パトリオット・デイ : 特集
2013年の悲劇「ボストンマラソン爆弾テロ」──
なぜ犯人を“たった102時間”で逮捕できたのか?
手に汗握るリアリティで今明かす、この信じられない《奇跡の連鎖》の実話
2013年4月15日、アメリカ独立戦争開戦記念日=パトリオット・デイに開催されたボストンマラソンを襲った爆破テロ事件がついに映画化。マーク・ウォールバーグ、ケビン・ベーコン、ジョン・グッドマン、J・K・シモンズ、ミシェル・モナハンら実力派キャスト集結で描かれる「パトリオット・デイ」(6月9日公開)が、圧倒的なスリルとリアリティで、その裏側にあった「奇跡の連鎖」を描く!
「犬猿の組織が協力」「“ひとつ”になった街」、そして「人質の勇気」
すべて実話──《小さな奇跡》の連鎖が《最大の奇跡》を生んだ
9・11アメリカ同時多発テロ以降、厳しい警備態勢が敷かれていたにも関わらず、13年4月15日、50万人の観衆でにぎわうボストンマラソンを襲った爆弾テロ事件が、ついに映画化された。「ローン・サバイバー」「バーニング・オーシャン」のピーター・バーグ監督とマーク・ウォールバーグの監督&主演コンビが三度タッグを組み、わずか102時間で容疑者を拘束したという「最大の奇跡」の裏にあった「小さな奇跡」の連鎖と、人々の心にもたらした「希望」までを描き切るのだ。
数々の映画でも描かれているが、一般的にFBIと地元警察の関係は決して良好とはいえない。大事件が起こればFBIが現場に乗り込み、地元警察から取り上げる形で事件捜査に移行するからだ。しかし、この事件では違った。テロを憎む真摯な思いが通じ合い、FBIの圧倒的な指揮能力と犯罪データベース、地元警察の土地勘と地道な捜査能力という互いの強みを持ち寄った完璧な態勢が実現したのだ。
事件発生から102時間で1000名を超える政府・州・地元の捜査官が投入されたが、生存者や家族、病院スタッフなど、市民ひとりひとりがなすべきことを果たしたヒーローだった。ボストンはアメリカで最も古い歴史を持つ街のひとつだが、地元愛の強さは全米屈指。外出禁止令にも市民は素直に応じたが、これは近年のアメリカにおいては異例の出来事。同じ思いで、街がひとつになったと言える。
ボストンから逃走を図っていた爆破犯の逮捕のきっかけとなったのも、実はひとりの市民の力だった。車を奪われ人質となっていた青年が、一瞬の隙を突いて逃げ出して通報したのだ。その模様を捉えた監視カメラ映像も残されているが、銃を持ったテロリストを前にいつ撃たれてもおかしくないという状況下で、勇気を振り絞って走り出したこともまた「奇跡」のひとつだ。
映画・ドラマの現場を超えた──“ここまでやっていたのか”
“絶対に公開されない”大事件捜査の《裏側》が今明かされる
克明に描かれる「奇跡」の数々に見る者の感情が揺さぶられるのは確実だが、本作が優れているのは、FBIと地元警察が知力と体力を駆使し、1歩また1歩とテロリストに迫っていく捜査の過程がスリルと興奮たっぷりに描かれることだ。壮絶なリアリティで観客を「現場」に放り込むことで評価を集めてきたピーター・バーグ監督作だけに、その臨場感、没入度はハイレベル。「こんなことまでやっていたのか!」とうならざるを得ないボストンマラソン爆弾テロ事件捜査の裏側が、ついに明らかになる。
最も驚くのは、この捜査方法だろう。あらゆる角度から検証を行うため、FBIは巨大な倉庫を用意。現場から膨大な証拠品を持ち込み、2度の爆破事件が発生した「通り」を完全再現してしまうのだ。日本では考えられない程のスケール感に、誰もが圧倒されてしまうはずだ。
分析対象とした「監視カメラ映像」の範囲が、ボストンの市街に広範囲に設置された「すべてのカメラ」だったことにも驚かされる。そして、犯人を見つけ出す突破口が、地元警官の土地勘だったというのがシビれる。「この角度で映っているなら、次はあの建物のカメラに映るはず」と言い当てていく!
テロ事件を前に、使命感に燃えた市民から捜査陣に寄せられた情報は、一瞬にしてFBIのサーバーがパンクする程の数万件にのぼる。その内容をつぶさに精査していく作業に、多くの捜査員たちが挑む姿も見てとれる。地元警官は病院を回って負傷者ひとりひとりに聞き込み捜査。その地道な姿にもアツくなる。
寄せられた情報から徐々に犯人に迫っていく捜査陣たち。パトカーやヘリコプターを総動員しての陸、海、空からのパトロールは、犯人が逃走中であることを伝える有力情報によって、一気に追跡モードへとシフト・チェンジする。大包囲網は、犯人を追い詰めることができるのか。手に汗握る。
捜査に投入されたのは、凶悪事件捜査に長けた警察官たちだけではなかった。追跡を逃れた犯人たちが紛れ込んだのは、平穏な住宅街。「銃は訓練でしか撃ったことがない」という者や、定年間近な老巡査部長らローカル署員が、爆薬と拳銃、自動小銃で武装したテロリストと壮絶な銃撃戦を繰り広げるのだ。
マーク・ウォールバーグ、ケビン・ベーコン、ジョン・グッドマンほか──
“奇跡の再現”に相応しい、映画ファンが認める名優がそろった
ドキドキハラハラのスリルと、エモーショナルな物語は、この名優たちがそろわなければ実現しなかったと言っても過言ではない。数々の名作・傑作で映画ファンを魅了してきた面々は、まさに安心して作品を鑑賞できる、納得の顔ぶれなのだ。
「トランスフォーマー」シリーズほかアクション超大作の印象で、肉体派イメージが強いウォールバーグだが、マーティン・スコセッシ監督の「ディパーテッド」でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされるほどの実力者。本作の地元警官役でも渾身の演技力を発揮する。
事件捜査の指揮をとるFBI捜査官をリアリティたっぷりに演じたのがベーコン。ドラマ「ザ・フォロイング」でのFBI捜査官がハマり役だっただけに、その説得力が圧巻だ。「激流」でゴールデングローブ賞ノミネート、「ブラック・スキャンダル」ほか近年の作品も、彼の出演で作品が締まった印象だ。
「アルゴ」「10 クローバーフィールド・レーン」「キングコング:髑髏島の巨神」など、近年ますますその存在感を強く印象付けているのが、このグッドマン。コーエン兄弟作「バートン・フィンク」でゴールデングローブ賞ノミネートも経験した名バイ・プレイヤーが、警視総監役を熱演。
「セッション」の教師フレッチャー役で映画ファンの心をわしづかみにし、アカデミー賞助演男優賞まで手にしたシモンズも、本作に出演。出演時間は少ないながらも、序盤からローカル署の印象的な巡査部長として登場し、終盤ではテロリストとの命を懸けた壮絶な銃撃戦に身を投じている。
ギレンホールが「ミッション:8ミニッツ」で絶賛し、クルーズが「ミッション:インポッシブル」シリーズで主人公の妻役として起用している実力派女優が、ウォールバーグ演じる警官の妻を好演。身を削る捜査で疲弊する夫を癒し、常に献身的に支えていく姿が、観客の心に残るのは確実だろう。