【映画メシ!】朝から晩までまったりと――渋谷ユーロスペースがプッシュする美食スポット
2018年11月20日 10:00

[映画.com ニュース] 素敵な映画には、素敵なカロリーを――映画.comが美味しい食べ物を求めてさすらう「映画メシ!」第4弾をお届けします! 今回、美味しそうな匂いを嗅ぎつけて訪れたのは、東京・渋谷区。世界のアート系映画の製作・配給、インディーズ作品の拠点となってきた映画館「ユーロスペース」の近くには、朝から晩までまったりとした時間が過ごせるだけでなく“グルメ人”のハートを鷲づかみにする名店がありました!
「映画メシ!」第4弾を紹介してくれた「ユーロスペース」は、1982年、桜丘町・東武富士ビルに開館。「ボーイ・ミーツ・ガール(1983)」「汚れた血」「ポンヌフの恋人」のレオス・カラックス監督、「そして人生はつづく」「オリーブの林をぬけて」「桜桃の味」のアッバス・キアロスタミ監督の存在を世に知らしめ、原一男監督作「ゆきゆきて、神軍」といった話題作を上映し、1980年代“ミニシアターブーム”をけん引。06年には、円山町・KINOHAUSビル(旧称:Q-AXビル)へと移転し、目の肥えたシネフィルたちが思わずうなる作品を上映し続けています。

話をうかがったのは、興行、編成、運営、配給など、多岐にわたる業務を担当する岡崎真紀子さん。大学に通っていた頃「美術系の仕事がしたい」と考え、卒業後は表参道にあったアートショップ「NADiff」(現在は恵比寿で「NADiff a/p/a/r/t」として営業中)で働かれていたようなのですが「なんとなく美術系の仕事、向いていないのかなと思ってしまって(笑)。でも、分野としてはそう遠くないところで働きたいなと考えていました」とのこと。「当時『NADiff』では、ユーロスペースが出していたアートドキュメンタリーシリーズのビデオを扱っていたんですね。だから、ユーロスペースは映画だけではなく、美術にも興味を抱けそうな場所としていいなと思っていました」と現在までの経緯を明かしてくれました。
岡崎さん「ユーロスペースに入社する際、印象的だったことがあったんです。ラース・フォン・トリアー監督作『奇跡の海』、ツァイ・ミンリャン監督作『河(1997)』、それとアキ・カウリスマキ監督作の『浮き雲』――どれもユーロスペース配給の作品だったんですが、当時はそのことを知らずに見ていました。ちょっと驚いた記憶があります」

「映画×食」から想起するのは、食事シーンの“効果的なインサート”。アキ・カウリスマキ監督が「ル・アーヴルの靴みがき」に続き“難民3部作”(“港町3部作”から改称)の2作目として製作した「希望のかなた」で注目していたのは、難民申請を待つ人々が集う施設での一場面。「色々な国からやってきた女性が集まって調理をしているんですが、そこに登場する煮込み料理が珍しく美味しそう。カウリスマキ作品は、いつも安そうな食べ物やお酒を飲んでいるイメージがあったんですが、初めて美味しそうなものが出てきたと思ったんですよね(笑)」と語りつつ、昨年プロモーションのために来日したシリア出身の主演・シェルワン・ハジの“言葉”を振り返ってくれました。

岡崎さん「『難民や移民にとって、一緒に煙草を吸う、食事を共にするというのは、その土地に馴染んでいくうえで重要なこと』とおっしゃられていたんです。つまりカウリスマキ監督は、それらがコミュニケーションの一部として機能しているということを自覚し、食事シーンを入れ込んでいるのではないかと感じたんです。“効果的”というくくりで言えば『アデル、ブルーは熱い色』は、アデルとエマが互いの家を訪れて食事をとることで、家庭環境の格差が表現されていますよね。先日、釜山国際映画祭へ行ったのですが、そこで第19回東京フィルメックスにも出品されているタイ映画『マンタレイ』を見たんです。冒頭『ロヒンギャ難民のために』を意味するテロップも出るので、明らかに難民がテーマの1つ。小さな漁村の漁師さん、彼と暮し始めた発話障害のある難民とおぼしき方が、言葉を交わさずとも心を通わせていき、やがて1匹の魚を揚げて一緒に食べるシーンがあります。何気ない場面なのに、とても美味しそうに見えるのが不思議でしたし、やはり食事は“分け合うもの”ということがわかりましたね」

岡崎さんに連れて行ってもらったのは、京王井の頭線・神泉駅から徒歩2分に店をかまえる「カフェ ブリュ(CAFE BLEU)」。格子状のガラス窓がおしゃれな同店は、午前10時にオープン(休日:正午~)すると、朝(10~11時30分)、昼(11時30分~14時)、夕方(14~17時)、ディナー(17時~)と時間帯によって異なるメニューを堪能できる“通し営業”スタイル。配給会社、地方から訪れた劇場の方々との打ち合わせに利用することがある岡崎さんは「店内が落ち着いた雰囲気なので、とても話しやすいんですよ。何を頼んでも失敗したことがないですし、ワインもめちゃくちゃ美味しいんです。お財布に優しい感じで利用することもできますし、『今日は奮発しちゃおう!』という時もありますね」とすっかり魅了されてしまったようです。

最初におすすめしていただいたのは、「コンニャクと胡桃のゴルゴンゾーラ」(800円)。昔ながらの製法で作られている長野県泰阜村産のコンニャクと胡桃をソテーし、バター&ゴルゴンゾーラであえ、隠し味には醤油を使用した“ツウ”な逸品――コンニャクの臭みが全くない! 「初めての味じゃないですか? コンニャクとは思えないですよね」(岡崎さん)という感想には、激しく同意です。まさに“未知(の美食)との遭遇”でした…。続いてテーブルに運ばれてきたのは、長野県で飼育されている千代幻豚を使用した「サルシッチャ」(1500円)と高知県産の無農薬生姜を使った「肉巻き生姜のフライ」(700円)。マッシュポテトの上に鎮座した「サルシッチャ」にナイフで切れ込みを入れればあふれんばかりの肉汁、ジンジャーの香りがフワッと薫る「肉巻き生姜のフライ」を口に運んだ瞬間、密かに胸の内で思っていたのは「あぁ、ワイン飲みたい…」。欲望、グッとこらえました。

「映画メシ!」へのご協力を求めた際「あまり訪れる機会の少ない場所に行ってほしい」という思いを打ち明けてくれた岡崎さん。「カフェ ブリュ(CAFE BLEU)」以外にプッシュしてくれたお店は、すぐにでも行ってみたくなるものばかりです。
岡崎さん「中華料理屋『月世界(ゲッセカイ)』は、いつ行っても混んでいます。『こんなところに、こんなお店があるんだ!』と“町歩きの面白さ”を感じられる場所にあるんです。スパイス、ジャンの使い方が面白くて、私の好きなものが食べられる(笑)。台湾料理の『麗郷(レイキョウ)』は、トークショーの打ち上げに使うこともあります。とあるミュージシャンの方からおすすめしてもらったんですが、『千と千尋の神隠し』にも出てくる肉圓(バーワン)が本当に美味しいんです。ユーロスペースのすぐ近くで言えば、居酒屋の『肴とり』。ランチをやっているんですが、安くて美味しくてボリューミー。配給さんや宣伝担当の方々が、試写会の合間に行かれることもありますね」

「私、クラフトビールが大好きなんですよ」と話してくれた岡崎さん。渋谷にも大好きなお店があるようです。
岡崎さん「まずは『ミッケラー トウキョウ』。元々ミッケラーのビールの大ファンなんです。数年前にアップリンク渋谷付近にお店があったんですが、突然閉店してしまって。とても残念だなと思っていたんですが、今度はユーロスペースの近くにオープンしてくれたので狂喜乱舞でした(笑)。開店初日に飲みに行った覚えがありますよ! 『グッドビアファウセッツ』は店内が広めなので、1人で行くこともあれば、土日のイベント終わり、そのまま皆で軽く1杯という感じで利用しやすいんです。普通の居酒屋さんで飲むと、大体1杯では終わりませんよね(笑)。クラフトビールを中心に扱っているお店は、サクッと飲んで帰ることもできるので、人を誘いやすいんです」
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