コラム:映画.comレビュー大賞 - 第6回
2024年6月28日更新
映画.comでは3月~4月に、映画好きなユーザーの皆さんのレビューを募集する「映画.comレビュー大賞」を開催しました! ユーザーの皆様から寄せられたレビュー数は、その数何と279本におよびました! たくさんのご応募、本当にありがとうございました。
そして、約2カ月間にわたる厳正な審査を経て、ついに受賞者が決定! 映画.comスタッフも審査を通して、鋭い視点、美しい表現、そして何よりも溢れる映画愛に触れ、改めて映画体験の一部としてのレビューの力を、しみじみと感じることができました。
この記事では、受賞結果を発表いたします。応募した方もしていない方も、ユーザーによる秀逸レビューを読み、駒井尚文編集長や審査担当者のコメントをチェックしてみてください! また次回の開催も計画しており、今後のお知らせにもご期待ください。
【審査基準】
【受賞結果】
ああ、いいもの観たー、と久々にしみじみと思った。その一方で、この素晴らしさは、言葉にするのは難しいな…とも。けれども、やっぱり自分なりに心に留めておきたいので、敢えて言葉にしてみようと思う。こぼれ落ちないように、余計なものを足さないように。
「天国の口、終わりの楽園。」に出会って以来、アルフォンソ・キュアロン監督について行こうと決めた。だから、当時距離を置いていたハリー・ポッターシリーズも「アズカバンの囚人」だけは、いそいそわくわくと足を運び、今も子らに推している。 そんなキュアロン監督の新作を、映画館で観ることができる。席に着いただけで、すでに満足感があった。
冒頭のクレジットの背景で、白地に点在する黒いものが取り除かれ、何度も洗い流される。これは何だろう…と、じーっと観ているうちに物語は幕を開ける。少しすると冒頭の種明かしになり、凝視していた分気恥ずかしくなるのだけれど、それはいっときの話だ。
家政婦として働く、あどけなさが残るヒロイン・クレオは殆どしゃべらないし、情感を盛り上げる音楽も流れない。掃除に洗濯、料理に子守を求められるままに黙々と片付ける。彼女の思わぬ妊娠から出産を横糸に、挟み込まれる暴力的な内乱を縦糸に、淡々と物語は進む。彼女が寡黙な分、働いている家の中でのいさかいや、街の喧騒が耳に刺さる。
分かりやすい事件は起きず、彼らの日常にいきなり放り込まれた感覚が強い。初めは少々面喰らう。けれども、モノクロの画面に向き合っているうちに、いつの間にか、彼らと共に過ごしているような気持ちになっていく。
物語になじみ、気を許して身を委ねていると、終盤でふたつの大きな揺らぎが現れる。人の限界を突きつける一度めと、自然が牙をむく二度め。彼らを容易く呑み込もうとする画面いっぱいの波に圧倒されながらも、まばたきを惜しんで見つめずにはいられない。モノクロゆえに、泡立つ波の白さ、砂のざらつきや体温が生々しく想起される。身を寄せ合う彼らの輪に自分も加わっているような、不思議な親密さに包まれて、胸が熱くなった。
夢から覚めるように、物語は終わりを迎えてしまう。けれども今も、私の一部は、時と場所を超えて彼らとともに生きている。同時に、彼らがひっそりと私に寄り添ってくれている。(特に、クレオのように荒れた部屋を片付けているとき、汚れものをきれいにしているとき、洗濯を干しているとき、彼女と繋がっていると思える。)そんな得難い感覚を日常に与えてくれる、かけがえのない作品だ。
追記:モノクロ、区切られた空間の中の移動という骨組みは共通しているけれど、物語は対照的な「ヴァンダの部屋」との二本立て、体力が許すならば観てみたい。
「映画は監督で見るべし」を推奨する立場として、このレビューには共感が止まりませんでした。アルフォンソ・キュアロン監督への不滅のレスペクトを表明するレビュアーは、本編を見る前からすでに達成感を覚えています。しかし、本編の内容について盲目的な賛辞を与えることはなく、かなり冷静に、フェアーにレビューを展開します。視覚的に印象的なシーンを、自らの感情を交えて表現する文章が素晴らしい。本作の名場面をいくつも思い出しました。
書き手と一緒に映画館で見ているかのような臨場感に引きこまれ、映画を見たくなるレビューでした。平易かつ等身大な言葉で作品のディテールが魅力的に書かれ、作品を楽しんでいることがよく伝わってきました。
ボクはこの作品を観て知ったのですが、どうやら人口が増加した韓国では、住みにくい半地下は格安物件(雨で沈んだりする)で、主に低所得層が賃貸するそうです。タイトルの通り、半地下に住む低所得4人家族が富裕層にパラサイト(寄生)するお話です。息子は家庭教師、父はお抱え運転手など家族全員で富裕層宅に寄生していきます。物語前半はコメディタッチで、おバカな家族に、笑いもポップコーンを食べる手も止まらないです。しかし、とある事が発覚した途端サスペンス映画にガラリ一変。クライマックスまで、ポップコーンを食べる手が止まり、目が離せない展開!自分がこの家族の一員になった気持ちでハラハラドキドキ。そして、衝撃のラストを迎えます。1作で2つのジャンルを楽しめて、観終えた後 満腹になる、そんな作品です。まだ観てない方は是非!
韓国の住宅事情の豆知識をツカミに持ってきて、映画のあらすじを軽妙に展開する書き出しもうまいし、映画が転調してサスペンスフルになる後半〜ラストの感想も、ポップコーンを小道具に使って見事にレビューしています。ネタバレ風味も一切なくて、すでに見た私も思わず「パラサイト、また見たい!」と思ってしまいました。簡潔で、センス溢れるレビューだと思います。
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