第30回東京国際映画祭、グランプリは近未来SF「グレイン」! 邦画が3年ぶりに観客賞受賞
2017年11月3日 18:31
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[映画.com ニュース]第30回東京国際映画祭のクロージングセレモニーが11月3日、東京・EXシアター六本木で行われ、各賞が発表された。今年の東京グランプリは、トルコ・ドイツ・フランス・スウェーデン・カタール合作「グレイン」が受賞し、メガホンをとったセミフ・カプランオール監督が1歩1歩、踏みしめるようにステージに上がった。
同作は混沌とした近未来のディストピアを舞台に、モノクロ映像で紡いだ渾身の一作。トミー・リー・ジョーンズ審査委員長からトロフィー、小池百合子東京都知事から麒麟像を手渡されたトルコの巨匠・カプランオール監督は、「この映画は、長い旅路を経てここに来ました。製作に5年。ここから世界に向かって、広がっていく出発点になると信じています」と破顔した。
トロフィーを両手で大事そうに抱えながら、「製作に携わってくれた友人、チーム、俳優のジャン=マルク・バールさんにお礼申しあげたい。今、とても興奮しています」と、興奮をはらませるも努めて穏やかな口調で語る。そして「私たち(人類)は世界に害を与えています。生活する全ての瞬間が、その理由になってしまいます。過剰な消費、資本主義。人々や世界に価値を見出すことが必要だと思います。私たちはどこから来て、どこに向かっていくかを理解しなければなりません」と強く訴え、「私は監督として、大地、種子、創造性に敬意を払いながら、作品をつくってまいりました。この結果は、神が導いてくださったと思っています」と戴冠の喜びを噛みしめた。
コンペティション部門には88の国と地域から1538作品(過去最多)がエントリーし、15作品が正式出品。ジョーンズ審査委員長は「最良の映画祭というものは、映画製作者や観客を、厳しい商業的需要から開放すべきもの」と信念を明かし、「カークラッシュ、レンズに銃口を向けたり、都市が爆発することや、危機に陥っている女性、思春期のスーパーヒーローの登場も必要としません」と話す。時折り笑顔を交えながら「とはいえ、そういったことが悪いと言うわけではない。ただ、我々は必須としていないだけです」「私たち映画製作者は、皆さんの時間を無駄にするために生まれてきたわけではない。よりよいものにするために生まれてきました。皆さんに謙虚な心と希望を持って仕える者だと、審査員を代表して申し上げます」と、観客に真摯にメッセージを送っていた。
また観客賞に輝いたのは、松岡茉優主演、大九明子監督作「勝手にふるえてろ」。宮沢りえ主演「紙の月」以来、3年ぶりに日本映画が同賞を射止めた。大九監督は発表の瞬間に「わー!」と大声をあげ、「小さな組で、短期集中の現場で撮影し仕上げた作品。ノミネート自体が夢のようで、楽しい1週間を過ごさせていただきました」と驚きの面持ちだ。それでも「投票してくださった1人1人にのお客さんに感謝したいです。皆さまのお力で映画を続けられたと深く実感していますし、映画にしがみついてきてよかったです」と感謝を述べた。
さらに最優秀監督賞は、ロヒンギャ難民の現実を描いた「アケラット ロヒンギャの祈り」のエドモンド・ヨウ監督の手に。「映画を作っていると、1人になってしまったと思うことがありますが、こうした映画祭で世界各国の監督と交流すると、映画人はひとつのファミリーなのだと思う。ロヒンギャのみなさんは本当に過酷な運命を背負っています。この映画を見て感じ取って欲しいですし、世界は平和にならないといけないと、強く感じます」と涙を拭う姿に、観客は万雷の拍手を送った。アジアの未来部門では、ミャンマーから来日した家族の試練を描いた藤元明緒監督作「僕の帰る場所」が2冠を達成。客席にはスタッフたちの歓喜の輪が広がり、藤元監督は「(キャストの)彼らが“映画を作る“ことを超え、彼らの生き様を精一杯描けたと思っています」と声を震わせた。
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