コラム:編集長コラム 映画は当たってナンボ - 第11回
2008年8月25日更新
第11回:「ポニョ」、興収100億円突破。「ハウル」の196億円にどこまで迫るか
宮崎駿監督の「崖の上のポニョ」は、国内ボックスオフィスで5週連続の首位を達成した。さらに、公開から31日で興収100億円を超えた。今回の100億円到達スピードは、過去の宮崎アニメ作品と比べ「千と千尋の神隠し」の25日にはかなわなかったものの、「ハウルの動く城」の33日、「もののけ姫」の44日を上回っており、かなりの快ペース。我々も、封切り時の勢いでは、最終興収は100億円をやや上回る程度と見込んでいたのだが、この分だと150億円を超える可能性も出てきた。
もちろん、この夏休み映画ではブッチ切りの稼ぎ頭であり、2008年の年間を通じても興収1位の作品となることはまず間違いない。今年の唯一のライバルで、11月に公開を予定していた「ハリー・ポッターと謎のプリンス」は来年に飛んでしまった。
さて、「ポニョ」はいとも簡単に興収100億円に到達したかのような書き方をしてしまったが、そもそもこの「100億円」という数字はどれほどのものなのか? ここ5年ぐらいの興収100億円突破作品を時系列に並べてみた(年月は封切りの時期を示す)。
2003年6月「マトリックス・リローデッド」110億円
2003年7月「踊る大捜査線2/レインボーブリッジを封鎖せよ!」173.5億円
2003年12月「ファインディング・ニモ」110億円
2003年12月「ラスト・サムライ」137億円
2004年2月「ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還」103.2億円
2004年6月「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」135億円
2004年11月「ハウルの動く城」196億円
2005年11月「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」115億円
2006年7月「パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト」100.2億円
2007年5月「パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド」109億円
2008年7月「崖の上のポニョ」100億円~
興収100億円を超えた映画は過去5年で11本。その内訳は、シリーズものの続編が7本、宮崎アニメが2本、ピクサーが1本、トム・クルーズ主演作が1本といったところだが、参考までに、05年の「スター・ウォーズ エピソード3」は未達(91.7億円)、06年の「ダ・ヴィンチ・コード」も未達(90.5億円)である。ここのところ、夫婦50割引やシネコンなどの料金施策によって映画の入場料単価が下がっている関係もあり、100億の壁は年々クリアしにくくなっている。03年と04年はたまたま当たり年だったようで、05年以降は100億円映画は年に1本しか出ていない。つまり、今や100億円を突破した映画は、実質的に「その年を代表する1本」と言っていい。
そんなわけで、今年を代表する映画「ポニョ」は、8月の週末をあと2回残して100億円クラブに仲間入りした。東宝の発表によると、8月18日現在の興収は101億3583万6055円、動員は843万5178人となっている。国民のおよそ14人に1人が見た計算である。おそらく8月中には120億円近辺まで達するだろう。そこから先は、「ハウル」の196億円にどこまで迫れるか。期待したい。(eiga.com編集長・駒井尚文)
筆者紹介
駒井尚文(こまいなおふみ)。1962年青森県生まれ。東京外国語大学ロシヤ語学科中退。映画宣伝マンを経て、97年にガイエ(旧デジタルプラス)を設立。以後映画関連のWebサイトを製作したり、映画情報を発信したりが生業となる。98年に映画.comを立ち上げ、後に法人化。現在まで編集長を務める。
Twitter:@komainaofumi