コラム:編集長コラム 映画は当たってナンボ - 第39回
2010年1月28日更新
第39回:「アバター」が市場を席巻。2010年正月映画を総括
2010年、正月映画は久々に盛り上がった。「アバター」は日本でも大ヒットしているが、全世界ではとうとう「タイタニック」を超えるという偉業を達成。その「アバター」以下、もともとバラエティに富んだラインナップが揃った正月映画に加え、再公開された「マイケル・ジャクソン THIS IS IT」や、コミック0号バンドルでヒートアップした「ONE PIECE FILM STRONG WORLD」など、普段はあまり映画館に行かない人たちの動員に成功した作品もあり、正月全体の興行収入は昨年よりも30%以上増えたそうだ。
それでは、正月映画のヒット作を、現時点までの興収順に並べてみよう。
1「アバター」(フォックス)……70億円
2「マイケル・ジャクソン THIS IS IT」(ソニー)……50億円
3「カールじいさんの空飛ぶ家」(ディズニー)……47億円
4「ONE PIECE FILM STRONG WORLD」(東映)……45億円
5「2012」(ソニー)……37億円
6「のだめカンタービレ/最終楽章 前編」(東宝)……35億円
7「仮面ライダー×仮面ライダー/W&ディケイドMOVIE大戦2010」(東映)……15億円
※興収は文化通信調べ。一部は編集部の推定。
以上、10億円以上の興収を記録した作品が計7本。しかも、30億円以上が6本というのは特筆すべきだ。昨年の正月映画で30億円を超えたのは、「ウォーリー」と続映作品の「おくりびと」の2本だけだったのだから。
とにかく、09年には巻き返すと予想されながら、なかなか大ブレイクできていなかったハリウッド映画群が、最後の最後でビッグ・パフォーマンスを連発したことの効果が大きい。3Dの圧倒的表現力を伴った「アバター」の威力は凄まじかった。
日本映画では、東映の躍進が目立つ一方で、東宝作品が伸び悩んだ。興収10億円以上は「のだめ」一本だったのが印象的。ちなみに、正月映画として100スクリーン以上で封切られながら、興収10億円に届かなかったのは下記。
「宇宙戦艦ヤマト 復活篇」(東宝)
「ウルルの森の物語」(東宝)
「スノープリンス/禁じられた恋のメロディ」(松竹)
「大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説」(ワーナー)
「釣りバカ日誌20 ファイナル」(松竹)
「ティンカー・ベルと月の石」(ディズニー)
「パブリック・エネミーズ」(東宝東和)
「THE 4TH KIND フォース・カインド」(ワーナー)
「よなよなペンギン」(松竹)
「映画 レイトン教授と永遠の歌姫」(東宝)
この10本の中には、「スノープリンス」のように、200スクリーン以上で公開したものの1億円ちょっとしか稼げなかった作品もあれば、シリーズ最終作ということでしっかりプロモーションを行い、7億円以上稼いで有終の美を飾った「釣りバカ日誌20 ファイナル」のような成功作もある。一概に失敗した作品群というわけではない。
最後に、30スクリーンという小規模ながら、5億円以上稼いだ「劇場版マクロスF/イツワリノウタヒメ」(クロックワークス)の健闘を付け加えておこう。
2010年、滑り出しはなかなか上々である。
筆者紹介
駒井尚文(こまいなおふみ)。1962年青森県生まれ。東京外国語大学ロシヤ語学科中退。映画宣伝マンを経て、97年にガイエ(旧デジタルプラス)を設立。以後映画関連のWebサイトを製作したり、映画情報を発信したりが生業となる。98年に映画.comを立ち上げ、後に法人化。現在まで編集長を務める。
Twitter:@komainaofumi