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ー 小泉今日子演じる京橋絵里子は、常に笑顔を浮かべて家族のために料理をし、蕎麦屋でアルバイトをして生活を支えている。ローンも30年残っているし・・。
娘のマナ(鈴木杏)は、明るく”私はどこで仕込まれたの?”と聞き、絵里子は明るく”野猿と言うラブホテルだよ!”と答えるのである。
絵里子の夫貴史(板尾創路)は、良き父を演じているが、実はミーナ(ソニン)という不動産屋の若い女と不倫している。だが、ある日ミーナが京橋家の長男コウの家庭教師としてやって来る事から、京橋家の嘘が暴かれ、崩壊していくのである。ー
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・今作は、中盤過ぎまで大変に怖い映画である。幼い時に母さと子(大楠道代)から”愛されずに育った”と思っていた絵里子は、高校時代に”なよこ”と呼ばれ苛められていた。自分は明るい家庭を作るという思いで、頑張って来た。
・そして、砂上の楼閣の様な”嘘に塗り固められた”明るい家庭を築くのである。劇中の台詞”バレない嘘は、嘘じゃない。”がとても、効果的に響く。
・家族の様々な嘘がバレていく中で、絵里子は心のバランスを失ったかのような行動、言動を取り始めるのである。
■今作では、絵里子が嫌っている実の母、大楠道代演じるさと子が、実は崩壊していく家族のバランサーである事が徐々に分かって行くのである。
ミーナに指示されて万引きしたコウを引き取りに行き、ミーナがいるラブホテルに乗り込み彼女を激しくぶっ叩くのである。
さと子は崩壊した家で、絵里子と食卓で向き合い、彼女が用意した悪意の籠った物凄い数の蝋燭が立ったバースデーケーキを煙草で、吹き消して行くのである。凄い怖いシーンである。
そして、さと子は再び肺がんで入院するのである。
病院にやって来た兄(國村隼)が”母さんは、いつもお前を大事にしていて、お前の事ばかり話している。”と彼女に告げるのである。
それを聞いて、幼い日に母に愛されていた光景を思い出す絵里子。
夜、絵里子に母から電話が掛かって来る。母は、”誕生日おめでとう”と告げるのである。
そして、彼女は、知の如き真っ赤な雨が降る中で、夜空に向かって絶叫するのである。
<最終盤、バスで一緒になった父、貴史、マナ、コウ。マナは貴史に”お母さんをもっと愛しなよ”と笑顔で告げるが、父、貴史は”あんなアパートを守り、絵里子に付き合っている俺が愛していない筈はないだろう。”と告げるのである。
そして、3人はプレゼントを持って家のベルを鳴らし、そんな3人を絵里子はいつもの笑顔で、”お帰り”と告げるのである。
今作は、砂上の楼閣に住む”秘密のない家族”と言いながら、隠し事だらけの家族の崩壊と再生を描いた作品なのである。>