平成という時代は30年といった規模だったので、平成元年生まれの2人が10代で出会い令和元年では30代ということになります。
これまでの多くの恋愛映画では、ひと夏の経験など、ごくごく短い期間が対象だったり、10年だったりしたわけですが、恋愛模様としては、20年くらいの大きなスパンの方が面白いのかもしれませんね。
その意味で、特に日本では「時代とともに駆け抜けるラブストーリー」もアリだと思います。
ただ、この発想は「弥生、三月 君を愛した30年」とも重なり、もし新型コロナ騒動がなければ同じ東宝で連続公開状態だったので、結果的には公開時期がズレて良かったのかもしれません。
まず、本作は邦画にしては豪華な方で、俳優陣も菅田将暉、小松菜奈、榮倉奈々、成田凌、二階堂ふみ、斎藤工、山本美月、高杉真宙など錚々たるメンバーです。
しかもロケーションも北海道を拠点に、東京や沖縄、そしてシンガポールまで広がっていきます。
さらに、その豪華さに応えるように、瀬々敬久監督の演出も良く、ほぼ言うことのない完成度でした。(気になった2点は、最後に書いておきます)
一つ一つのエピソードは、どこかで見たことのあるシーンも少なくないですが、軸がしっかりしているので自然と物語に入り込んでいる自分を感じます。
新型コロナ騒動で、令和という時代をそれほど実感できずにいる私たちですが、改めて時代の軸を体感する意味でも、本作の意味は大きいと思います。
要所要所で中島みゆきが作った歌が流れ、少なくとも、私がこれまでに見た「歌をモチーフとした邦画」では、本作が一番出来が良かったです。
マイナス要素があるとしたら、以下の2点でしょうか。
1.最初の出会いの自転車が飛ぶところは良いとしても、あれだけ壮大に転べば周りの人が(親切な人の多い日本だと)もっと駆け寄ってくるはず、という点です。
2.ラストの小松菜奈が扮する葵の行動は、「情報の面で必然性が欠けている」ような気がします。(本作に限らず、なぜか携帯電話というツールが突如、物語から消え去るのは、王道的な恋愛映画の設定には厳しい時代なのかもしれませんね…)
細かい点ですが、最初と最後は一番力を入れてほしいところなので★4としますが、本作は、きっと「良い映画を見た」という気持ちになれる作品だと思います。