Fukushima 50
劇場公開日 2020年3月6日
解説
2011年3月11日に発生した東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故で、未曾有の事態を防ごうと現場に留まり奮闘し続けた人々の知られざる姿を描いたヒューマンドラマ。2011年3月11日午後2時46分、マグニチュード9.0、最大震度7という日本の観測史上最大となる地震が起こり、太平洋沿岸に押し寄せた巨大津波に飲み込まれた福島第一原発は全電源を喪失する。このままでは原子炉の冷却装置が動かず、炉心溶融(メルトダウン)によって想像を絶する被害がもたらされることは明らかで、それを防ごうと、伊崎利夫をはじめとする現場作業員や所長の吉田昌郎らは奔走するが……。現場の最前線で指揮をとる伊崎に佐藤浩市、吉田所長に渡辺謙という日本映画界を代表する2人の俳優を筆頭に、吉岡秀隆、安田成美ら豪華俳優陣が結集。「沈まぬ太陽」「空母いぶき」などの大作を手がけてきた若松節朗監督がメガホンをとった。第44回日本アカデミー賞で最優秀監督賞や最優秀助演男優賞(渡辺謙)などを受賞した。
2020年製作/122分/G/日本
配給:松竹、KADOKAWA
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2020年3月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
この作品を鑑賞する際には、まず作り手がどのポジションから原発事故を描いているのかを確認する必要があるだろう。本作は徹底的に東日本大震災が起きてからの福島原発の現場にフォーカスしている。原発事故が起きる以前にどんな対応や予算が組まれていたのかなど、原子力政策全体を俯瞰して語るポジションを採用していないし、事故当時の官邸側にも立っていない。一本の映画で全てを語ることは不可能だ。だから、この映画は徹底して現場を見つめるという選択をしている。あの現場がどのような混乱の中で、誰がどのような決断を迫られたのか、混沌した状況がよく描かれている。組織のあり方やリーダーの指導力などについても考えさせられる作品だ。
これを観て改めて思うのは、原発が一度制御不能になれば、人間にコントロールするのは難しいのだと言うこと。コントロールできない力を使い続けることを良しとするのか、そういうことを訴えかける作品ではないか。
2020年3月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
原発問題は何ら収束していない。私が本作と向き合う時、自身が一体どのような感情へいざなわれるのか、恐ろしくさえあった。いちばん避けたいのは、何か安易な感動に涙して、そこで示された着地点に満足してしまうこと。そうなったならばもうおしまいだと思った。自分も。この映画も。ただ本作はそのようなものではなかったと思う。
9年前、TV中継を目にする私は、あそこに命がけの人々がいることを知りながら、頭でその意味を理解するのを避けていたように思う。本作は等身大の人間の行動や感情を突きつけ、同じ血の通った人々が身を投じていたことを改めて伝えてくれる。見ていて怖かったし、結果が分かっているのに震えた。もちろんこれは状況のほんの欠片に過ぎない。他にも様々な立場の方々がいらっしゃるし、本作についても様々な感想や指摘があるはず。我々は今後もできる限り「知りたい」と求め続けねばならない。そう強く感じさせる一作だった。
2022年7月30日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
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若松節朗監督による2020年製作の日本映画。
配給:松竹、KADOKAWA。
原作は未読だが、出演俳優は一流どころだけに、相当にガッカリさせられた。
3.11の原爆事故、あれが起きた原因、その事実を捻じ曲げるために作られた映画なのかとも疑ってしまった。
まず、首相の描かれ方がアンフェアで、まるで首相のせいで事故が起きた、もしくは悪化したかの如き描かれ方であった。当たり前であるが、事故自体が起きたのは原発行政および東京電力の長年の安全性軽視に起因し、当時の首相は全く関係ない。映画でも少し描写されているが、事故が起きた時の東電本社首脳の無責任・無能ぶりを知れば、首相が現場責任者に会いに行ったり、東電本部に乗り込むことは、良く理解できるところ。原作に起因するのかも知れないが、原発行政の責任を守るためなのか、意図的に首相を悪く描いている様に思えた。
何よりも、原発事故の原因を俺たちはいつか驕り自然を舐めていたと、安易に総括しているのが、情けない。非常電源さえ、水が来ない様な高い位置に置いていたら、電源喪失は防げていた訳で、本質的には確率が低いが重要な危機に念のために備える精神さえあれば、防げた事故に思える。これだけの大災害を起こして、あの集約では、未来のための教訓に全くなっていない。多くのお金と時間をかけて作った映画なのにと、本当に情けなく思ってしまった。
現場の人間が献身的に命がけで頑張ったことは、事実だとは思う。だけど、どうして、主人公による娘の結婚反対のエピソードを、物語の中心にぶち込んでくるのだ。日本映画の本当に悪い癖により、稀有の物語性を薄めてしまっていた。純粋な職業人・技術者としての責任感、プライド、使命感、仲間意識、リーダーシップ、そういった部分だけで物語を構成して欲しかった。ドラマチックな展開の事実と世界でもまれにみるような献身的な50人の物語だけに。
報道等で見聞きしてた吉田昌郎所長、随分と魅力的なリーダーに思えた。渡辺謙演ずる所長も良い味は出していたが、もっと突っ込んだ脚本によるリーダー像を是非とも見たかった。とても残念であった。
原作門田隆将、脚本前川洋一、製作代表角川歴彦、エグゼクティブプロデューサー井上伸一郎、製作堀内大示、大角正、布施信夫、井戸義郎、丸山伸一、安部順一、五阿弥宏安、飯塚浩彦、柴田建哉、岡畠鉄也、五十嵐淳之。
企画水上繁雄、企画プロデュース椿宜和、プロデューサー二宮直彦、撮影江原祥二、照明杉本崇、録音鶴巻仁、美術瀬下幸治、衣装加藤哲也、へアメイク齋藤恵理子、サウンドデザイナー柴崎憲治、編集廣志良、音楽岩代太郎。
演奏五嶋龍、長谷川陽子、東京フィルハーモニー交響楽団、特撮三池敏夫。
VFX監督三池敏夫、スクリプター幸縁栄子、キャスティング椛澤節子、技術指導平野勝昭
ラインプロデューサー梶川信幸、音楽プロデューサー小野寺重之。
佐藤浩市(伊崎利夫)、渡辺謙(吉田昌郎)、吉岡秀隆(前田拓実)、安田成美(浅野真理)、緒形直人(野尻庄一)、火野正平(大森久夫)、平田満(平山茂)、萩原聖人(井川和夫)、吉岡里帆(伊崎遥香)、斎藤工(滝沢大)、富田靖子(伊崎智子)、佐野史郎(内閣総理大臣)、堀部圭亮(加納勝次)、小倉久寛(矢野浩太)、石井正則(工藤康明)、和田正人(本田彬)、三浦誠己(内藤慎二)、金井勇太、増田修一朗、堀井新太。
この映画には感謝しかない。
3月11日を忘れてはいけない。
その日は、私の誕生日でもある。
私は大震災で亡くなられた方の分まで、自分の命を全うする。
感謝を忘れてはいけない。
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