「エイリアン」の良さがピンとこない人にこそ適した「エイリアン ロムルス」は“リブート作品の壁”を超えられる?【コラム/細野真宏の試写室日記】
2024年9月7日 09:00
映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。
また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。
更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)
今週末9月6日(金)から「エイリアン」シリーズの最新作「エイリアン ロムルス」が公開されました。
この作品の興行収入がどのような結果になるのかは、個人的に興味深いです。
というのも、「見る前」と「見た後」で、自分自身の「エイリアン」という映画に対する評価に変化が起こったからです。
まず、本作を「見る前」は、正直なところ「エイリアン」の映画シリーズに対する関心は、とても薄いものでした。
というのも、あまりに「エイリアン」シリーズが多く作られている印象で、いまいち良さが分からなかったからです。
そもそも「エイリアン」の1作目は 1979年公開。今から45年も前の作品です。
そして、「エイリアン2」(1986年)、「エイリアン3」(1992年)、「エイリアン4」(1997年)、「エイリアンVSプレデター」(2004年)、「AVP2 エイリアンズVS.プレデター」(2007年)、「プロメテウス」(2012年)、「エイリアン コヴェナント」(2017年)と、関連作品があまりに多いのです。
どうやら45年前の1作目「エイリアン」は、当時は斬新さに溢れ、「映画史」を変えた伝説的な作品のようです。
「エイリアン ロムルス」が画期的に思えたのは、映画「エイリアン」を見たことがない人でも、その良さを予備知識ゼロでも分かるようにしている点です。
1作目「エイリアン」は2122年を舞台としていますが、本作「エイリアン ロムルス」は2142年。つまり、1作目の20年後を舞台としています。
登場人物も一新されているため、新規層でも新たに「エイリアン」を体感しやすくなっています。その点に加えて、シリーズのファンが見ても過去作との関連もあるので楽しめるという絶妙なバランスで上手く描かれているのです。
そもそもタイトルにある「ロムルス」というのは、宇宙ステーションの名前です。
主人公レインは、“弟”で「アンドロイド」のアンディと行動を共にしていますが、今から100年後には、人間と見分けがつかないようなアンドロイドがいても不思議ではないでしょう。
この作品の世界線では、人類が遠い宇宙にまで活動圏を広げています。主人公らは、太陽も見えないような惑星の鉱山で働かされる状況に追いやられるなかで物語は始まっていきます。
本作の成功のカギを握るのは、やはり監督の力量でしょう。
そもそも1作目「エイリアン」のメガホンをとったのは、第73回アカデミー賞で作品賞、主演男優賞など5冠に輝く「グラディエーター」(2000年)、「オデッセイ」(2015年)などで知られる巨匠リドリー・スコット監督です。
そして2作目「エイリアン2」は、「ターミネーター」や「タイタニック」、「アバター」などで知られる巨匠ジェームズ・キャメロン監督です。
1作目「エイリアン」は「SFホラー映画」というジャンルでしたが、2作目「エイリアン2」では「アクション映画」に変化しています。
本作では1作目を目指しているので「SFホラー映画」に長けた人材が求められるのですが、まさに適役を起用できたと言えるでしょう。
メガホンをとっているのは、フェデ・アルバレス監督。「スパイダーマン」でお馴染みのサム・ライミ監督の原点とも言える作品「死霊のはらわた(1981)」のリブート作「死霊のはらわた」(2013年)で長編デビューを果たし、成功に導いています。その後は「ドント・ブリーズ」(2016)、「蜘蛛の巣を払う女」(2018)で監督を務めています。
このように新たな才能の下、原点回帰を図っているので、現在の最新鋭の映画技術を駆使して「エイリアン」が生まれ変わっているのです。
その結果、私は、初めて「なるほど、エイリアンってこういう映画なのか」と面白さが理解できました。
さて、本作の興行収入ですが、このところのハリウッド映画は邦画に押されている厳しい状況にあると思います。
例えば、本作と同じ「20世紀スタジオ映画」でリブート作品である「猿の惑星 キングダム」(2024)は、やはり前作「猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)」と同様に興行収入10億円が大きな壁となって超えられていない現状があります。
ただ、本作については、文字通り予備知識ゼロでも楽しめるように作られているので、それがキチンと伝わると、“リブート作品の壁”である興行収入10億円の突破が可能になると思われます。
“45年前に世界を驚かせた衝撃”を体感できる「エイリアン ロムルス」が口コミと共に、まずは興行収入10億円を突破できるかどうかに大いに注目したいと思います。
執筆者紹介
細野真宏 (ほその・まさひろ)
経済のニュースをわかりやすく解説した「経済のニュースがよくわかる本『日本経済編』」(小学館)が経済本で日本初のミリオンセラーとなり、ビジネス書のベストセラーランキングで「123週ベスト10入り」(日販調べ)を記録。
首相直轄の「社会保障国民会議」などの委員も務め、「『未納が増えると年金が破綻する』って誰が言った?」(扶桑社新書) はAmazon.co.jpの年間ベストセラーランキング新書部門1位を獲得。映画と興行収入の関係を解説した「『ONE PIECE』と『相棒』でわかる!細野真宏の世界一わかりやすい投資講座」(文春新書)など累計800万部突破。エンタメ業界に造詣も深く「年間300本以上の試写を見る」を10年以上続けている。
発売以来15年連続で完売を記録している『家計ノート2025』(小学館)がバージョンアップし遂に発売! 2025年版では「全世代の年金額を初公開し、老後資金問題」を徹底解説!
Twitter:@masahi_hosono
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