劇場公開日 2020年3月6日

Fukushima 50 : 映画評論・批評

2020年3月3日更新

2020年3月6日より丸の内ピカデリーほかにてロードショー

いつかは誰かが描かねばならなかった。あの日現場で起こっていた「死闘」に衝撃

実に生々しく、恐ろしい。起こった出来事の怖さだけではない。この事実を知らなかったことが、恐ろしいのだ。

3.11のあの日、福島第一原子力発電所の中で何が起こっていたのか。90人以上に取材した門田隆将氏のノンフィクションをもとに、作業員たちの闘いをリアルに描いた作品だ。

津波によって電力を失った福島原発。1・2号機の当直長・伊崎(佐藤浩市)は作業員と原発内に残り、所長の吉田(渡辺謙)は東電本店とのやりとりに追われる。しかし原子炉内の圧力は刻一刻と上がり、このままではメルトダウンを起こし、放射能がばらまかれてしまう。緊迫と焦りのなか、伊崎は原子炉内に入り「ベント」を行うことを決断するが――。

震災から9年。いつかは誰かが描かねばならなかった。しかしやはりいま、この題材を映画化することには、相当な勇気が必要だったはずだ。そこに日本を代表する名優二人をはじめ、多くの役者とスタッフが賛同した。敬意を表し、その意味を噛みしめずにいられない。

これほどの死闘が、あの現場で起こっていたとは。同じ日本にいながら、どこか傍観者だった自分を恥じてしまうほど、衝撃は大きい。ギリギリの状況下で「若いもんは行くな」というセリフが何度も出てくるのも印象的だ。実際、タイトルの「50」にはその意味も込められているのだと、取材時に佐藤浩市さんが教えてくれた。「50歳以上が、まず行く」状況だったのだ。さらに年長者たちには「自分たちが生み出したものへの落とし前」という気持ちもあっただろう。

事実を知り、過去の過ちに学ばなければ、未来はない。それは確かだ。だが、そこにある複雑さも本作には描かれている。福島出身の伊崎は子どものころ、地元に原発が来ることを心から喜んだ。父の後を追い、自分も原発に就職した。「俺たちは間違っていたのか?」――そう問う伊崎の言葉は重い。是が非か、善か悪かは簡単には測れない。まずはこれを語り継ぐこと。考えさせること。それこそが、この映画の意味だろう。

中村千晶

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