沈まぬ太陽

劇場公開日:2009年10月24日

解説・あらすじ

累計700万部を超える山崎豊子のベストセラー小説を渡辺謙主演で映画化。監督は「ホワイトアウト」の若松節朗。巨大企業・国民航空の労働組合委員長を務める恩地は、職場環境の改善を目指し会社側と戦うが、懲罰人事で海外赴任を命じられてしまう。パキスタン、イラン、ケニアと次々と転勤を強いられた恩地は、10年後に本社復帰を果たすが、帰国後間もなく自社のジャンボ機が御巣鷹山に墜落するという事件に直面する。

2009年製作/202分/G/日本
配給:東宝
劇場公開日:2009年10月24日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第33回 日本アカデミー賞(2010年)

受賞

作品賞  
主演男優賞 渡辺謙

ノミネート

監督賞 若松節朗
脚本賞 西岡琢也
助演男優賞 三浦友和
助演女優賞 鈴木京香
音楽賞 住友紀人
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(C)2009「沈まぬ太陽」製作委員会

映画レビュー

4.0 【今作は、腐りきった航空会社の元労組委員長と副委員長の未曽有の事故後の余りにも対照的な生き方を軸に、組織の在り方と男の生き方、家族の在り方を描いた骨太な社会派作品である。】

2025年11月22日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

幸せ

ー 山崎豊子のベストセラー同名小説が底本になっているようだが、年代的に読んではいない。が、父の書棚にはあると思う。昭和再後期に猛烈サラリーマンだったし、今作の恩地程ではないかもしれないが、漢気がある人だからである。
  今度、実家に帰った時に、原作を読んでみようと思ってしまった。-

■国民航空の労働組合委員長として職場環境の改善に取り組んだ結果、海外のカラチ、テヘラン、ナイロビと、現在では考えられない”タッチ・アンド・ゴー”人事異動を意図的に命じられた恩地(渡辺謙)。
 それでも、彼は家族を犠牲にしながら勤め上げ、10年後本社へ復帰するも、彼への冷遇は変わらなかった。
 そんななか、史上最大の航空機墜落事故が起こる。彼は事故現地に赴き、遺族係を命ぜられる。
 一方、副委員長で、親友だった行天(三浦友和)は、人が変わったように数々な手段を使って、社長の座を目指すのであった。

◆感想<Caution!内容に触れています。>

・現代の感覚からは信じられない事ばかりが国民航空内で行われて行く事に、驚愕しながらも、強く引き込まれた作品である。
 唱和の大企業の全てがこの国民航空のような、腐りきった会社だとは思わないが、チビッ子の頃には航空会社や鉄道がしょっちゅう、ストライキを行っていた事を思い出す。

・今作を観ていると、健全な企業としてあるべき<労使協調>の姿勢が、国民航空の事故を起こす前の経営陣に全くない事に、直ぐに気付く。
 それが遠因で、整備不良や様々な原因で事故が起きた事が推測できる。
 その後も、社内で4つ!の労働組合が出来るのである。第二労働組合が出来るだけで大変なのに。人事労務を代表とした社内統制が全くできていないのである、国民航空と言う政府も出資している大企業は・・。

・だが、今作で主に描かれているのはそこではない。大企業に勤める元親友の二人の男、恩地と行天の余りにも対照的な、未曽有の事故後の生き方である。
 恩地は辛酸を舐めながらも、命じられた仕事を全うしようとする。彼の脳裏には自分が勤めている会社が起こした、悲惨極まりない事故に対する深い悔いがあり、故に遺族に対し献身的に尽くす姿である。それを、名優渡辺謙と、夫に対する会社の理不尽な仕打ちに耐える妻を演じた鈴木京香が見事に演じている。

・対照的なのは、行天を演じた三浦友和の、事故後の無表情に役人、政治家、且つての仲間を自家薬籠中に操り、会社の中でのし上がっていく様が凄い。体重も増やしているのではないだろうか。
 三浦さんの凄味のある抑制した演技有りて、渡辺謙さん演じる恩地の清廉潔白な姿が生きるのである。見事だと思う。

■ラストの、行天と恩地の対照的な姿も印象的である。
 行天はテコで使っていた労組時代の部下、八木(香川照之)が、行天から受けた指示をこまめにメモした手帳を東京地検特捜部に郵送した後に、東尋坊の断崖絶壁に立つ姿と、その後、行天が国民空港本社を出た時に歩み寄る三人の男。行天は一瞬だけ本社に翻る社旗を見て黙って特捜部の促しにより社から去る姿と、行天から再びナイロビ赴任を告げられながら、アフリカの平原に輝く太陽を見て希望を持つ、”超鋼のメンタル男”恩地との姿である。
 唱和のサラリーマンは凄かったのであるなあ、とつい思ってしまったシーンである。

<今作は、腐りきった航空会社の元労組委員長と副委員長の未曽有の事故後の余りにも対照的な生き方を軸に、組織の在り方と男の生き方、家族の在り方を描いた骨太な社会派作品である。>

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NOBU

1.0 ありえない設定

2025年11月10日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

原作がありえないので、TVドラマの問題ではないのです。しかし、主人工が会社に度えお超えた嫌がらせに耐えて、転職など、しないのは、見ててあほらしくなる。

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monakoya

4.0 【88.7】沈まぬ太陽 映画レビュー

2025年8月17日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

2009年公開の映画『沈まぬ太陽』は、山崎豊子の同名小説を原作とし、大規模なスケールで製作された社会派ドラマの傑作。航空会社の腐敗と、それに抗う一人の男の半生を描き出す。作品の完成度は極めて高く、日本映画史に残る重厚な作品として評価される。
作品の完成度
圧倒的な情報量と重厚なテーマを202分という長尺に凝縮した、驚異的な完成度。原作の膨大なエピソードを丹念に描き出しつつ、人間ドラマとしての深みを失わない脚本の妙技。アフリカでの壮大なロケーション撮影、御巣鷹山での墜落事故現場の再現など、細部まで徹底的に作り込まれた映像は観る者に強烈なリアリティを突きつける。企業内の権力闘争、労働組合の対立、そして国家のあり方といった複雑なテーマを、主人公・恩地の孤独な闘いを通して鮮やかに描き出す。社会派ドラマとしてだけでなく、一人の男の生き様を描いた人間ドラマとしても比類なき傑作。日本社会の闇を鋭く抉り出し、今なお色褪せない普遍的なテーマを持つ。
監督・演出・編集
監督は若き日の苦労を重ね、日本映画界の巨匠となった若松節朗。彼の演出は、静謐な抑制と情感の爆発を巧みに使い分け、観客の感情を深く揺さぶる。特に、恩地がアフリカの僻地で孤独に過ごすシーンや、御巣鷹山での墜落事故後の混乱を描いたシーンは、過剰な演出を排し、映像そのものが持つ力を最大限に引き出す。編集は、時系列を前後させながら、登場人物の過去と現在を織り交ぜる複雑な構成ながら、物語の骨格をしっかりと保ち、観客を飽きさせない。重厚なテーマを扱いながらも、エンターテインメントとして成立させているのは、若松監督の卓越した演出と編集の賜物。
キャスティング・役者の演技
* 渡辺謙(恩地元)
国民航空の労働組合委員長を務め、会社の不正を追求したためにパキスタン、アフリカの僻地へと左遷される主人公。渡辺謙は、恩地が味わう苦悩、孤独、そして不屈の精神を見事に体現。彼の演技は、抑制された感情の中に激しい情熱を秘めており、観客は恩地の心の叫びを肌で感じることができる。特に、アフリカでの過酷な生活の中での苦悩や、御巣鷹山での遺族への対応に苦慮する姿は、俳優としての真骨頂を発揮。権力に屈することなく信念を貫く男の生き様を、圧倒的な存在感で演じきった。彼の演技なくしてこの映画の成功はありえない。
* 三浦友和(行天四郎)
恩地の同期でありながら、出世のためには手段を選ばない男。労働組合の分裂後、会社の中枢に食い込み、恩地と対立する。三浦友和は、行天の冷徹さ、狡猾さ、そしてどこか哀愁を帯びた人間性を巧みに演じ分ける。恩地と行天の対立は、物語の主要な軸の一つであり、彼らの演技のぶつかり合いは観る者を強く引き込む。特に、恩地を前にした時の、複雑な感情を宿した表情は秀逸。行天というキャラクターの多面性を引き出し、物語に深みを与えている。
* 松雪泰子(三井美樹)
御巣鷹山で起きた航空機墜落事故の遺族。夫を亡くし、国民航空に対して激しい怒りと不信感を抱く。松雪泰子は、悲しみと怒り、そして絶望を抱えた遺族の心情を生々しく演じきる。彼女の演技は、事故の被害者の声なき声となって、観客に強い共感を呼び起こす。特に、国民航空の対応に抗議するシーンは、鬼気迫る迫力に満ちており、観客の心に深く突き刺さる。
* 香川照之(八木和夫)
国民航空の運輸部所属の整備士。御巣鷹山墜落事故の犠牲者となり、遺体となって恩地と対面する。わずかな出演時間ながら、香川照之の存在感は圧倒的。彼の演技は、事故の悲劇を象徴する重要な役割を果たす。遺体安置所で恩地が八木の遺体と対面するシーンは、この映画における最も印象的な場面の一つであり、香川の演技がその重みを増幅させている。
* 石坂浩二(利根川泰司)
国民航空の新会長。腐敗した組織の再建を託され、恩地を特別室に迎え入れる。石坂浩二は、利根川の知的で穏やかな佇まいの中に、改革への強い意志と覚悟をにじませる。恩地と対話するシーンは、物語の転換点であり、彼の落ち着いた演技が物語の緊張感を高めている。
脚本・ストーリー
山崎豊子の原作小説が持つ壮大なスケールと重厚なテーマを、過不足なく映画の脚本に落とし込んだ手腕は見事。航空会社の組織的な不正、労働組合の分裂、そして未曽有の航空機事故という複数の要素を、主人公・恩地の視点を通して統一感のある物語として構築。人間性の本質、組織と個人の葛藤、権力と信念の対立といった普遍的なテーマを深く掘り下げている。原作の持つ社会派としての鋭い視点と、人間ドラマとしての深みを両立させた脚本は、日本映画の歴史に残る傑作。
映像・美術衣装
アフリカでのロケーション撮影は、乾いた大地と灼熱の太陽を捉え、恩地の孤独と苦悩を視覚的に表現。一方で、御巣鷹山の墜落現場の再現は、悲劇の現実を観客に突きつける。国民航空の社屋や役員室、恩地の自宅など、細部にまでこだわった美術は、それぞれの場所が持つ空気感を正確に伝えている。衣装も、登場人物の階級や立場、心情を反映しており、物語のリアリティを高める重要な要素。
音楽
岩代太郎が手掛けた音楽は、物語の重厚なテーマに寄り添い、観客の感情を揺さぶる。特に、恩地が一人でいるシーンや、御巣鷹山での悲劇を描いたシーンで流れる音楽は、静謐でありながらも力強く、映像の力を最大限に引き出している。主題歌「見上げてごらん夜の星を」は、坂本九の歌声が主人公の心情と重なり、希望と悲哀を表現。映画の感動をさらに深めている。
受賞・ノミネート
* 第33回日本アカデミー賞最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀主演男優賞(渡辺謙)、最優秀助演男優賞(三浦友和)など、全12部門で受賞。
* 第34回報知映画賞最優秀作品賞、最優秀主演男優賞(渡辺謙)受賞。
* 第64回毎日映画コンクール日本映画大賞受賞。

作品
監督 若松節朗
124×0.715 88.7
編集
主演 渡辺謙A9×3
助演 三浦友和 A9
脚本・ストーリー 原作
山崎豊子
脚本
西岡琢也 A9×7
撮影・映像 長沼六男
A9
美術・衣装 小川富美夫 B8
音楽 住友紀人 B8

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honey

4.0 身を粉にして働いても報われない

2025年1月6日
PCから投稿
鑑賞方法:TV地上波

国民航空ジェット旅客機が運航不能 になり墜落した。渡辺謙扮する国民航空社員元組合委員長恩地元らは遺族の世話役を申しつかったが国民航空は加害者という事で情報すら無かった。
日航事故の当事者も遺族も何年経っても時期が来ると辛いだろうな。特に組合関係者は会社でも扱いが変わるだろう。身を粉にして働いても報われない場合もある。組合なんてやるもんじゃないさ。熱演ではあったが、昔の話とはいえ後味が悪い展開だったね。

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重