犬ヶ島

劇場公開日:

解説

「グランド・ブダペスト・ホテル」のウェス・アンダーソン監督が日本を舞台に、「犬インフルエンザ」の蔓延によって離島に隔離された愛犬を探す少年と犬たちが繰り広げる冒険を描いたストップモーションアニメ。近未来の日本。メガ崎市で犬インフルエンザが大流行し、犬たちはゴミ処理場の島「犬ヶ島」に隔離されることに。12歳の少年・小林アタリは愛犬スポッツを捜し出すため、たった1人で小型機を盗んで犬ヶ島へと向かう。声優陣にはビル・マーレイ、エドワード・ノートンらアンダーソン監督作品の常連俳優のほか、スカーレット・ヨハンソン、グレタ・ガーウィグ、オノ・ヨーコら多彩な豪華メンバーが集結。日本からも、「RADWIMPS」の野田洋次郎や夏木マリらが参加。第68回ベルリン国際映画祭のオープニング作品として上映され、コンペティション部門で監督賞(銀熊賞)を受賞した。

2018年製作/101分/G/アメリカ
原題または英題:Isle of Dogs
配給:20世紀フォックス映画
劇場公開日:2018年5月25日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第91回 アカデミー賞(2019年)

ノミネート

作曲賞 アレクサンドル・デスプラ
長編アニメーション賞  

第76回 ゴールデングローブ賞(2019年)

ノミネート

最優秀作曲賞 アレクサンドル・デスプラ
最優秀長編アニメーション映画賞  

第68回 ベルリン国際映画祭(2018年)

受賞

最優秀監督賞(銀熊賞) ウェス・アンダーソン

出品

コンペティション部門 出品作品 ウェス・アンダーソン
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映画レビュー

4.0美しい構図の連続

2018年7月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

むちゃくちゃ面白い映画だ。皮肉が効きまくっていて日本映画への愛あるオマージュにあふれていて、それでいて圧倒的な独創性がある。

この作品に対して日本の侮辱だと言う人が一部にはいるらしいが、とんでもない。日本文化が好きでよく調べていないとこういうカリカチュアはできない。

ウェス・アンダーソン監督のストップモーション作品は、「ファンタスティック Mr. Fox」があるが日本ではあまり評判にならなかった。アメリカでは多くのフォロワーを生んだ作品だったので日本でも再評価されてほしい。

本作は、ストップモーションの強みである立体感や奥行きの表現を効果的に用いている。奇想天外な世界がただの絵空事でなく、本当に存在しているかのような実在感を見事に作り出している。
構図も見事に決まっていて、監督の美学が随所に感じられるし、キャラクターもかわいい。アンダーソン作品の中でもトップクラスの作品ではないだろうか。

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杉本穂高

4.0ウェス・アンダーソン館長の手作り博物館。

2018年6月30日
PCから投稿

楽しい

正直、予告編を観た時は不安しかなかったのだが、本編を観たらほとんどすべてが杞憂に終わった。本当に細部まで丁寧に作り込まれた極上の箱庭に、エキゾチックな「日本」がこれでもかと詰め込まれている。カクカクとした動きも、名優たちによるローテンションなセリフ回しもすべてが味わいであり、これほど精巧で良質な趣味の世界を見せられると、個人所有の博物館で館長直々にもてなされ、案内してもらっているような気持になる。

ただ、ウェス・アンダーソンが日本に愛着をもってくれていることは疑うべくもないが、そのアンダーソンをもってしてもなんでもないところにキノコ雲を出してしまうのか。悪意はないだろうが軽率だなあとは思う。『インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国』の原爆実験のシーンでも似た歯がゆさを感じたが、いつかこの溝が埋まればいいなと思う。

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共感した! 13件)
村山章

4.0犬たちと少年の冒険話

Eさん
2025年1月5日
iPhoneアプリから投稿

ウェス・アンダーソン作品の中では
群を抜いて観やすいと思います!

狙ってるのか本気なのかちょっとわからない
エセ日本表現が気になりますが、基本
シンプルで可愛らしい犬達と少年のお話。

テンポよくストーリーが進むので他作品のように
頭を捻らないと意味がわからないシーンが少なく、
内容もわかりやすいです。

色使いが普段のポップさと日本を意識した
ニュアンスを含んでいて雰囲気ある映画でした。

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E

3.5独特の美意識、そして日本的なもの

2024年12月26日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル、映画館

ストーリーは、あって無いようなものなので、「あー面白かった」とはならない。でも、考えさせられたことがある。確実にこの映画の中にある日本は、今の日本には無い世界だ。じゃあどこの国なの?という話になった時、確実に日本以外のどこでもない。すべて日本由来のもの、文化に彩られて形作られている。

たとえば、太平洋戦争終結後の時代に生きた人の価値観からすれば、こんにちの日本を想像できただろうか。または、彼らが現代によみがえったら、ここをどこだと思うだろうか。欧米的価値観に侵食され、全体主義から個人主義に。家父長制度はすたれ、結婚や家族形成も崩壊しつつある。

翻って、10年後、50年後の日本がどうなっているかを考えた時に、今の価値観すらも失われ、中国やアジア諸国の文化に侵食されている姿を思い浮かべるのは必然だろう。

さて、話を戻すと、この映画、よその国から見た時に日本的価値観や美意識、日本人の民族性などが実に細かく描きこまれている。妙な日本語や、サムライゲイシャなんかは出てこないし、「それは日本じゃない」というものも出てこない。

映画の中では犬は英語をしゃべり、日本人は日本語をしゃべる。犬には知性があり、人間のほうがむしろ愚かしい価値観にとらわれ問題だらけに映る。ニヒリズムに陥った犬たちは、人間の都合でいいように操られ、捨てられる。

日本人以外が見れば、この映画は立派なファンタジーであり、おとぎ話であり、優れたストップモーションアニメだ。もともと絵画的アプローチの絵づくりをしていた監督の、こだわりが細部にまで宿った真骨頂で、キャラクターの動きも独特の間をもたせていることで話が暗くならない。かならずフィックスの背景にキャラクターが移動するという法則もまるで『ピタゴラスイッチ』を見ている気分になる。そこに加えて、犬というキャラクターを得たことで、話にダイナミズムが出た。おそらく高い評価を受けるに違いない。

しかし、我々日本人にとってこの映画は、すでに失われつつある「日本的なもの」誇るべき日本の文化の宝庫なのだ。そんな映画を、外国人に撮られてしまったことを、日本の映画人は恥じるべきだろう。KIRIYAの『GOEMON』MIIKEの『無限の住人』の失敗をもう二度と繰り返してほしくはない。

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うそつきかもめ