策のため、厚生労働省や各都道府県が定める厳格な基準をクリアすべく、換気・加湿の設備等に高いコストをかけています。
全興連の佐々木伸一副会長は、 5月28日の会見で、劇場の換気について「非常に厳しく取り組んでいます。映画館は、そもそも密閉ではないんです」と強調しています。ですので、普段の生活と同じように、飛沫や接触を適切にケアすれば(もちろん、ゼロとは断言できませんが)「感染リスクは高くない」と言えます。
ちなみに映画.comでは、新しい映画鑑賞マナーを紹介するイラストを作成しました。繰り返しになりますが、適切に感染防止策を講じたうえで映画館へ足を運び、思う存分映画を楽しんでいただければと思います。
筆者紹介
尾崎秋彦(おざき・あきひこ)。映画.com編集部。1989年生まれ、神奈川県出身。「映画の仕事と、書く仕事がしたい」と思い、両方できる映画.comへ2014年に入社。読者の疑問に答えるインタビューや、ネットで話題になった出来事を深掘りする記事などを書いています。