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【コラム/細野真宏の試写室日記】「ファーストラヴ」。恋愛映画が流行る中、恋愛サスペンス映画はヒットするのか?

2021年2月12日 13:00

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「ファーストラヴ」2月11日公開
「ファーストラヴ」2月11日公開
(C)2021「ファーストラヴ」製作委員会

映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)(文/細野真宏)


新型コロナウイルスの影響で緊急事態宣言が出ている第3波の中では、他とは違う尖った映画がヒットしやすい傾向にあるようです。

第1波と第2波の時には、世の中の雰囲気と相まって「ホラー映画」の勢いがありましたが、すでに少し食傷気味な様子です。

そんな中、平時では興行収入10億円を目指す規模感の「花束みたいな恋をした」に勢いが出ています。

画像2(C)2021「花束みたいな恋をした」製作委員会

歴代興行収入1位で公開16週目の「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」を週末ランキングで抜き、実写映画が週末ランキング1位に返り咲いたこともPRポイントとして効いています。

公開2週目はさらに伸ばして公開10日間で興行収入7億7720万円と、余裕で10億円は突破可能な勢いです。

最終的には興行収入20億円規模も見えてきていて、2020年8月21日に公開された菅田将暉×小松菜奈の主演映画「」の22.7億円を超えるかどうかも注目ポイントになりえます。

」は、豪華キャスト陣に加えて、海外ロケなど、かなり気合いの入った作品でしたが、「花束みたいな恋をした」は低予算映画の部類に入るので、仮に「」を超えたら「異例の大ヒット」と言えるわけです。

花束みたいな恋をした」は、かなり良質な作品なのでヒットは当然ですが、今は“マスク越しの会話”が象徴的なように現実社会での人との接触が減り、心躍る機会が減る中、恋愛映画が流行りやすい傾向にあるように思えます。

画像3(C)2021「ファーストラヴ」製作委員会

さて、そんな中、「ファーストラヴ」という北川景子主演の「恋愛サスペンス映画」の場合はどうなるのか注目が集まります。

本作における私の注目点は、堤幸彦監督作品ということでした。

なぜなら堤幸彦監督作品は、私の中では、かなり当たり外れが多い印象だからです。

実際に直近の2015年以降の堤幸彦監督作品を見てみると以下のようになっています。

悼む人」(2015年)興行収入3.0億円
イニシエーション・ラブ」(2015年)興行収入13.2億円
天空の蜂」(2015年)興行収入10.8億円
真田十勇士」(2016年)興行収入6億800万円
RANMARU 神の舌を持つ男」(2016年)興行収入1億円
人魚の眠る家」(2018年)興行収入10.0億円
十二人の死にたい子どもたち」(2019年)興行収入15.5億円
望み」 2020年10月9日公開で現時点では、最終的な細かい興行収入までは不明。

このように興行収入の面から、当たり(興行収入10億円突破)は4本、外れは4本、といった感じで、半々となっています。

また、個人的には堤幸彦監督作品は、作品の出来も、当たり外れが顕著な印象があります。

その点から言うと、本作「ファーストラヴ」の出来は「当たり」のほうでした!

画像4(C)2021「ファーストラヴ」製作委員会

シンプルに見せながら意外と深い作品なのですが、「花束みたいな恋をした」と同様に登場人物がそれほど多くない点が功を奏しています。

まず、冒頭は殺人事件から始まりますが、一見すると簡単そうな話でも、北川景子演じる公認心理師が「本の題材」として取材してみると、意外と深そうな「仮説」が見えてきます。

中村倫也が担当弁護士を務め、北川景子演じる公認心理師と共に真相を探っていきます。

画像5(C)2021「ファーストラヴ」製作委員会

とは言え、芳根京子が演じる「父親殺しの容疑者」である女子大生は一癖も二癖もあるので、何が本当で何が嘘かは分かりにくい面があります。

ただ、登場人物を多くしていない分、焦点は絞りやすくなっていて、混乱することなく巧みに深い世界へと誘ってくれます。

そして、容疑者だけでなく、登場人物たちが、それぞれ過去や現在と対峙したりと、様々な面で深みが増していきます。

ややシリアスな作品ですが「サスペンス映画」としては良質な出来なので自然に入り込めると思います。

画像6(C)2021「ファーストラヴ」製作委員会

本作は、2018年上半期に直木賞を受賞した原作「ファーストラヴ」がベースとなっています。

直木賞受賞作は、映画を含めて映像化される確率が高いのですが、(基本)1年に2作品も選ばれるので、正直、当たり、外れが大きく分かれる印象です。

ただ、本作については、堤幸彦監督との相性も良かったようで、キャスト陣も含め、あらゆる要素が上手く作用していました。

ちなみに、本作のキャストでは北川景子×中村倫也は裏切らない安定感がありますが、芳根京子が憑依型の難役を見事にこなしていました。

画像7(C)2021「ファーストラヴ」製作委員会

芳根京子と憑依型の作品だと、映画業界での最強コンビである東宝×フジテレビの「累 かさね」(2018年)という作品がありました。あの時も悪くはなかったのですが、作品自体が非現実的すぎたりパワーが弱く興行収入5.3億円という残念な結果に終わりました。

その意味で言うと、本作の芳根京子は役柄の相性も良く、これまでで一番良い演技をしています!

本作のメインはサスペンス映画なので、指標になりそうなデータが見つかりにくいのですが、強いて言えば、東野圭吾原作「人魚の眠る家」(2018年)の興行収入10.0億円でしょうか。

画像8(C)2018「人魚の眠る家」 製作委員会

ただ、この時は、フジテレビが製作委員会に入っていましたし、新型コロナウイルスの影響もない“フルスイングの状態”でした。

私は「人魚の眠る家」よりも「ファーストラヴ」のほうが良く出来ていると思いますが、キー局の強力なサポートがないのは意外と厳しいのかもしれません。

もちろん興行収入10億円は目指したいものの、「緊急事態宣言」の影響が少なからずある中では、まずは興行収入7億円前後には到達してほしいですし、とりあえず8億円に届けば合格点だと想定します。

やはりカギになるのは、尖った良質なサスペンス映画として「見て良かった」という「口コミ」がどれだけ多く出るのかにかかっていると思います。

私は、多くの謎がスルリと解けていく分かりやすさも含めて、そういう声は増えるのでは、と予想します。

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