映画史を変えた傑作「ジョーズ」公開50周年記念ドキュメンタリーが配信決定

90分の長編ドキュメンタリー「Jaws @ 50: The Definitive Inside Story」は、7月10日午後9時（東部時間）に米ナショナル・ジオグラフィックで初放送され、翌11日からディズニープラスと米Huluで配信される。「ジョン・ウィリアムズ　伝説の音楽」で知られるロラン・ブーズロー監督がメガホンを取り、スピルバーグのアンブリン・ドキュメンタリーズとネッドランド・フィルムズが製作を担当した。スピルバーグ監督と原作者ピーター・ベンチリーの個人アーカイブから発掘された未公開映像やホームビデオ、貴重なNG映像を収録している。

「ジョーズ」は映画史において極めて画期的な作品として位置づけられている。それまで存在しなかった「ブロックバスター」という概念を事実上創造し、夏の大作映画という新たなジャンルを確立した。制作費900万ドル未満という当時としては比較的控えめな予算で、全世界興収4億7000万ドル超という驚異的な成功を収め、映画業界のビジネスモデルそのものを変革したのである。

この成功により、ハリウッドは夏季に大作映画を集中的に公開する戦略を確立し、現在まで続く映画興行の基本パターンを築いた。1975年の激戦区では「狼たちの午後」「シャンプー」「カッコーの巣の上で」といった名作を押しのけてトップに立ち、その後の映画制作の方向性を決定づけた歴史的な作品でもある。

ドキュメンタリーでは、製作現場での数々の困難とそれが生み出した創造性にも焦点を当てている。特に注目されるのが、機械仕掛けのサメ「ブルース」の度重なる故障である。

しかし、この技術的な困難が結果的に映画の質を高めることになった。サメを直接見せられないことで、スピルバーグ監督は観客の想像力に訴える演出を編み出し、より効果的な恐怖演出を実現した。この「見せない恐怖」の手法は、その後のホラー映画やスリラー映画に大きな影響を与えている。

スピルバーグ監督は新しいインタビューで「『ジョーズ』を作ることは、僕にとって人生を変える体験だった」と振り返りながら、機械の故障や悪天候による遅延、さらにはこの作品で映画監督としてのキャリアが終わるのではないかという恐怖についても率直に語っている。

ドキュメンタリーには、「ジョーズ」に影響を受けた著名な映画監督たちが出演している。ジョーダン・ピール（「ゲット・アウト」「ノープ」）、スティーブン・ソダーバーグ（「オーシャンズ」シリーズ）、ジェームズ・キャメロン（「タイタニック」「アバター」）、キャメロン・クロウ（「あの頃ペニー・レインと」）、J・J・エイブラムス（「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」）、ジョージ・ルーカス（「スター・ウォーズ」シリーズ）、ギレルモ・デル・トロ（「シェイプ・オブ・ウォーター」）といった現代映画界の巨匠たちが、この作品が自らの映画製作にどのような影響を与えたかを語る。

本作は、現代映画の礎を築いた「ジョーズ」の真価を改めて確認できる機会となりそうだ。