ジョン・カーター : 映画評論・批評
2012年4月3日更新
2012年4月13日より丸の内ピカデリーほかにてロードショー
往年の歴史スペクタクル様式で甦らせた正統派英雄冒険物語
原作は「ターザン」の作者が今から100年前に書いたアドベンチャー小説の元祖的作品。「スター・ウォーズ」のルーカスも「アバター」のキャメロンも影響を受けたと告白済み。そんな古典名作をそのまま映画化したら古臭くしか見えないのだから、それを避けるためにかなりの荒技が必要だ――と、誰もが考える。が、そこで「いや、違う」と別の答を出したのが本作だ。
本作がとった戦略は、逆に原点に戻り、原作が生み出した<ヒロイック・アドベンチャー>という世界を、かつてそれを効果的に映画化した「ベン・ハー」「クレオパトラ」の<歴史スペクタクル大作>様式で甦らせることだった。物語もデザインも正統派。とくに後半の赤・青・黄金の色彩設計はこの様式の伝統を継承している。本作は、「アーティスト」「ヒューゴの不思議な発明」同様、映画がかつて持っていて、今も持っているはずの魅力の再発見を目指しているのだ。
もちろん、映像技術は最新の3D。物語の細部も、異星への移動や言語の習得には科学的説明をプラスし、主人公が他国の紛争に介入するのではなく外部からの侵略者と戦う設定にして政治的正しさも配慮するなど、現代の観客用のアレンジもきっちり施されている。が、それは重要ではない。
「ウォーリー」「ファインディング・ニモ」を経て本作を撮った監督アンドリュー・スタントンは、子供の頃からの原作ファン。彼がこのコンセプトに沿ってジョン・カーターをイメージしたとき、それは彼が子供の頃に思い描いたヒーローと共振したのかもしれない。
(平沢薫)