インビクタス 負けざる者たち 特集: 【特別対談】芝山幹郎×サトウムツオ その3

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インビクタス 負けざる者たち

劇場公開日 2010年2月5日
2010年2月10日更新

【特別対談】芝山幹郎×サトウムツオ その3

マット・デイモンは、ボクス唯一の黒人選手チェスターに指導を受けたという マット・デイモンは、ボクス唯一の黒人選手チェスターに指導を受けたという

■ラグビー映画

ムツオ:僕は中学高校とラグビーをやっていたんですけど、ラグビーが題材になっているアメリカ映画は、僕の長い人生の中で初めてじゃないかと思うんです。ラグビーって、本当に映画にしづらいんですよ。アメフト映画がいくつもあるのに比べれば、ほとんど無いわけですからね。

芝山:アメリカ人には親しみのないスポーツですからね。

ムツオ:アメリカ代表は、日本代表と同じくらいのレベルですかね。

撮影中のイーストウッドと、撮影監督トム・スターン 撮影中のイーストウッドと、撮影監督トム・スターン [拡大画像]

芝山:普及度や認知度は日本よりもっと低いから、アメリカ人観客の大半は、この映画を見るまでラグビーというスポーツを全く知らなかったんじゃないのかな。だからイーストウッドがどう撮影するかということに、私は非常に興味があったんですが、モールのシーンがよく撮れているんですよね。撮影監督のトム・スターンのキャメラがけっこう内側に入っている。私の第一印象では、ボクシングの撮り方やアメフトの撮り方を上手く採り入れていると思いました。とくにモールは、ボクシングのインファイトを撮るように撮ってますよね。

ムツオ:あるいは、アイスホッケーの肉弾シーンのような撮り方ですよね。

芝山:最近だと、「シービスケット」っていう競馬の映画があったでしょ。あれも馬込みのなかでキャメラを動かしているんですよね。迫力がありましたよね。

ムツオ:ちょっと変な話ですが、イーストウッドはラグビーの複雑なルールをよく学んだな、と思いましてね。12、3年前にトニー・スコット監督がロバート・デ・ニーロ主演で撮った「ザ・ファン」っていう野球映画があったんですが、アレなんてルール無視で4ストライクまで撮ってましたからね(笑)。そういう意味で、イーストウッドがラグビーのルールをどう処理するのか、不安半分期待半分で見ていたのですが、モールやラック、特にモールなんですが、すごい迫力だったのでね。

芝山:まあ「ミリオンダラー・ベイビー」でボクシングをあれだけ撮れた人ですから、ラグビーをああいう風に撮っても不思議ではないでしょう。それでも、予想以上に良かったですね。

ムツオ:また、あの95年のワールドカップの決勝戦がトライのない試合だったんですよね。

芝山:そうそう。逆に言うと、アメリカ人にも理解しやすい試合だったんですね。アメフトのフィールド・ゴールと同じなら、理解できますからね。ドロップ・ゴールだって理解しやすい。とにかく球がバーを越えれば良いんだから。

■70歳を過ぎて、更なる高みへ

ムツオ:これはいままでに散々話してますけど、普通のアメリカの巨匠たちは、ジョン・フォードにしろ、ハワード・ホークスにしろ、70歳を過ぎると、リタイアするんですよね。

ピナールと談笑するイーストウッド ピナールと談笑するイーストウッド [拡大画像]

芝山:それもあるし、失礼な言い方ですけど、非常にゆるくなってますよね。

ムツオ:それで、老いてなお、じゃないですけど、イーストウッドは70歳を過ぎてから、さらに階段を駆け上がっている感じがします。

芝山:「チェンジリング」のときにどこかに書いたんですけど、イーストウッドの作る映画自体が一艘の大きな帆船でね、映画という風を信じて悠々と大海原を進んでいく感じがある。そういう印象を与える映画作家は、今イーストウッド一人でしょう。つまりエンジンの力でガーッと行くとか、急流を乗り切るとかそういう感じではなく、放っておいても俺の船は前に進んでいくという感じなんですよね。

ムツオ:これはちょっと逸れますが、「硫黄島からの手紙」に出演していた松崎悠希さんと話したときに聞いたんですけど、彼が撮影中に演技で悩んだときにイーストウッドは「映画というのは川のようなもので、大きな岩にぶつかろうが、蛇行しようが、結局最終的には海に流れ着くんだ」というようなことを話していたそうなんです。まさに今芝山さんがおっしゃったように、映画の流れを信じろということなんですよね。だから思う存分やったらいいということを言われたそうですよ。

芝山:俳優は本当に楽みたいですよね。

ムツオ:でも、リハーサルがない。「ミスティック・リバー」のときは、これでは大変と、ショーン・ペンティム・ロビンスケビン・ベーコンらが自主練習に励んだそうですよ。

芝山:あれはショーン・ペンがやり過ぎなんですよね。私はイーストウッドの最近の映画で最も不満だったのが「ミスティック・リバー」なんです。なんかドストエフスキーの出来損ないみたいな映画になっちゃったでしょう。

>>【特別対談】芝山幹郎×サトウムツオ その4

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