コラム:編集長コラム 映画は当たってナンボ - 第29回
2008年12月29日更新
第29回:2009年はハリウッド映画の大逆襲に期待。夢の200億円プロジェクトも!
2008年は、映画人口が07年を下回ることが確実となった。
要因の一つは、ハリウッド映画の深刻な不振である。そもそも今年は「パイレーツ・オブ・カリビアン」「スパイダーマン」という大型のフランチャイズ映画が一旦終わっている「谷間の年」だったのに加え、「ハリー・ポッター」の延期がさらに状況を悪くした。大作シリーズものもあるにはあったが、それなりに結果を出したのは「インディ・ジョーンズ4」だけ。この「インディ」が洋画の第1位なのだが、2位は「レッドクリフ」と、非ハリウッド映画にさらわれている。
不振の原因の1つは、やはり脚本家組合のストライキだろう。J・J・エイブラムスが監督する「スター・トレック」、日本の超人気コミックの映画版「ドラゴンボール」などは、本来は今年公開されるはずだった。さらに、スピルバーグの新作なども公開延期になっている。加えて、ストライキ前の完成を目論んだがために、公開されたはいいが、クオリティが伴っていない作品もかなりあったように見受けられる。
もっとも、このストライキの影響は、実はTVシリーズの方がダメージが大きい。「24」は今年新シリーズのリリースがなかったし、「プリズン・ブレイク」も通常より短い話数でシーズンが終わっている。
また、ハリウッドのアクション映画の主流が、アメコミ映画になってきているのも不振の大きな原因だ。「ダークナイト」「アイアンマン」は全米市場でこそ凄まじいヒットを記録しているが、もともとキャラクターになじみのない日本では、それぞれ全米の10分の1にも満たない興収しかあげられていない。
一方で、日本映画は相変わらず好調そうに見える。「崖の上のポニョ」「花より男子」が、全体の1位と2位を占めたほか、トップ10のうち7本が日本映画である。
とは言え、その7本のうち東宝の配給作品が6本で、相変わらずの1人勝ち状態。邦画が好調なのではなく、東宝が好調というのが実態だ。
正月映画も今ひとつ盛り上がりを欠いているが、どうやら、この長い冬を経てようやく来年はハリウッド勢が息を吹き返しそうだ。
1月に公開される「007/慰めの報酬」を皮切りに、3月にはいろんな意味で超話題の「ドラゴンボール」、5月には「ダ・ヴィンチ・コード」の続編となる(原作では前日譚だが)「天使と悪魔」、6月には「ターミネーター4」、そして延期になった「ハリー・ポッターと謎のプリンス」が7月と、今年の不振がウソのようなラインナップが並ぶ。
そして、2009年末にはジェームズ・キャメロンの3D超大作「アバター」が控えている。「映画」という娯楽の概念を根本的に変えるかも知れない、200億円かけたキャメロン渾身のビッグ・プロジェクトである。
来年は、年間を通じてハリウッド映画の大攻勢が見られそうだ。皆さんもどうぞお楽しみに。(eiga.com編集長・駒井尚文)
筆者紹介
駒井尚文(こまいなおふみ)。1962年青森県生まれ。東京外国語大学ロシヤ語学科中退。映画宣伝マンを経て、97年にガイエ(旧デジタルプラス)を設立。以後映画関連のWebサイトを製作したり、映画情報を発信したりが生業となる。98年に映画.comを立ち上げ、後に法人化。現在まで編集長を務める。
Twitter:@komainaofumi