コラム:編集長コラム 映画って何だ? - 第37回

2020年12月25日更新

編集長コラム 映画って何だ?

「スカイウォーカーの夜明け」「パラサイト」「テネット」「鬼滅の刃」激動の2020年を振り返る

2020年は、映画業界にとっても、過去に経験したことのない類の年になりました。皆さん、たぶんもう覚えてないと思いますが、2020年のお正月映画は「アナと雪の女王2」「スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け」が市場をリードしてスタートしました。そんなのもう、だいぶ遠い昔のことのように感じます。

「スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け」
「スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け」

2月は、米アカデミー賞で「パラサイト 半地下の家族」が作品賞を含む4部門を獲得する快挙を成し遂げました。これには私たちも大いに興奮し、盛り上がりました。「ポン・ジュノすげえ!」ってね。オスカーのお墨付きを得て、日本でも「パラサイト」は大ヒットしましたよね。

しかし、上半期の映画はそこまでです。3月には新型コロナ禍が深刻になり、映画も飲み会も諦めて、マスクや消毒液を探しまわる日々に。そして4月には緊急事態宣言。全国の映画館もシャットダウンしてしまいました。私たちも全員ワークフロムホームです。この時期、映画.comのアクセスランキングでずーっと1位だったのが「コンテイジョン」。今度は「ソダーバーグすげえ!」です。

「コンテイジョン」
「コンテイジョン」

「映画館いつ再開するんだ?」「映画業界どうなるんだ?」って毎日のようにZOOMでミーティングしているうちにゴールデンウィークが過ぎました。5月の終わりになると緊急事態も解除され、6月になって映画館は座席を間引いて営業を再開。しかし、春休み映画、GW映画の大作はいずれも公開延期になっているうえ、感染の恐怖心から客足はもどらず、映画館は閑散としていました。

7月に入り「今日から俺は!!劇場版」「コンフィデンスマンJPプリンセス編」が大当たりを引き寄せます。夏休みになって若者を中心に映画館は賑わい、「今日俺」は興収53.7億円、「コンフィデンスマン」は38.4億円という、コロナ禍などどこ吹く風の快進撃。これは、日本よりも遙かに感染者数の多いアメリカが、ハリウッド映画の公開を世界中でストップしたことが追い風になったという要因も大きいです。

「TENET テネット」
「TENET テネット」

そのハリウッド勢では、クリストファー・ノーラン監督の「TENET テネット」が、災厄の中でも映画公開を望む監督の強い意志のもと、世界中で9月に公開されました。日本でも「いよいよハリウッド映画もリスタート」という趣で、なかなかの盛り上がりを見せましたよね。私も、他の弊社スタッフ同様、緊急事態解除後初の映画館での映画鑑賞です。

結果「TENET テネット」は興収25億円を記録し、日本におけるノーラン監督作品では「インセプション」(35億円)に次ぐ2番目の成績となりました。これは、私たちの予想を上回る上々の成果です。

さあ、そして10月にはいよいよ「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」が全国の映画館で公開されます。初日からたった3日間で興収46億円以上を稼ぐ空前の出足で猛ダッシュした「鬼滅の刃」は、あれよあれよという間に興収100億円、200億円を突破し、ついに「千と千尋の神隠し」の持つ308億円(その後316.8億円に更新)をも超え、日本記録を塗り替える壮大な興行を展開しています。

「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」
「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」

確かに「鬼滅の刃」は大ヒットしていますが、まだまだ映画館にはお客さんが戻っていません。ここに来て、感染者数もどんどん増えているので、この冬も苦戦が続くでしょう。

思えば、昨年2019年は、2611億円という過去最高の興行収入を記録した年でしたが、20年はそのおよそ半分、1350億円あたりで着地する見込み。それでも、「落ち込みが前年の半分で済んだ」とも言えるわけで、決して最悪の結果とは思いません。

21年は、完全に元通りにはならないまでも、少しずつ市場は回復していくことでしょう。「007 ノータイム・トゥ・ダイ」や「トップガン マーヴェリック」そして「DUNE デューン 砂の惑星」など、折からのコロナ禍でスタックしてしまった大作映画たちに改めて期待しながら、この激動の年を終えたいと思います。

最後に、映画.comスタッフが皆で投票して選んだ2020年のベスト10を紹介して、この回を終了します。それでは皆さん、よいお年を!

「パラサイト 半地下の家族」
「パラサイト 半地下の家族」

【映画.comスタッフが選ぶ2020年の映画ベスト10】
1位 パラサイト 半地下の家族
2位 TENET テネット
3位 ジョジョ・ラビット
4位 フォードvsフェラーリ
5位 1917 命をかけた伝令
5位 ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語
7位 燃ゆる女の肖像
7位 羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ) ぼくが選ぶ未来
9位 海辺の映画館 キネマの玉手箱
10位 レ・ミゼラブル

※このベスト10に対する映画comスタッフのレビューは、noteの「映画.com style」で詳しく読むことが可能です。

筆者紹介

駒井尚文のコラム

駒井尚文(こまいなおふみ)。1962年青森県生まれ。東京外国語大学ロシヤ語学科中退。映画宣伝マンを経て、97年にガイエ(旧デジタルプラス)を設立。以後映画関連のWebサイトを製作したり、映画情報を発信したりが生業となる。98年に映画.comを立ち上げ、後に法人化。現在まで編集長を務める。

Twitter:@komainaofumi

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