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性描写、暴力、宗教……あの日本人監督作も フランスで公開時に物議を醸した10本

2021年3月7日 22:30

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「ラストタンゴ・イン・パリ」
「ラストタンゴ・イン・パリ」
(C)1972 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.

フランスの映画情報サイトallocineが、公開時に物議を醸し、論争を巻き起こした作品10本を紹介している。

■奔放な女性像に反発
素直な悪女」(ロジェ・バディム監督/1956)
当時ブリジット・バルドーの夫であったロジェ・バディムの初監督作。バルドーが自由に愛や欲望を選択するヒロインを演じた。これを女性の進歩と捉え、性やモラルの変化の象徴という声がある一方で、スキャンダラスで、挑発的なキャラクターが非難された。公開時にカトリック団体は「官能性が支配しているこの映画に私たちは強く反対せざるを得ません。検閲が許容する範囲の限界。モラルが低く、すべて嫉妬と欲望を中心にしている」と、この映画を見ないように呼びかけたが、全仏で391万人の入場者数を記録。バルドーは本作で共演したジャン=ルイ・トランティニャンと恋仲になり、映画完成後バディムと離婚した。
「素直な悪女」
「素直な悪女」
写真:Collection Christophel/アフロ
■爆弾が投げつけられ50年間上映禁止
ルイス・ブニュエルの黄金時代」(ルイス・ブニュエル監督/1930/日本未公開、ソフト発売のみ)
鬼才ルイス・ブニュエルが「アンダルシアの犬」に続き、画家のサルバドール・ダリと組んだ監督第2作。悪夢的な映像を繋いだ前衛映画で、教会、家族、軍隊への攻撃を示唆するようなイメージから波紋を呼び、公開劇場に極右翼や反ユダヤ主義の活動家たちが乱入。スクリーンに爆弾が投げ付けられる事件が発生。その後、検閲委員会がフィルムを押収し、1981年まで50年間上映禁止となった。
■キリストの描き方で波紋
最後の誘惑」(マーティン・スコセッシ監督/1988)
ニコス・カザンザキスの原作を基に、神の予言者としての役割と、マグダラのマリアと1人の人間としての関係を持ちたいという欲求との狭間で悩むキリストの姿を描く。撮影中に、キリスト教原理主義団体が、劇中でキリストが同性愛者として描かれていると主張、パラマウント・ピクチャーズに圧力をかけパラマウントは配給を断念。ユニバーサルに引き継がれる。公開時には激しく批判され、フランスの映画館で数件の火災が発生。パリでは劇場が爆破されて数人が重体となった。
■人種差別的な映画として今なお論争を呼ぶ
国民の創生」(D・W・グリフィス監督/1915)
トーマス・ディクソンの原作「ザ・クランスマン」を基に、南北戦争時代を背景とし、奴隷解放問題を主題にした作品。しかし、黒人が原始的で危険な本能を持つとし、KKK(白人至上主義結社、クー・クラックス・クラン)を賞賛するような描写があることから、人種差別を理由に上映禁止の動きがあったが映画は成功を収めた。スパイク・リー監督やエバ・デュバーネイ監督らの作品により、今日も公に論争されている。
■セックスシーンで物議
ラストタンゴ・イン・パリ」(ベルナルド・ベルトルッチ監督/1972)
ベルトルッチの名を世界に広め、公開当時、大きなセンセーションを巻き起こした一作。アカデミー賞にもノミネートされた。パリに住むアメリカ人のポール(マーロン・ブランド)がジャンヌ(マリア・シュナイダー)と出会い、お互いのことを知らずに定期的に会い、性交する。フランスでは18歳未満は鑑賞禁止、イタリアでは1972年から1986年まで上映禁止されていた。後年、劇中のレイプシーンが当時19歳だったシュナイダーの合意なしに撮影され、ブランドもベルトルッチ監督も、バターを潤滑油として使うことをシュナイダーに伝えなかったと明かされ、波紋を広げた。
「愛のコリーダ」
「愛のコリーダ」
(C)大島渚プロダクション
■芸術か、わいせつか
愛のコリーダ」(大島渚監督/1976)
昭和11年に起きた「阿部定事件」を題材に、大島渚監督が男女の愛の極致を描いた日仏合作の問題作。料亭住み込み女中の定は、店の主人の吉蔵とひかれあい、情事を重ねる仲となる。やがてその関係が露呈したことで2人は駆け落ちし、さらなる愛欲の世界におぼれていく。無修正の性愛シーンという芸術的な選択が、日本を含むいくつかの国に衝撃を与えた。台本や撮影時に撮影した写真を掲載した書籍が、わいせつ物頒布罪として起訴され裁判が開かれるが、大島監督は表現の自由を主張し3年の審理を経て無罪となった。
■飽食自殺
最後の晩餐」(マルコ・フェレーリ監督/1973)
生きることに絶望し、食欲と性欲の二大本能に殉じようした中年男性4人の登場人物(フィリップ・ノワレミシェル・ピッコリウーゴ・トニャッツィマルチェロ・マストロヤンニ)の過食自殺を描いた2時間で、ヌード、乱交、さらにはスカトロジー的なシーンが溢れている。カンヌ映画祭のフランスの候補作であり、消費社会を風刺しているが、すべての観客や批評家の好みに合うものではなかった。しかし、ピッコリは数年後「この映画は、形而上学的で官能的なファンタジーを観客に呼び起こしたが、それは彼らを動揺させ、怒らせた」とコメントを残している。
■拷問シーン
ソドムの市(1975)」(ピエル・パオロ・パゾリーニ監督/1975)
ナチズムに加担する4人のファシストが少年少女を集めて繰り広げる一大狂宴を描く。ファシストが権力をふるう共和国サロでは、4人の貴族がティーンエイジャーを誘拐し、豪華な宮殿に幽閉して欲望の対象としていた。資本主義社会の批判者であるマルキ・ド・サドの「ソドム百二十日」を脚色したもので、排泄物、レイプ、拷問、露骨な切断などのシーンが描かれている。イギリスでは2000年まで、ニュージーランドでは2001年まで上映禁止されていた。
■実際のカップルによるレイプシーン
アレックス」(ギャスパー・ノエ監督/2002)
パーティからの帰り道で、若い女性アレックスがレイプされる。それを知った彼女の婚約者はその復讐をしようと犯人を探し、彼女の元恋人はそんな彼を落ち着かせようと彼に同行する。当時私生活でもカップルだったモニカ・ベルッチバンサン・カッセルが共演。カンヌ映画祭での上映時は、控えめに言っても嵐のようなものだった。9分間のレイプと殺人という2つの耐え難いシークエンスが観客を混乱させた。イタリアやドイツでは18歳未満鑑賞禁止に、フランスでは警告付きで16歳未満が禁止で公開された。
「時計じかけのオレンジ」
「時計じかけのオレンジ」
写真:Album/アフロ
原作者のアンソニー・バージェス自身が“危険な本”と語った同名の小説を映像化。サディズム的に盲目的な恐怖を行使するギャングの若きリーダー、アレックスが投獄され、犯罪を抑制するために考案された実験のモルモットとなるまでの人生を描く。公開時には、過激すぎる性暴力と演出、特にそれが若者たちの娯楽として提示されていることが批判された。キューブリックの家族が嫌がらせを受け、イギリスでは上映規制となる論争となった。1999年にキューブリックが死去し、再び劇場で公開されるようになった。

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