紙の月
劇場公開日:2014年11月15日
解説
「八日目の蝉」や直木賞受賞作「対岸の彼女」など多数の作品で人気を誇る作家・角田光代のベストセラーで、テレビドラマ化もされた「紙の月」を、「桐島、部活やめるってよ」の吉田大八監督が映画化。宮沢りえが7年ぶりに映画主演を務め、年下の恋人のため顧客の金を横領してしまう銀行員の女性を演じた。バブル崩壊直後の1994年。夫と2人で暮らす主婦・梅澤梨花は、銀行の契約社員として外回りの仕事に従事し、その丁寧な仕事ぶりで周囲にも評価されていた。一見すると何不自由ない生活を送っているように見えた梨花だが、自分への関心が薄い夫との関係にむなしさを感じていた。そんなある日、年下の大学生・光太と出会った梨花は、光太と過ごすうちに顧客の預金に手をつけてしまう。最初は1万円を借りただけのつもりだったが、次第にその行為はエスカレートしていき……。2014年・第27回東京国際映画祭のコンペティション部門に出品され、最優秀女優賞と観客賞を受賞。第38回日本アカデミー賞でも最優秀女優賞を受賞した。
2014年製作/126分/PG12/日本
配給:松竹
スタッフ・キャスト
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ネタバレ
ガラスを割った場面では飛び降り自殺か!?と思ったけれど、なんと飛び降りての逃亡にはありえないと頭を振る。
見た感じ2階のようだがそこからコンクリート床にハイヒールのまま無事飛び降りることなどほぼ不可能。(その無理さが分かっていたからか飛び降り場面はカットしている)
なぜなら子供の頃深い雪の上に2階から飛び降りたことがあり、ショックを雪で吸収されたとはいえ膝にあごをしこたまぶつけしばらく悶絶していたから。
それに、横領発覚しての逃亡となれば即警察に通報するだろうし、全金融関係に連絡で預金凍結。それにクレカ使用停止とあっては金銭的に万事休すのはず。
とても海外逃亡して生き抜く資金も生活力もあるとは思えないので、詰めの最後でファンタジーとなってしまったのはどうにも悔やまれる。
2007-4
一線を超えた人とその手前で踏み止まる人。滅びの美学はかくも官能的。「一緒に来ますか?」
2022年10月7日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
派遣社員として銀行で働く平凡な主婦・宮沢りえが、ふとしたきっかけで不倫と横領を始め、深みに嵌り破滅していく物語。ありふれた題材だが、場面に応じて映像表現と言語表現を巧みに使い分ける手法は斬新である。
主人公が不倫を決意する場面は映像表現である。主人公は客の孫である若い男と駅で再会する。隣り合ったホームで見つめ合う二人。主人公側のホームに電車が止まり走り去っていく。次の瞬間、若い男のいるホームの階段を下りてくる主人公の脚が映し出される。その足取りは悲壮ではなく期待感が垣間見える。階段を下りることは、不倫という修羅の世界に堕ちていくことを暗示している。台詞無しの、表情、仕草だけで主人公の揺れ動く心理を表現する宮沢りえの演技力が秀逸である。
ラスト近くの、横領が発覚した主人公の職場からの逃走場面も映像表現。主人公は窓ガラスを割って屋外に脱出する。ガラスは既存社会の壁の象徴。ガラスを割ることは、既存社会のしがらみ、固定観念から主人公が解放されることを意味する。疾走時の主人公の爽やかな表情に自己解放の歓びが凝縮されている。
一方、銀行の権化のように厳格な先輩行員・小林聡美、若さと美貌の中に小悪魔が潜む同僚行員・大島優子と主人公との会話は、洗練された本音の台詞のぶつかり合いであり、三人の女性の生々しさに魅せられる。言語表現の妙である。
よく判らない、期待外れ。私が本作を推薦した人達からの感想である。再鑑賞してその理由を考えてみた。敢えて言語表現に頼って鑑賞してみると、本作は説明不足で意味不明な作品に成り下ってしまう。映像表現の理解度、即ち鑑賞スキルが作品の評価を左右している。それでは、観る側の誤解がないように、全編、懇切丁寧に言語表現を盛り込んだ作品が最良かというとそうではない。
映像表現は映画の醍醐味である。作り手に要求するばかりではなく、我々観る側も努力する必要がある。鑑賞スキルを磨いて映像表現に挑んでいきたい。
幸せになるほどどん底に突き進んでいく。見ていて心臓をキュッとされる感じがずっとつきまとう展開。
これが「ありがち」な世界というのは言い過ぎだが、誰しもこうなる可能性はあるのでは、と感じた。
刹那的な幸せを貪って後々ひどい目に遭うという意味では飲酒と二日酔いも同じ構造である。