【インタビュー】「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」で意識した、ファンタジーとリアルのバランス 「ハリポタ」も手がけたプロデューサーが語る
2023年10月2日 10:00
映画「チャーリーとチョコレート工場」で有名な工場主ウィリー・ウォンカの“始まりの物語”を紡ぎ、ティモシー・シャラメが若きウォンカに扮する「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」が、12月8日に公開される。予告編は公開されたものの、ストーリーやキャラクターの詳細など、その全貌はまだまだベールに包まれている。そこで映画.comでは、関係者向けのプレゼンテーションのために来日した、「ハリー・ポッター」シリーズなどでも知られるプロデューサー、デビッド・ハイマンへのインタビューを敢行。謎に包まれた物語や世界観について、語ってもらった。(取材・文/編集部)
本作は、世代を超えて愛されるロアルド・ダールの児童書「チョコレート工場の秘密」をもとにしたオリジナルストーリー。ジーン・ワイルダー主演の「夢のチョコレート工場」(1971)やジョニー・デップ主演の「チャーリーとチョコレート工場」(2005)に登場した工場主ウォンカとチョコレート工場の誕生秘話を描く。
幼い頃から、いつか母と一緒においしいチョコレートの店を作ろうと夢見ていたウォンカが、一流のチョコレート職人が集まるチョコレートの町へと向かう。ウォンカが作る“魔法のチョコレート”は瞬く間に人々を虜にし、一躍人気者となるが、そこは夢見ることが禁じられた町だった。やがてウォンカは、彼の才能を妬んだ“チョコレートカルテル3人組”に目をつけられることになる。
ハイマンはこれまで、「ハリー・ポッター」シリーズ、「ファンタスティック・ビースト」シリーズ、「パディントン」シリーズをはじめ、「ゼロ・グラビティ」「アイ・アム・レジェンド」「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」「マリッジ・ストーリー」などを手がけてきた。世界中で大ヒットを記録した「バービー」でも製作を務めている。
本作は、「チャーリーとチョコレート工場」で有名なウィリー・ウォンカがチョコレート工場を作る前のお話です。自分を世界から完全に隔離して、工場のなかに入り込んでしまう前のウィリーとは、一体どんな人だったのか、と考えました。私たちがウィリーという人物に、「チャーリーとチョコレート工場」のなかで会う時には、もうすでにウンパルンパ的な奇妙な要素を持った、ダークなキャラクターになっていると思います。
ですから本作では、もう少し純粋で、楽観的なウィリーを描いています。彼の瞳のなかには既に、魔法のような、神秘的な光があります。最終的にウィリーがどうなっていくのか、その最終形の要素は見えてくるんですが、まだまだ「チャーリーとチョコレート工場」で見たような姿にはなっていないという段階です。
さらに本作には、チャーリー(※ウォンカがチョコレート工場の後継者を探し、世界中から選んだ5人の子どもたちのひとり)は出てきません。ですが、やはりチャーリーとウィリーの関係はすごく大事だと考えたので、チャーリーの代わりに、ヌードルという孤児の女の子が登場します。これは、ポール(・キング監督)と、共同で脚本を書いたサイモン(・ファーナビー)がこだわっていた部分でもあります。
チャーリーは、そもそも家族がいて、安全な環境で育っています。一方のヌードルは、お父さんもお母さんもいない。だから、チャーリーと比べると、最初は少し気が強い雰囲気ですが、ウィリーとの関係のなかで少しずつ、心があたたかくなっていきます。
本作だけでも十分に楽しめる内容です。例えば原作を読んで、過去の映画作品を見たことで得られる知識はあると思うんです。新キャラクターが出てきたら、「あいつだな」とすぐに分かります。またウンパルンパの歌にしても、「ピュア・イマジネーション」にしても、もともとあった曲を使用したものには「あ、あの曲だ」と懐かしい感じがすると思います。ですが、そういった知識がないと映画が楽しめないかというと、全然そんなことはありません。
人々を浮かせてしまうチョコレートや、魔法のような生き物ウンパルンパや、風船でウィリーとヌードルが浮いてしまうシーンなど、そうした魔法が劇中にはたくさん登場します。私のほかの作品(「ハリー・ポッター」シリーズ)では、魔法の杖のようなものが出てきますが、それは出てきません(笑)。ですが、ある意味でチョコレートそのものが魔法のようなものなのです。
もしかしたら私の想像力が足りないのかもしれませんが(笑)、私はファンタジーの世界について、時々悩むことがあります。ただ私は、「ハリー・ポッター」が大好きなんです。どうしてかというと、魔法はありませんでしたが、学校に行ったことがあるからなんです。「パディントン」のしゃべるクマもファンタジーですが、その周囲の世界は本物ですよね。
現実の世界には、食べたら浮いてしまうチョコレートはありませんが、チョコレートを食べると、魔法にかかったようにおいしいなと思うことはあります。ものすごく美しいものを見たり、素晴らしい想像力に富んだものを経験したりすると、やっぱり自分が魔法にかかったように、そういう世界に引き込まれていくと思うんです。実際に自分たちが住んでいるような空間なんですが、魔法の可能性が本当にあるかもしれないと思わせるような、そういう世界。
別の観点からいうと、ある意味、私たち人間はそれぞれ、魔法のようなものを持っているんです。その魔法のようなものが、人を飛ばすことができる力でなくてもよくて、愛の力、コミュニケーションの力、何かを生み出す力なのだと思います。
実際に、劇中には入れられなかったんですが、「ハリー・ポッター」シリーズ第5弾「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」のときに、ある人が新聞を読んでいると、そこに箒に乗った子どもが来て、新聞が飛んでしまうというシーンを撮影したんです。現実で同じようなことが起こったら、風か何かで新聞が飛んでしまったとも考えられるし、魔法のような力を想像することもできますよね。やっぱり人間にとっては夢を見ることが楽しいし、素晴らしいことなんだと思います。
ティモシーは、素晴らしい声の持ち主です。また彼の瞳を見ると、本当に美しいんです。語らずして、いろいろなことを伝えられるようなものを持っています。たくさんハートがあるし、傷付きやすい面を持っている人でもあると思います。そういう部分が、彼のパフォーマンスを通してたくさん感じられて、悲しみも喜びも表現することができる人ですね。
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