裏切りのサーカス
劇場公開日:2012年4月21日
解説
スパイ小説の大家ジョン・ル・カレの代表作を「ぼくのエリ 200歳の少女」のトーマス・アルフレッドソン監督、ゲイリー・オールドマン主演で映画化したスパイスリラー。1960年代のロンドン。ある作戦の失敗でイギリスの諜報機関サーカスを引責辞職したジョージ・スマイリーに、ある日特命が下される。それは、いまもサーカスに在籍する4人の最高幹部の中にいる裏切り者=2重スパイを探し出せというものだった。共演にコリン・ファース、トム・ハーディ、ジョン・ハートほか。
2011年製作/127分/R15+/フランス・イギリス・ドイツ合作
原題:Tinker Tailor Soldier Spy
配給:ギャガ
スタッフ・キャスト
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2018年9月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
派手な銃撃や爆破、アクションは一切なし。むしろファイルを盗み出したり、裏切ったり裏切られたりといった最低限の動きにこそカタルシスがある。鑑賞中、ついつい眠気に襲われたり、あるいは難解さに音を上げてしまうケースも多いだろうが、しかし、本作は逆に何度も繰り返し観ることで楽しみ方が深化していく稀有な作品でもある。最初はストーリーに主眼を置き、今度は名優の演技に酔いしれ、それからこの物語を取り巻く「様々な愛の形」にも注目しながら鑑賞してみることをお勧めする。するとスマイリーと妻の愛とはまた別に、彼と“カーラ”もまた、何やら言い知れぬ深い愛で結びついているように見えてくるのだから不思議なものだ。鉄のカーテンの向こう側の敵と戦いながら、最終的な目的は最も近くにいる妻を取り戻したいということ。あるいはその逆も真なり。この鏡の世界と対峙するような感覚こそ、ル・カレが描きたかった迷宮のラビリンスなのだろう。
2022年11月14日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
最初からストーリーに乗れず、いつになったら面白くなるんだろうと思いながら観ていたら、結局終わるまで面白く思えませんでした
ストーリーが理解できてなかったのかもと思ってネタバレを読みましたが、しっかり内容を理解してるのに面白さが理解できてないという事でした
英国人ばかりの豪華キャスト、スパイ映画と、かなり期待していたのに面白さが理解できないとは自分にガッカリです
2022年11月11日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
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スウェーデン出身のトーマス・アルフレッドソン監督による2011年製作のフランス・イギリス・ドイツ合作映画。原題:Tinker Tailor Soldier Spy、配給:ギャガ
有名らしいが、ジョン・ル・カレの原作は読んでおらず。
時間系列と登場人物、種々のエピソードが入り乱れて分かりにくく、観客の観察力・推理力に挑戦する様な映画との印象。無駄な説明は省き映像で人物像を語らせ、細部まできめ細かく作り込まれた映画で、随分とできる脚本及び監督とは思った。
最初のタイトルバックに重ねる映像、更に住まいやルーチン行動も示す一連の映像が随分と格好が良い。主人公ゲイリー・オールドマン演ずるスマイリーの立場や状況、更に性格まで、上官ジョン・ハートへの追随行動、そしてドアに挟む木片や郵便物の仕分け等で、見事に映像により語らせている。退官後、眼鏡フレームの色を変えるのも、観客に時間系列を明示する意味で上手い。
意味ありげに映す絵は、後に裏切り者コリン・ファース(「英国王のスピーチ」でアカデミー賞)がスマイリー妻にと持ち込んだもので有ることが明かされる。出ていった妻を深く愛しているせいか、その絵を捨てないでいるスマイリー。職員パーティーでスマイリー妻を誘惑していたコリン・ファースと、それに気づかないスマイリー。
両刀使い?のコリン・ファースはハンガリーで撃たれる工作員マーク・ストロングにもパーティーで色目を送っていた。解雇された女性職員キャシー・バークが持ち出す写真が示す、長い二人の関係性。スマイリーのために情報取るベネディクト・カンバーバッチも男性の愛人がいて、同性愛がやけに目に付く。諜報組織には多いのだろうか?
一方、イスタンブールに派遣されたハンサムなトム・ハーディは美しいソ連工作員妻スベトラーナ•コドチェンコワに恋し、彼女の西側脱出希望を成功させようとする。組織内上層部にスパイがいることを愚かにも本部に連絡し、必然的にソ連工作員から攻撃を受ける。ハーディは知らないが、美しい彼女が無惨に呆気なく撃ち殺される映像を観客は見せられる。
スマイリーは死後の住居訪問で上官ジョン・ハートにスパイである嫌疑持たれていたことを知り愕然としていたが、部下として動いてくれているカンバーバッチにも重要な情報は伝えていない。車内に入り込んだハチを慌てず冷静に窓を開けて外に出て出す姿やキャシー・バークに高級酒を土産に訪問し欲しい情報を得ること等も含め、諜報員としての戦略的資質をうまく表現。
スマイリーは、かつて愛妻からのプレゼントであるライターを、寝返りを促していたソ連諜報員カーラに渡したらしい。彼は今や敵側の長となリ、ハンガリーでの待ち伏せの指揮を取っていたことが、そのライターを映す映像で示される。スマイリーとカーラは敵同士であるが、何処かお互い恋愛をしている様な関係性が醸し出されるのが何とも不思議。
ラスト、コリン・ハートを撃ち殺すマーク・ストロングは深い愛の故にも思えた。スパイ映画の外形ながら、本当のところは、一方的な愛、同性愛に異性愛、更に宿命のライバル同士の愛と、様々な愛のかたちをこの映画は描こうしている様に思えた。
製作ティム・ビーバン、 エリック・フェルナー、 ロビン・スロボ、製作総指揮ジョン・ル・カレ、 ピーター・モーガン、 ダグラス・アーバン、スキー デブラ・ヘイワード ライザ・チェイシン 、オリビエ・クールソン、 ロン・ハルパーン。
原作ジョン・ル・カレ「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」、脚本ピーター・ストローハン、 ブリジット・オコナー、撮影ホイテ・バン・ホイテマ、美術マリア・ジャーコビク、編集ディノ・ヨンサーテル、音楽アルベルト・イグレシアス
出演ゲイリー・オールドマン(ジョージ・スマイリー)、キャシー・バーク(コニー・サックス)、ベネディクト・カンバーバッチ(ピーター・ギラム: スマイリーの下で働く)、コリン・ファース(ビル・ヘイドン(テイラー))、スティーブン・グレアム、トム・ハーディ(リッキー・ター、「ダークナイト ライジング」のべイン役等)、キアラン・ハインズ(ロイ・ブランド(ソルジャー))、ジョン・ハート(コントロール)、トビー・ジョーンズ(パーシー・アレリン(ティンカー))、デビッド・デンシック(トビー・エスタヘイス(プアマン))、サイモン・マクバーニー(レイコン次官)、マーク・ストロング(ジム・プリドー: ハンガリーで撃たれる)、スベトラーナ・コドチェンコワ(イリーナ: 敵側工作員妻)。
2022年7月14日
Androidアプリから投稿
日々今日も、私が映画に興じている間にも、地道な情報戦が行われていることだろう。
非常に質の高いスパイ映画で、観る人を選ぶ知的な作品である。