コラム:編集長コラム 映画は当たってナンボ - 第38回
2009年4月8日更新
第38回:09年第1Qは、やはり邦画が市場を牽引。社史に残る2作品
2009年も四半期が過ぎた。今年は「洋画逆襲の年」だとさんざん語って来たのだが、3カ月経過した時点では外国映画に比べて日本映画の好調が目立つ。まずは今年の上映作品で、興収20億円以上稼いだ作品をリストアップしてみよう。
「おくりびと」(松竹)……59億円
「ウォーリー」(ディズニー)……39.5億円
「20世紀少年/第2章」(東宝)……30億円
「マンマ・ミーア」(東宝東和)……25億円
「地球が静止する日」(フォックス)……24億円
「ベンジャミン・バトン」(ワーナー)……23億円
「私は貝になりたい」(東宝)……23億円
「ヤッターマン」(松竹・日活)……27億円
「ドラえもん」(東宝)……21億円
※興収は4月5日現在。一部は編集部による推定
正月映画を中心に昨年中に公開された映画が過半数を占めているが、封切りが昨年9月だった「おくりびと」は、今年に入ってから実に30億円を稼いでいる。
アカデミー賞で大ブレイクした「おくりびと」と、「ドラえもん」と同日公開でこれを破った「ヤッターマン」の2作品が今年の第一四半期を象徴していると言えよう。
もうすぐ興収60億円に達する「おくりびと」だが、松竹作品でこの規模のヒット作は同社史上過去にない(洋画の共同配給では「ロード・オブ・ザ・リング」など、これ以上の興行収入を記録したことはある)。映連のウェブサイトを覗いてみても、興収30億円を超えているのは、06年の「武士の一分」の41.1億円ただ1本。かつて、「男はつらいよ」シリーズは配収15億円前後を記録しているので、これを興収に読み替えるとおよそ30億円規模。つまり、「おくりびと」は寅さん全盛期の2倍の成績を叩き出したことになる。
そして、松竹は「ヤッターマン」にも絡んでいる。こちらは日活との共同配給だが、これまた30億円以上の興収を記録しそうなのである。「おくりびと」が松竹史上に残る大ヒットなら、「ヤッターマン」は日活史上に残る大ヒットだ。
日活は、製作会社としては「デスノート」や「L change the WorLd」を手がけてきた。また、「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」では配給協力と宣伝を手がけており、決して大ヒット作と無縁ではない。だが、自社配給作品で30億円以上となると、恐らく過去最高記録だろう。
以上、東宝以外の邦画2社が気を吐いた第1Qとなったが、洋画も含めたマーケット全般でみると、興収は昨年をやや上回っている。まずは幸先好調である。(eiga.com編集長・駒井尚文)
筆者紹介
駒井尚文(こまいなおふみ)。1962年青森県生まれ。東京外国語大学ロシヤ語学科中退。映画宣伝マンを経て、97年にガイエ(旧デジタルプラス)を設立。以後映画関連のWebサイトを製作したり、映画情報を発信したりが生業となる。98年に映画.comを立ち上げ、後に法人化。現在まで編集長を務める。
Twitter:@komainaofumi