【「モガディシュ 脱出までの14日間」評論】今後の韓国映画界のカギを握る、21年国内最大ヒットの歴史アクション・ドラマ
2022年6月26日 08:30

昨年7月に韓国で公開され、361万人を動員し2021年度国内映画の年間首位を記録、アカデミー国際長編映画賞の韓国代表にも選出された政治ドラマ。手がけたリュ・スンワン監督としては716万人動員の「ベルリンファイル」、1340万人の「ベテラン」、659万人の「軍艦島」(以上製作順)に続く大ヒットとなっている。
韓国映画は2011年から10年連続で韓国の興行動員シェアの50%を超えていたが、21年は海外作品に押され3割(29.7%)にまで縮小。その中で年間総合首位「スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム」をはじめとするマーベルやハリウッド勢圧勝の中、この作品は孤軍奮闘した韓国作品として大きな話題となった。
韓国は興行自体も落ち込んでおり、イ・ビョンホン監督「エクストリーム・ジョブ」、「アベンジャーズ エンドゲーム」、「パラサイト 半地下の家族」など話題作が続いた19年は、国民1人あたりの年間鑑賞回数が4.37回だったものの、コロナ下の20年は1.15回、21年でも1.17回と伸び悩む。最優先課題が自国作品の復調なので、本作の大ヒットは映画界にとって喜ばしいニュースになった。内容は、遠いアフリカの地で内戦に巻き込まれた外交官たちを描いたスケールの大きい作品で、テーマになっているのは南北問題である。
古くは「シュリ」や「ブラザーフッド」、最近でも「コンフィデンシャル 共助」や前述の「ベルリンファイル」、ドラマ「愛の不時着」など、ヒット作には南北に触れたものが数多い。本作はキム・ユンソク演じるハン韓国大使が、事件をもとに06年に記した小説を原作としている。
スンワン監督は撮影に際し、政情不安なソマリア・ロケを断念、モロッコの歴史ある港町エッサウィラに当時のモガディシュ市街を再現。多くのアフリカ系キャストを起用して内戦勃発直後の脱出劇をリアルに映し出す。「タイラー・レイク 命の奪還」で見られた、並走する車内から車内へのシームレスなカメラワークなど、見るべきアクション・シーンも多い。
さらに、当時の南北の外交戦略や国連加入をめぐる駆け引き、時代の空気感、それぞれの国民性が巧みに織り込まれ、国境を超越した交誼が熱く描かれる。「裏切りのサーカス」の原作者ジョン・ル・カレを愛するスンワン監督だからか、イデオロギーと人間性のせめぎ合いにはこだわりを見せる。限定的な南北問題を、対立と和解の普遍的ストーリーに置き換えた韓国映画界の強さを感じる作品だ。
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