ブロークバック・マウンテン
劇場公開日 2006年3月4日
解説
「楽園をください」「グリーン・デスティニー」のアン・リー監督が描く愛の物語。1960年代初頭のアメリカ・ワイオミング。カウボーイのイニスとジャックは2人だけの厳しいキャンプ生活の中で愛し合うようになり、結婚後も密かに愛を貫いていく。「ブラザーズ・グリム」のヒース・レジャー、「デイ・アフター・トゥモロー」のジェイク・ギレンホールが共演。第78回アカデミー賞の監督賞、脚色賞、音楽賞の3部門を受賞。
2005年製作/134分/PG12/アメリカ
原題:Brokeback Mountain
配給:ワイズポリシー
スタッフ・キャスト
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2022年3月14日
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鑑賞方法:DVD/BD
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評価が高い作品と言うことで鑑賞。名前は聞いたことあるんですけど、全く事前知識はありませんでした。タイトルもただの山の名前だから、内容は全く想像つきませんね。
結論ですが、めちゃくちゃ面白かった!!
同性愛描写が出てきたのは面食らいましたが、そこが本作の肝でもあり、ラストに繋がる感動を生みますね。たまたまブロークバック・マウンテンで出会った二人の男が、最愛の親友として長い時を過ごす描写がとにかく美しくて、でも彼らを取り巻く社会情勢や家族環境はとても窮屈で…。
同性愛を描いた映画ではありますが、どちらかと言えば男同士の切れない友情を描いた作品のようにも思えます。本当に奥深い映画でした。素晴らしかった。
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ワイオミング州のブロークバック・マウンテンで、羊の放牧をするために季節限定で雇われたイニス(ヒース・レジャー)とジャック(ジェイク・ギレンホール)。厳しい冬山で生活していくうちに、二人の間には密かな愛が芽生え始めた。放牧の仕事が終わってからお互い結婚して家庭を持つが、その後も年に数回会って愛を育んでいた。
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公開当初、本作は「ゲイ・カウボーイ・ムービー」と揶揄されていたらしいですが、次第に内容が高く評価されるようになり、アメリカ国内外で記録的な興行収入を叩き出し、様々な世界的な賞も受賞しました。それだけ、作品としてのクオリティは素晴らしいものです。
本作の魅力は語りつくせませんが、ストーリーや撮影や役者陣の演技などなど、どこをとっても素晴らしいです。
ストーリーは二人の男の愛を20年という長いスパンで描くことと、20年の間に彼らを取り巻く環境が変わってしまったことですれ違いが生じていく様子を描いており、これが本当に素晴らしいですね。同性愛描写はありますが、これは異性間でも起こりえますし、恋愛関係でなくて友人関係でも似たようなことは起こりえます。そういう人間関係での普遍的な部分に落とし込んで鑑賞することもできるようになっていると私は感じました。
映像に関しては、とにかく序盤のブロークバック・マウンテンの自然描写が素晴らしい。実際の撮影はカナディアン・ロッキーで行われたらしいですが、あまりの自然の美しさと荘厳さに息を飲みます。遥か彼方までそびえる山々の映像を観ていると、自分の距離感が狂っていくのを感じます。アメリカのスケールのデカさを目の当たりにしました。
そして、映画好きとして語っておきたいのは役者の凄さですね。
本作のイニスを演じたヒース・レジャーは、後にアメリカでタイタニックに次ぐ全米2位の興行収入を叩き出すこととなるクリストファー・ノーラン監督の大傑作『ダークナイト』でジョーカーを演じた俳優です。『ダークナイト』の公開を待たずして薬物中毒により28歳の若さでこの世を去った彼が世界的に名が知れ渡るきっかけになった作品が、この『ブロークバック・マウンテン』なのです。
本作の撮影当時は20代前半であった彼が、わずかなメイクと表情筋の使い方と話し方だけで、20代から40代までのイニスを演じきった凄さは実際映画を鑑賞した方には伝わったと思います。ここまで素晴らしい役者さんが28歳という若さで亡くなってしまったのは本当に残念でなりません。『ダークナイト』のレビューでも同じことを書いていますが、できることなら彼の演技をもっと見ていたかったです。
相方であるジャックを演じたジェイク・ギレンホールも、数々の世界的な映画賞を受賞しており、現在進行形で第一線でバリバリ活躍している俳優さんです。ヒース・レジャーの演技に全く引けを取らない彼の演技も本当に見事で、ヒース・レジャーとジェイク・ギレンホールの二人が主演を務めたからこそ本作がここまでの大傑作になったと言っても過言ではないでしょう。
多くの人に観てほしい、本当に素晴らしい映画でした。オススメです!!
2021年12月26日
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鑑賞方法:VOD
ブロークバックの青空と大きな美しい雲と眩しい光が二人の出会いを祝福しているようだった。雲の形や空の色を様々に変化させながら二人を見守りその風景はいつも二人の心の中にあった。二人とも空を見上げながら山と水と木々に囲まれて共に過ごせる時だけが幸せで充実していた。
ヒース・レジャー、眼と涙が本当に美しい、不器用で真面目な男の20年間を髪型、目の下のそばかすやちょっとした皺などの変化、変わらない繊細さを素晴らしく演じた。イニスとジャックのそれぞれの妻、イニスの長女、ジャックの両親が二人のことをわかっている、わかっているけれどあえて言わない・・・も含めて良かった。見てみぬふり、という感覚はどこにでもあるんだな。言葉数が少ないから「またいつか」とあっさり別れてから、嗚咽して涙流してひどく苦しむイニス=ヒースに心が震えた。そして2回目鑑賞。シャツの最初(ジャックの部屋)と2番目(イニスのクローゼツト)で重ね方の違いに相手への思いを感じて胸が痛かった。不器用なイニスが話す前の口ごもりが愛おしくてたまらない。
同性愛とかゲイとかそういうジャンル分けはこの映画にそぐわないと思う。二人が出会う前のそれぞれの家族や周囲の考え方や貧しさや居場所の無さや孤独など色んなことが重なって、仕事やお金の為に携わった役割と季節と場所で偶然出会った若い二人。男同士で気楽、役割分担できて頼もしい、一緒に居てほっとする、子どもみたいにじゃれあえる、それだけ。それ以上でもそれ以下でもない。ヒース・レジャーに会えて嬉しかった。
2021年12月23日
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鑑賞方法:VOD
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アン・リー監督による2005年公開の米国映画。原作がE・アニー・ブルーの同名短編小説。脚色がラリー・マクマートリー(愛と追憶の日々原作者、製作総指揮も兼任)とダイアナ・オサナ。主演がヒース・レジャーとジェイク・ジレンホール。他、アン・ハサウエイ、ミシェル・ウイリアムズが出演。
恥ずかしながらバットマンのジョーカー役ヒース・レジャーの主演映画という情報のみで視聴して、内容にビックリ。正直、落ち着かない気持ちの悪さもあったが、何処か妙に引っかかるところも有り、2回見ることに。
成る程冷静に見ると、とても良く出来た映画である。ヒースのシャツを山に忘れてきたとのセリフが、後のジェイク宅での意外なかたちでの発見、更に最後にしっかりと生きて来るのが何とも上手い。そして年月を超える二人の純愛を感じさせられた。そもそも最初から、サイドミラーでヒースをジッと見つめるジェイクの姿も意味深。テントの中のいきなりの出来事は最初驚かされ、2度目も見たくないものを見せられた気分。とは言え、その後日2人で戯れ合う姿は、眩しい美しさが有る映像とも思えた。
ヒース・レジャーの妻ミシャル・ウイリアムズが、二人の熱い口づけシーンを目撃してしまったショックと悲しさには、思わず共感してしまった。彼女、なかなかの好演であった。彼女とのベッドシーンもヒースの嗜好を暗示なのか。実生活でも彼女、ヒースの子供産んだ後、映画の展開に似て婚約解消ということらしいのには驚かされた。
アン・ハサウエイはジェイクの妻役で、1982生まれだからこの時は22〜23歳か。会ったその日に車の中で胸も露わにいたすのが何とも魅力的。また、彼女の実父にジェイクが楯突いたシーンの彼女の反応も、チャーミングで可愛いらしかった。
ヒース・レジャーの演技はやはり流石。特に娘の結婚式に出席することを告げるシーンは、ジェイク一への盲目的恋情で家庭をぶち壊してきた人間がようやく親らしさを見せて、少し嬉しく思えた。
まあ、個人的には好みではなく感動にこそ結びつきにくいが、困難な愛を描くのが難しい時代の中、世間から白眼視される愛を長期間貫き通した二人の恋愛の喜び悲しみと美しさ醜さをしっかりと描き出した映画であった。
2021年12月16日
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鑑賞方法:VOD
ー 1963年、イニス(故、ヒース・レジャー)と、ジャック(ジェイク・ギレンホール)は、雇われ羊追いとして、一夏をブロークバックの山々で過ごす。
豊かなだが、厳しき自然の中、二人は徐々に打ち解け、家族の話をし、嵐の晩、テントでイニスはジャックの求めに応じる・・。ー
◆感想<Caution !内容に触れています。>
・彼らの行為は世間からは認められない年代が舞台。
元々、ゲイ気質のあったジャックと、幼き頃、父親のゲイのカウボーイに行った非道な行為を見た、イニスは性的嗜好が違っている。
だが、誰もいない、二人しかいない大自然が、彼らを奔放にさせたのだろう。
・一度は別れた二人は、夫々、家庭を持つ。
イニスは、婚約者のアルマ(ミシェル・ウィリアムズ:ご存じの通り、今作で出会ったヒース・レジャーと婚約し、娘をもうけている。)と結婚し、二人の娘の父親に。
ジャックも、ロデオ大会で知り合ったラリーン(アン・ハサウェイ)と結婚する。但し、彼は金持ちのラリーンの父親とは、長年そりが合わない・・。
- 時代的に、二人はノーマルな生活を送る事を決意したのだ。
だが、ある日、4年ぶりにイニスの元にジャックがやって来て・・。
建物の陰で激しく口づけを交わす二人の姿を見てしまったアルマの驚愕の表情。
演技派女優、ミシェル・ウィリアムズのこの後の演技には魅入られる。
愛する夫が、まさかの同性愛者だったことに苦悩する姿。-
・アルマは、イニスが自分より、ジャックを愛していると知り、性交を拒否し、離婚。
その後、彼女がイニスに詰め寄る時の言葉が印象的である。
”貴方は、いつも彼と魚釣りに行っていた。けれど、一度も魚を持ち帰らなかった・・。”
・ジャックも、家庭を持つも、満たされない生活を送っている。メキシコに行って、男漁りをしたり、そりの合わない尊大な態度を取るラリーンの父親に対する怒り。
- ここは、分かり易く、理解できる。保守的なラリーンの父親は、ジャックとは合わないよな。-
・ある日、イニスがジャックに出したハガキが”本人死亡”のサインと共に、送り返されてくる。
驚いたイニスに、冷静な態度でアルマは”タイヤが破裂して事故死した・・”と述べるが、画面上ででは、ジャックが3人の男から激しい暴行を受けているシーンが映される。
ー 彼は、殺されたのだろう・・。ラリーンの父親に。ー
・ジャックは、イニスに何度も”一所に農場を持とう”と誘っていた。イニスが、ジャックの両親を訪ねるシーンも印象的である。
父親は、ジャックの性癖を知っていたようであるが、母親はジャックの部屋を見てくれ、とイニスに話しかける。
飾り気のない部屋のクローゼットの掛かっていた、昔、ブロークバックマウンテンに置き忘れたと思っていたイニスの上着とその上に掛けられていたジャックがイニスに殴られた血の付いたシャツ。
- 名シーンだと思う。ジャックのイニスへの深い想いが一発で分かるからだ。イニスが愛おし気に、ジャックのシャツの残り香を嗅ぐ姿・・。ー
<人が人を深く愛するという事を、雄大な自然の風景を背景に描き出した前半と、市井の人として普通人として生きようとする二人の苦悩する姿の後半の対比も効果的に、見事に描き出した作品。
それにしても、ジェイク・ギレンホールもミシェル・ウィリアムズもアン・ハサウェイも今や、ハリウッドを代表するスターである。
後半の、哀愁を帯びたイニスを演じるヒース・レジャーの姿を見ると、彼の早逝が、残念でならない想いを抱いた作品でもある。>
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