ノクターナル・アニマルズ : 特集
「メッセージ」A・アダムス×「ナイトクローラー」J・ギレンホール
“映画ファンを裏切らない”2人の演技が《無数の解釈》を増殖中
困惑!? ぼう然!? 「今秋大注目ミステリーの見方」を大解剖
「メッセージ」のエイミー・アダムスと「ナイトクローラー」のジェイク・ギレンホールが共演を果たした、トム・フォード監督第2作「ノクターナル・アニマルズ」が、11月3日に全国公開される。ベネチア国際映画祭、アカデミー賞、ゴールデングローブ賞で高く評価され、ラスト・シーンの解釈をめぐって激論が交わされている美しくも衝撃的なミステリー。あなたは、ぼう然とせずにいられるか?
“裏切らない”俳優たちと監督がそろい、そして名だたる映画賞が絶賛──
この時点で見たいと思ったあなたは、映画ファンとして“正しい”
「メッセージ」での名演も記憶に新しいエイミー・アダムスと、「ナイトクローラー」「サウスポー」ほか、数々の話題作の熱演で注目を集めるジェイク・ギレンホール。ふたりの実力派俳優が顔をそろえた、この秋大注目のミステリー映画が登場した。アートギャラリーのオーナーとして成功を収めたスーザン(アダムス)のもとに、20年前に離婚した作家志望の元夫エドワード(ギレンホール)から、彼が書いた小説が送られてくる。スーザンに捧げられたその小説が描く暴力的かつ衝撃的な内容に、彼女は徐々にのめり込んでいき……。本作「ノクターナル・アニマルズ」は、アダムスとギレンホールを筆頭に、共演陣、監督ほか、数々の“映画ファンを裏切らない”要素に満ちた至高の作品なのだ。
小説が意味するものはなにか。観客とともに深遠な謎に足を踏み入れていくスーザン役は、エイミー・アダムス。すでに5回のアカデミー賞ノミネートを経験しているほか、「ビッグ・アイズ」「アメリカン・ハッスル」で2度のゴールデングローブ賞に輝いている実力派だ。先に挙げた「メッセージ」や「マン・オブ・スティール」など、大作からドラマ作品まで、彼女の出演が「良作の証」ともなっていのだ。
「この人が出ているならこの作品は間違いない」という評価なら、アダムスよりもこのギレンホールが上だろう。“映画ファンを裏切らない”男としての信頼は抜群。「ブロークバック・マウンテン」に始まり、「ミッション:8ミニッツ」「プリズナーズ」「ナイトクローラー」などなど、映画好きの見応えたっぷりの良作を特に近年は連発しているのだ。本作では、スーザンの元夫エドワード役のほか、彼女が読み進める小説内の主人公トニー役として渾身の演技を披露する。
実力派俳優は主演のふたりだけではない。「ドリーム ホーム 99%を操る男たち」のマイケル・シャノン、「キック・アス」のアーロン・テイラー=ジョンソンが、小説内の登場人物として出演しているのだ。シャノンは本作でアカデミー賞助演男優賞にノミネート、テイラー=ジョンソンはゴールデングローブ賞助演男優賞を受賞。キャリア最高とも言える衝撃的な演技から目が離せない。スーザンの現在の夫役、アーミー・ハマーにも注目だ。
そして、見る者を美しき謎の世界へと誘う監督を務めたのは、トム・フォード。ダニエル・クレイグ扮するジェームズ・ボンドが愛用するスーツや、ハリウッドセレブが身にまとうドレスで知られる人気ブランドのカリスマ・デザイナーが、10年に日本公開されたコリン・ファース主演「シングルマン」で映画監督業に進出。大絶賛を受けた同作以来7年ぶり、待望の第2作となる。衣装や美術、建築、小道具など、画面の隅々にまで行き渡った美意識に息をのむはずだ。
数々の映画賞での圧倒的な評価が、本作の高い作品力を裏付けている。カンヌ、ベルリンと並ぶ世界3大映画祭のひとつ、ベネチア国際映画祭では見事に審査員グランプリを受賞。シャノンのアカデミー賞ノミネート、テイラー=ジョンソンのゴールデングローブ賞受賞に加え、英国アカデミー賞では9部門ノミネートに輝いている。まさに、世界が感嘆した傑作と言っていい。
これは愛なのか? 復しゅうなのか? 元夫から届いた小説は何を意味する?
ラストの解釈をめぐりマスコミも激論! あなたの解釈も教えて欲しい
20年の時を経て、元夫から送られてきた小説は何を意味するのか? そして、ラストの意味とは? この物語が復しゅうを描いたものなのか、それとも壮大な愛の物語なのかに、映画評論家、ライター等のマスコミ陣も含めて激論が繰り広げられている。いったいどのポイントに注意しておけば、ラストを見届けた際にぼう然としないで済むのか──これがそのヒントの数々だ。(※ネタバレなし)
これから何が起こるのか? その期待を、ある意味完全に破壊してしまうのが本作のオープニングだ。とあるライターは「まるでデビッド・リンチ作品のよう」と称したその内容に、ほとんどの者はど肝を抜かれる。ここ数年例がないほどの衝撃のはずだ。そこには、スーザンが抱える心のむなしさが映る。
ギャラリーのオーナーとして富と名声を手に入れたスーザンのもとに、20年前に別れた夫エドワードから、ある荷物が送られてくる。それは小説、そう、本作での重要なキーとなってくるのが、この作家志望だったエドワードの小説だ。「スーザンに捧ぐ」とあるが、それは彼女への変わらぬ愛なのか、それとも当てつけなのか?
スーザンがその小説を読み進めていくと、描かれる物語が映像としてスクリーンに登場する。暴力的、衝撃的なストーリーは、繊細で優しい気質の元夫からは想像もできないものとしてスーザンを驚かせるが、それは単なるフィクションなのだろうか? スーザンの元夫との思い出も映し出されるにつれ、見る者は小説に込められたメッセージ性も推察するようになるのだ。
小説を読み進めるスーザンの現実と、小説で描かれる事件──ふたつの物語のふたりの主人公の姿を観客は追っていくことになるが、それぞれの主人公が選ぶ「ある行動」の解釈についてが、見る者を惑わせる大きなポイントとなっている。ネタバレを避けるために詳細は伝えられないが、重要なのは、小説を送った元夫の思いが「愛」と「復しゅう」のどちらかであるということ。解釈は2択であると考えるのが自然かもしれない。
出演者たちの渾身の演技と、2作目とは思えないほどの監督の手腕によって生み出された圧倒的な作品力。マスコミ向け試写会での上映後には、ラストの意味、主人公たちの行動の意味をめぐり、評論家、ライター陣が口々に「自分の解釈はこうなんだけど……」と意見交換する姿が目撃されている。映画批評のプロも巻き込むほどの問題作をどう解釈するかに、あなたも挑んでほしい。
いったい何が起こるのか? 先の読めない展開に胸が騒ぐ──
映画ライター・よしひろまさみちも推す「今秋必見の至高ミステリー」
本作を見ることによって、どのような感情が揺さぶられるのか。映画ライターのよしひろまさみち氏が、この秋見るべきミステリー作の真価について述べた。