コラム:映画.comレビュー大賞 - 第6回

2024年6月28日更新

映画.comレビュー大賞
「映画.comレビュー大賞」受賞結果発表! 応募総数279本、大賞に輝いたレビューは?【受賞レビュー一覧】

映画.comでは3月~4月に、映画好きなユーザーの皆さんのレビューを募集する「映画.comレビュー大賞」を開催しました! ユーザーの皆様から寄せられたレビュー数は、その数何と279本におよびました! たくさんのご応募、本当にありがとうございました。

そして、約2カ月間にわたる厳正な審査を経て、ついに受賞者が決定! 映画.comスタッフも審査を通して、鋭い視点、美しい表現、そして何よりも溢れる映画愛に触れ、改めて映画体験の一部としてのレビューの力を、しみじみと感じることができました。

この記事では、受賞結果を発表いたします。応募した方もしていない方も、ユーザーによる秀逸レビューを読み、駒井尚文編集長や審査担当者のコメントをチェックしてみてください! また次回の開催も計画しており、今後のお知らせにもご期待ください。



【審査基準】

・「レビューを通してその映画が観たくなる、もしくは観た人の共感が得られるもの」という評価軸で、選考を行いました。
・あくまで評価対象は、レビューそのものの内容となります。レビュー内で記述されている、映画本編の内容や描写の信ぴょう性については、今回は評価基準に含めておりません。
・選考内容などに関するお問い合わせには応じられません。
・そのほかの詳細は、募集ページ(https://eiga.com/extra/reviewcontest/1/)をご確認ください。



【受賞結果】

 「ROMAローマ」  
Netflixオリジナル映画「ROMA ローマ」独占配信中
●映画.comレビュー大賞:「時と場所の垣根を超える、モノクロゆえの親密さ」(cma さん)

▽作品:ROMA ローマ
▽賞品:「映画GIFT」1万円分
▽レビュー内容:
(全文)

ああ、いいもの観たー、と久々にしみじみと思った。その一方で、この素晴らしさは、言葉にするのは難しいな…とも。けれども、やっぱり自分なりに心に留めておきたいので、敢えて言葉にしてみようと思う。こぼれ落ちないように、余計なものを足さないように。

「天国の口、終わりの楽園。」に出会って以来、アルフォンソ・キュアロン監督について行こうと決めた。だから、当時距離を置いていたハリー・ポッターシリーズも「アズカバンの囚人」だけは、いそいそわくわくと足を運び、今も子らに推している。 そんなキュアロン監督の新作を、映画館で観ることができる。席に着いただけで、すでに満足感があった。

冒頭のクレジットの背景で、白地に点在する黒いものが取り除かれ、何度も洗い流される。これは何だろう…と、じーっと観ているうちに物語は幕を開ける。少しすると冒頭の種明かしになり、凝視していた分気恥ずかしくなるのだけれど、それはいっときの話だ。

家政婦として働く、あどけなさが残るヒロイン・クレオは殆どしゃべらないし、情感を盛り上げる音楽も流れない。掃除に洗濯、料理に子守を求められるままに黙々と片付ける。彼女の思わぬ妊娠から出産を横糸に、挟み込まれる暴力的な内乱を縦糸に、淡々と物語は進む。彼女が寡黙な分、働いている家の中でのいさかいや、街の喧騒が耳に刺さる。

分かりやすい事件は起きず、彼らの日常にいきなり放り込まれた感覚が強い。初めは少々面喰らう。けれども、モノクロの画面に向き合っているうちに、いつの間にか、彼らと共に過ごしているような気持ちになっていく。

物語になじみ、気を許して身を委ねていると、終盤でふたつの大きな揺らぎが現れる。人の限界を突きつける一度めと、自然が牙をむく二度め。彼らを容易く呑み込もうとする画面いっぱいの波に圧倒されながらも、まばたきを惜しんで見つめずにはいられない。モノクロゆえに、泡立つ波の白さ、砂のざらつきや体温が生々しく想起される。身を寄せ合う彼らの輪に自分も加わっているような、不思議な親密さに包まれて、胸が熱くなった。

夢から覚めるように、物語は終わりを迎えてしまう。けれども今も、私の一部は、時と場所を超えて彼らとともに生きている。同時に、彼らがひっそりと私に寄り添ってくれている。(特に、クレオのように荒れた部屋を片付けているとき、汚れものをきれいにしているとき、洗濯を干しているとき、彼女と繋がっていると思える。)そんな得難い感覚を日常に与えてくれる、かけがえのない作品だ。

追記:モノクロ、区切られた空間の中の移動という骨組みは共通しているけれど、物語は対照的な「ヴァンダの部屋」との二本立て、体力が許すならば観てみたい。

▽審査員コメント:

(駒井編集長)

「映画は監督で見るべし」を推奨する立場として、このレビューには共感が止まりませんでした。アルフォンソ・キュアロン監督への不滅のレスペクトを表明するレビュアーは、本編を見る前からすでに達成感を覚えています。しかし、本編の内容について盲目的な賛辞を与えることはなく、かなり冷静に、フェアーにレビューを展開します。視覚的に印象的なシーンを、自らの感情を交えて表現する文章が素晴らしい。本作の名場面をいくつも思い出しました。

(映画.comスタッフ・G)

書き手と一緒に映画館で見ているかのような臨場感に引きこまれ、映画を見たくなるレビューでした。平易かつ等身大な言葉で作品のディテールが魅力的に書かれ、作品を楽しんでいることがよく伝わってきました。



パラサイト半地下の家族」
 (C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED  
●映画.com編集長賞:「半地下ってご存知ですか?」(をりあゆうすけ さん)

▽賞品:「映画GIFT」6000円分
▽レビュー内容:
(全文)

ボクはこの作品を観て知ったのですが、どうやら人口が増加した韓国では、住みにくい半地下は格安物件(雨で沈んだりする)で、主に低所得層が賃貸するそうです。タイトルの通り、半地下に住む低所得4人家族が富裕層にパラサイト(寄生)するお話です。息子は家庭教師、父はお抱え運転手など家族全員で富裕層宅に寄生していきます。物語前半はコメディタッチで、おバカな家族に、笑いもポップコーンを食べる手も止まらないです。しかし、とある事が発覚した途端サスペンス映画にガラリ一変。クライマックスまで、ポップコーンを食べる手が止まり、目が離せない展開!自分がこの家族の一員になった気持ちでハラハラドキドキ。そして、衝撃のラストを迎えます。1作で2つのジャンルを楽しめて、観終えた後 満腹になる、そんな作品です。まだ観てない方は是非!

▽審査員コメント:
(駒井編集長)

韓国の住宅事情の豆知識をツカミに持ってきて、映画のあらすじを軽妙に展開する書き出しもうまいし、映画が転調してサスペンスフルになる後半〜ラストの感想も、ポップコーンを小道具に使って見事にレビューしています。ネタバレ風味も一切なくて、すでに見た私も思わず「パラサイト、また見たい!」と思ってしまいました。簡潔で、センス溢れるレビューだと思います。



●優秀賞:

▽賞品:「映画GIFT」各2000円分
▽受賞者一覧(5名):
(以下、掲載順は応募受付順となっております)

・「それでも世界は美しく、目を凝らせば刹那の幸せがある」(ニコ さん)
作品:「PERFECT DAYS

・「共に走る」(イズボペ さん)
作品:「1917命をかけた伝令

・「己の欲望に背かずに」(abokado0329 さん)
作品:「8 1/2

・「世紀の瞬間を目撃した!!」(ホビット さん)
作品:「RRR

・「人間と自然の対立を描く映画ではきっとない」(宇部道路 さん)
作品:「もののけ姫



●入選:

▽賞品:シネマ映画.comの550円クーポン
▽受賞者一覧(15名):
(以下、掲載順は応募受付順となっております)

・「我が人生の応援歌、何度も何度も何度でも♪」(ななやお さん)

・「原点にして頂点」(Ken@ さん)

・「少女時代の自分と手を繋ぎながら見た幸せな2時間」(AZU さん)
作品:「THE FIRST SLAM DUNK

・「『夢の香り』である所以」(ychiren さん)

・「全てのルパンファンに捧げられた名作」(猿田猿太郎 さん)

・「人生で悩んだ時に見てもらいたい作品」(Sarah さん)
作品:「レ・ミゼラブル(2012)」

・「この世界に存在するかもしれない"確かなもの"について」(第2電気室 さん)

・「ファーンの横顔」(消々 さん)
作品:「ノマドランド

・「『生きる』を学ぶ」(くまの さん)
作品:「オデッセイ

・「施しの快楽と富める者としての後ろめたさからの解放カタルシス」(popo2 さん)
作品:「紙の月

・「負の感情が辿り着く先。」(すっかん さん)
作品:「ジョーカー

・「新しいことを学んでいく楽しさ」(momokichi さん)

・「一流ファッション誌業界の華やかさの裏に自分の人生で何を1番大切にしたいかを考えさせられる映画」(Saki さん)
作品:「プラダを着た悪魔

・「『虐待家族』『幸福家族』そして『万引き家族』」(倉沢繭樹 さん)
作品:「万引き家族

・「いやあ、くっそお、惜しいなあ・・・」(しんざん さん)



【賞品について】

・「映画.comレビュー大賞」「映画.com編集長賞」「映画.com優秀賞」を受賞された方

「映画GIFT」は7月以降に、ご応募時にご入力いただいたメールアドレスにご案内いたします。さらに7月以降にユーザー名にスペシャルバッジが付きます。(※以下イメージ)

※「映画GIFT」はムビチケ(前売券/鑑賞券)ご購入の際にご利用いただけるプリペイドコードです。詳細は、公式サイト(https://mvtk.jp/eiga-gift/howtouse)をご確認ください。

・入選された方

シネマ映画.comの550円クーポンは7月以降に、ご応募時にご入力いただいたメールアドレスにご案内いたします。さらに7月以降にユーザー名にスペシャルバッジが付きます。(※以下イメージ)


・ご応募いただいた方全員

参加賞として、シネマ映画.comの100円クーポンは7月以降に、ご応募時にご入力いただいたメールアドレスにご案内いたします。

※シネマ映画.comは都度課金型の動画配信サービスです。作品視聴には別途ユーザー登録が必要です。
※各賞を受賞された方、入選された方には、参加賞の付与はございません。



【選考結果について】

・選考内容などに関するお問い合わせには応じられません。
・個人情報の取り扱いにつきましては、当社プライバシーポリシーに従います。

筆者紹介

映画.com編集部のコラム

映画.com編集部のメンバーが、「映画.comレビュー大賞」の取り組みをご紹介します!

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