奈緒の生涯ベスト映画、最近感銘を受けた作品は?【あの人が見た名作・傑作】
2022年10月4日 10:00
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映画を見に行こうと思い立ったとき、動画配信サービスで作品を鑑賞しようとしたとき、何を見れば良いのか分からなかったり、選択肢が多すぎて迷ってしまうことは誰にでもあるはずです。
映画.comで展開する新企画「あの人が見た名作・傑作」は、そんな皆さんの映画選びの一助として、映画業界、ドラマ業界で活躍する著名人がおすすめする名作、傑作をご紹介するものです。第20回は、「マイ・ブロークン・マリコ」に出演した奈緒さんです。
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1995年2月10日生まれ、福岡県出身。20歳で上京し、2018年のNHK連続テレビ小説「半分、青い。」で、永野芽郁演じる主人公の親友役に抜てきされた。19年にはドラマ「あなたの番です」で注目を集める。同年に「ハルカの陶」で映画初主演。そのほか、主な映画出演作は「僕の好きな女の子」「事故物件 恐い間取り」「みをつくし料理帖」(いずれも2020)、「先生、私の隣に座っていただけませんか?」「君は永遠にそいつらより若い」「マイ・ダディ」「草の響き」「あなたの番です 劇場版」(いずれも21)、「余命10年」「TANG タング」(ともに22)など。
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1本にしぼるのは難しいんですが、自分の思い出がすごくつまっているのは、岩井俊二監督の「花とアリス」です。私が高校を卒業したての18歳で、ちょうどこの仕事をすると決めたときに、当時もいまもお世話になっているグ・スーヨン監督とお会いしたんです。「もし芝居をやりたいんだったら、いまの十代のうちに映画をたくさん見るか、全く見ないか、どちらかを選んだ方が良いと思う」とアドバイスを頂いて。そのときは週に10本と決めて、とにかくがむしゃらに映画を見ていました。
その時期に「花とアリス」をおうちで、DVDで見たんですが、それが初めて「たくさん見た方がいい」と言われた意味がわかった瞬間でした。学生の女の子ふたりの葛藤が自分に響いてきて、すごく大切な1本になったんです。自分が今後、「こういう作品に感銘を受けて、こういう作品が好きなんです」と言えるものが、初めてできたなと思いました。「たくさん見た方がいい」というのは、こういう作品との出合いがあるからだったんだろうなと、いまだにスーヨン監督に感謝していますし、思い出深いです。
「中途半端なことをするな」と言われました(笑)。見るなら徹底的に見て、見ないなら見ない。私は当時まだ、福岡にいたんですが、「何をするにしても、中途半端なことをしてはいけない」と伝えてくださったんじゃないかなと、いまは思っています。
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レンタルビデオショップに通っていましたね。最初は監督などで選んで見ていくなかで、段々と「これは、もう見ちゃったな」ということも多くなってきたので、「あ行から借りてみよう」「今日は、う行の最初の方を借りてみよう」という感じで選ぶようになりました。何を見るか決めずに映画館に行くこともありました。自分が知っている範囲の外にある、自分に衝撃を与えてくれたり、「これが好きだ」と思えたりする新しいものを求めて、映画館やレンタルビデオショップに行っていました。
レンタルショップで1回にたくさん借りて、うっかり延滞してしまうことがあったので、延滞料金で痛い思いをしました(笑)。「じゃあ次に返すまでにもう1周しよう」と見ていたのが懐かしいですね。不便だったことも含めて、愛おしい思い出です。近くのお店に漫画コーナーができたときは、「私の延滞料でコーナーができたんじゃないか」と思って、誇らしい気持ちで漫画も借りていました(笑)。
花とアリスが記憶をなくした先輩の記憶を、海で探すシーンをすごく覚えています。岩井監督の作品は、画がすごく美しくて、途中風でトランプが舞っているカットは惚れ惚れしました。
あとは、ラストの方、落語をする前に舞台袖で先輩に自分の気持ちを伝えようとする花がとても好きです。アップで映る泣いている花の表情は振り絞るようで、葛藤のなかでアリスとぶつかりながらも、嘘を重ねてしまった自分とちゃんと向き合い、成長した花のあの泣き顔を見たときに、「よくがんばったね」と自分も同じくらい泣いてしまっていました。そのときに先輩の返す言葉も優しくて、自分自身、苦しかった気持ちが解けていくのを感じました。
私自身は、自由奔放なアリスみたいになりたくて憧れながらも、いつも振り回されてしまう花に共感をしていました。でも、その後、アリスのオーディションのシーンでは、アリスはアリスで、最強の女の子ではなくて、自分のなかに抱えている葛藤をもちながら、自分なりに乗り越えていく姿がとても美しいなと思いました。
ずっと自分がふたりの間で揺れ動いているような感覚もあったので、ラストシーンでいつも通りに笑い合っているふたりを見たとき、「花もアリスも、自分自身のことも受け入れられたのかな」と感じて、すごく素敵だなと思いましたね。あとは、情景として目に浮かんでくるシーンが多かったです。「花とアリス」がきっかけで、岩井監督の作品にはまったんですが、画の作り方がすごく素敵だなと思いましたし、邦画を好きになるきっかけになりました。
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本作がきっかけで、「邦画が好きだ、もっと見たい」と心から思えたのは、私にとってすごく大きかったです。きっと、そういう出合いがなかったら、「こういう作品に出たい」という自分の目標となるものが、もっとぼんやりしていたんじゃないかなと思うんです。「こういう作品に出合いたい」「岩井俊二さんに会ってみたい」など、いろんな夢ができた瞬間でした。
上京したときの自分のパワーにもなりましたし、当時その年齢で見られたことが大きかったのかなとも思っています。自分自身がオーディションを受ける立場だったこともあり、物語の登場人物にすごく救われたような気がしました。鈴木杏さんと蒼井優さん、おふたりのお芝居を通して、自分のなかの誰にも言っていない気持ちに触れられたような気がして。そのときに、「作品を見て救われることがあるんだな」と思ったんです。当時は、その感情は“共感”だったと思うんですが、映画で新しいことを知ったり、学びがあったり、自分が経験したことのない出会いも体験できるんだと知るきっかけになったと思います。私も映画に出演させてもらうときは、「この作品が少しでも、見て下さる方に共感してもらえたり、初めて出会うものになったり、蓋をしている気持ちに触れるものになったりしたらいいな」という気持ちが芽生えるようになりました。
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「リリイ・シュシュのすべて」の岩井俊二監督が、鈴木杏と蒼井優を主演に迎え、ふたりの少女の恋と友情を綴った青春ドラマ。物語の中心となるのは、同じバレエ教室に通う親友同士の花(鈴木)とアリス(蒼井)。自由奔放なアリスに振り回されてばかりの花は、アリスが一目ぼれした高校生を一緒に尾行するうちに、その彼とともに通学している宮本(郭智博)のことが気になり始める。やがて花とアリスは、宮本が通う手塚高校に進学。ある日、宮本が頭をぶつけて気を失う場面に遭遇した花は、どさくさに紛れて、自分が恋人だと彼に思い込ませる。花は嘘を重ねるうちにアリスまで巻き込んでしまうが、その嘘のせいで宮本はアリスに恋心を抱き、アリスもまた彼に惹かれていく。
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ちょうど1年前くらいに公開されていた、ダリウス・マーダー監督の「サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ」です。映画館で見たんですが、そのときの衝撃を誰にも話せずにいたので、ここでお話させて頂ければと思います(笑)。私は当時、視覚障がいを持つ女の子が主人公のドラマ「恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~」に参加していました。そうした題材にアンテナをはっている時期だったので、「サウンド・オブ・メタル」の主人公にはモデルとなる方がいらっしゃって、その方はバンドのドラマーだったんだけれど、耳が突然聞こえなくなってしまうお話だと聞いたときに、見に行きたいなと思いました。すごい映画体験をさせてもらえて、考えさせられるストーリーがあって、本当に良い作品だなと思いました。鑑賞から1年経っても、心に残っています。
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彼は音楽をやっているなかで、「聞こえるということ」が、とても大切なことだったと思うんです。きっと自分では気付かないくらい、大切なことだったと思うんですよ。失ったことで、いかに大切だったか分かる。人間って、それだけ大切なものを奪われたときにはどうしたらいいんだろうと思うんですが、辿り着くのは、「受け入れること」しかないんだなと。
彼が自分の状況に反発し、抵抗しながらも受け入れようとして、“再生”に辿り着くまでの、すごくリアルな追体験をさせてもらえる作品でした。実際に映画館で見ていると、彼に聞こえているであろう音が聞こえるんですよね。自分も同じ立場になったようで、主人公の気持ちとリンクしながら、周りの人たちの気持ちも痛いほど伝わってくる。「自分の1番大切なものって何だろう」「その大切なものがなくなったときに、最終的にはどう受け入れて行くんだろう」と自分自身で考え、いまでも心に残っているのは、誰しもが共感する部分だったのかなと思いました。
ラストシーンでは、彼にとっては「聞こえるということ」がずっと希望だったけれど、音を喪失したことで、違う希望に向かって進んでいくことが分かりました。切なくもあったんですが、私としては希望が感じられました。彼がろう者の支援コミュニティに入って葛藤しながらも、耳が聞こえない人たちとともに、自分を受け入れていくなかで、ひとつの部屋で、紙とペンだけを用意されて「何か書きなさい」と言われるシーンが印象的でした。
私自身もいろんな情報がありすぎて迷ったり、「これでいいのかな」と不安になったりしたときは、何も書けなくてもいいから、紙とペンだけを目の前に置くようになって、実生活にもすごく影響がありましたね。主人公が、あの部屋で何を感じたのか、聞かれるシーンがあるんですが、本当に何もない部屋だけど、窓があって、そこからの景色を見るだけでも、人は何かを感じることができる。例え自分の何かがなくなっても、「何もない」ということはないんだなと思いました。
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リズ・アーメッド(「ヴェノム」)が主演し、ダリウス・マーダー(「プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ 宿命」)が監督と脚本を担い、聴覚を失ったドラマーの青年の葛藤を描いたドラマ。第93回アカデミー賞で6部門にノミネートされ、編集賞と音響賞を受賞した。ルーベン(アーメッド)は、恋人ルー(オリビア・クック)とロックバンドを組み、トレーラーハウスでアメリカ各地を巡りながらライブに明け暮れる日々を送っていた。しかしある日、ルーベンの耳がほとんど聞こえなくなってしまう。医師から回復の見込みはないと告げられた彼は自暴自棄に陥るが、ルーに勧められ、ろう者の支援コミュニティへの参加を決意する。
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いまは、「NOPE ノープ」を見たいです。ずっと見に行きたくて、予告編が公開されたときから楽しみにしていたんですが、撮影が始まってしまい、なかなか行けていないですね。“最悪の奇跡”がどういうものなのか、見たいです(笑)。予告編からは想像がつかないのに、すごく面白くてドキドキして、「これは新しいものと出会えそうだな」と思いました。ジョーダン・ピール監督の「ゲット・アウト」も好きだったので、すごく気になっています。迫力がありそうなので、映画館で見たいですね。
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「ゲット・アウト」「アス」で高い評価を受けるジョーダン・ピールの長編監督第3作。広大な田舎町の空に現れた不気味な飛行物体をめぐり、謎の解明のため動画撮影を試みる兄妹がたどる運命を描く。牧場経営で生計を立てるヘイウッド家の長男OJ(ダニエル・カルーヤ)が、家業をサボって町に繰り出す妹エメラルド(キキ・パーマー)にうんざりしていたある日、突然空から異物が降り注いでくる。その謎の現象が止んだかと思うと、直前まで会話していた父は息絶えていた。OJは、父の不可解な死の直前に、雲に覆われた巨大な飛行物体のようなものを目撃したと妹に明かす。兄妹はその飛行物体を撮影し、ネットでバズらせようと画策するが、やがて想像を絶する事態に巻き込まれていく。
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本作ではマリコという、自ら死を選択する女の子を演じました。自分自身、「何を希望とするのか」を常に諦めずに見つけたいという思いで、演じていました。
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タナダユキ監督が、平庫ワカ氏の同名人気コミックを映画化。物語は、鬱屈した日々を送る会社員・シイノ(永野)が、テレビのニュースで親友・イカガワマリコ(奈緒)の死を知ることから始まる。学生時代から父(尾美としのり)に虐待を受けていたマリコの魂を救うため、シイノは遺骨を奪うことを決心。「刺し違えたってマリコの遺骨はあたしが連れて行く!」と誓い、マリコの実家から遺骨を強奪したシイノは、そのまま旅に出ることに。マリコの遺骨を抱き、彼女との思い出を胸に、シイノが向かった先は――。
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