コラム:編集長コラム 映画は当たってナンボ - 第6回
2008年7月18日更新
第6回:08年上半期は「相棒」がトップ。東宝、ディズニーが市場をリード
今年の上半期のヒット作ランクがまとまった。これは、業界通信の老舗・文化通信調べによるもので、昨年12月公開の08年正月映画から、今年の5月末までに公開された作品の興行収入上位十傑を並べてみた。何かが足りないと思う方も多いだろうが、6月公開の「ザ・マジックアワー」「インディ・ジョーンズ」「花より男子」などは今回の十傑には含まれていない。
1「相棒 劇場版/絶体絶命!42.195km 東京ビッグシティマラソン」(東映)……44億円
2「アイ・アム・レジェンド」(WB)……43億円
3「ライラの冒険/黄金の羅針盤」(ギャガ・松竹)……35億円
4「映画ドラえもん/のび太と緑の巨人伝」(東宝)……33.7億円
5「マリと子犬の物語」(東宝)……31.4億円
6「ナルニア国物語/第2章:カスピアン王子の角笛」(ディズニー)……30億円
7「魔法にかけられて」(ディズニー)……29億円
8「ナショナル・トレジャー/リンカーン暗殺者の日記」(ディズニー)……26億円
9「名探偵コナン/戦慄の楽譜(フルスコア)」(東宝)……24.2億円
10「アース」(ギャガ)……24億円
洋画が6本、邦画が4本。全般的に、ファミリー向け作品が多いのが目につくが、正月・春休み・ゴールデンウィークをまたぐ半年の集計なので、ある意味真っ当な結果といえる。配給会社別でみると、東宝、ディズニーが3本ずつで、この2社が上半期を牽引した格好。最近流行のTVドラマの映画化作品は、意外にも「相棒」の1本だけ。また、洋画のシリーズものも、「ナルニア」「ナショナル・トレジャー」の2作品のみとなっている。
要するに、地味な上半期だったという印象である。「パイレーツ・オブ・カリビアン」や「ハリー・ポッター」といったイベントムービーが1本もなかったのも要因の1つだが、興収50億円を超える作品は1本もなく、予想外の健闘を記録した「相棒」がトップというのも何だか情けない。
もちろん、現在大ブレイク中の「花男」、今週封切りの「ポニョ」など、この10作品を上回る映画も今後登場するのだが、問題はハリウッドの洋画である。「インディ・ジョーンズ」以外に、計算できる洋画があまりに少ないのである。今年、これまで全米でもっともヒットしている「アイアンマン」が日本ではどれほど稼いでくれるのか? 「セックス・アンド・ザ・シティ」は? 「ハンコック」は? この冬の脚本家組合のストライキの影響もそろそろ出てきている気配だ。いずれにせよ、この夏がハリウッド映画にとっての暑い夏になることを期待したい。(eiga.com編集長・駒井尚文)
筆者紹介
駒井尚文(こまいなおふみ)。1962年青森県生まれ。東京外国語大学ロシヤ語学科中退。映画宣伝マンを経て、97年にガイエ(旧デジタルプラス)を設立。以後映画関連のWebサイトを製作したり、映画情報を発信したりが生業となる。98年に映画.comを立ち上げ、後に法人化。現在まで編集長を務める。
Twitter:@komainaofumi